もう一度食べて復習したい
食べているときは理解できていなかった諸々が、愛吃さんに補足をしてもらって、こうして文章にすることで、ようやくそれなりに消化できた気がする。理解をした上でもう一度これらの料理を食べて、それぞれの穀類の違いを舌と知識で把握したいところだ。
もし次回があるならば、今回よりも少しだけ深く山西省の麺食文化を理解できるはず。とりあえず今年のクリスマスの予定は明けておこうと思う。
これも面食らしいのだが、その見た目がチャーハンで混乱する。この料理のことであっているのだろうか。そしてブーランズってなんだ。
よくみると米ではなく、なんらかの生地をみじん切りにしたものなので、面の範疇ということなのだろう。これがサツマイモとニンジンなのだろうか。よくわからないけどうまい。
正体がわからないからこそおもしろいよね~と食べ進めていたら、壁にブーランズ(ブランズ)の答えが書かれていた。
通常メニューの解説によると、ジャガイモに小麦粉をまぶし、蒸籠で蒸した麺を炒めたもの……らしい。さすが山西省の郷土料理、説明を聞いても作り方がわからないぜ。
愛吃さんの補足:「山西省・陝西省・河北省あたりで食べられている伝統的な家庭料理です。米がとれないばかりか小麦も高価な食材とされ、食糧不足に陥りがちな地域ならではのアイデア(かさ増し)料理。野菜に小麦粉をまぶして蒸し、卵・ニンニク・唐辛子などと炒めます。
通常メニューはジャガイモですが、今回はサツマイモとニンジン。インゲン・キャベツ・ダイコン・槐花(アカシアの花)などでも作ります」
久しぶりに面でも麺でもない料理、ハクサイの黒酢炒めが登場。見た目と味が一致するので、ようやく脳みそを休められる。なるほど、確かにオアシスかもしれない。
愛吃さんの補足:「この料理の要は、使う黒酢です。 山西省の特産である『山西老陳醋』が大切なポイント。 日本の中国料理店でよくみるのは江蘇省の『鎮江香醋』ですが、山西人からすると上海あたりの小籠包や餃子のつけダレには良いかもしれないが、料理にはさっぱりし過ぎて薄味に感じてしまうのだそう。
ちなみに李さんによれば『山西人は餃子や麺にも山西老陳醋をドバッとかけるからね』だそうです」
小米は粟、摊黄儿は中国北部の伝統的な平焼きパン。日本人の感覚だとまったく麺ではないが、中国だとこれも面食となる。粟を粉にした料理は初めて食べるかも。栗(クリ)ではなく粟(アワ)。
甘くないどら焼きの皮みたいで、ここがハワイならフルーツやホイップクリームをのせるのだろうが、山西省では野菜の炒め物などを挟んで食べるようだ。
愛吃さんの補足:「山西省や陝西省で食べられている料理。 玉米(トウモロコシ)と白面(小麦粉)を混ぜた生地が多いですが、李さんのお母さんは小米(粟)で作っていたのだそう。今回は中央のお碗にある、キャベツとニンジンの酸菜(塩のみで4〜5日発酵させたもの)を挟んで食べます」
再び面でも麺でもない料理。柔らかく煮込んだ羊肉を山西省の黒酢餡でいただく人気メニューのようだが、肉の下からヤマイモやニンジンに混ざって板春雨が出てきた。
さりげなく澱粉麺入りである。さすが麺リークリスマス、隙あらば炭水化物の精神だろうか。
愛吃さんの補足:「この料理に使う羊肉は、肩か腿が定番。たっぷりの山西老陳醋と醤油で煮込んでいます。底に隠れていたのは、サツマイモの板春雨です」
小麦に比べてハダカ燕麦は麺に向いていないのか、2センチほどの長さで切れている。すりおろした麺とは一体どうやって作るのだろう。
トッピングは李さんのご両親が持ってきたであろう摘麻花を揚げたもの。これによってネギの仲間っぽい風味がプラスされている。私が知っている範囲だと、ノビルのムカゴが近いだろうか。摘麻花の咲いているところを見てみたい。
愛吃さんの補足:「この擦尖(ツァージェン)は、擦床というおろし金のような専用工具を使った短い麺。
摘麻花は五台山特産の野草で、李さん曰く『中国でよく食べられている山韭菜(ヤマニラ)と似ているけれど、ちょっと違うんだよなぁ』とのこと。摘麻花を油泼(ヨウポー/熱々の油をジュワッとかける)することで香りを立たせています 」
これは面食の扱いなので、ジャガイモの澱粉ではなく、ジャガイモ自体をすりおろして小麦粉と合わせた生地を焼いたものだろうか。
中身は甘味噌で炒めた肉と生野菜。穀類を薄く伸ばして焼いて具を包む、世界中にある料理の山西省版だ。皮がモチッとしておいしい。
愛吃さんの補足:「ジャガイモを蒸して潰したあと、温かいうちに小麦粉を混ぜます。今回は莜面も加えたそうです。水は入れず、ジャガイモの水分のみで捏ねて、薄く丸く伸ばして焼きます。
好みの野菜を巻いて食べるほか、生地(餅/ビン)だけで食べたり、炒めたりも。 干して保存食にもするそうです」
ここにきての揚げ餃子。そういえばまだ餃子も揚げ物も出ていなかったですね。パリっと揚がった皮の中身は、ニラと卵と澱粉麺なのでボリューミー。
さすがに手が止まるかと思いきや、この不思議な料理を理解したい欲求が満腹中枢を超えてくる。烏龍茶を頼みつつ、トイレに行くついでに軽くジャンプとスキップをしてどうにか胃袋に隙間を作る。
愛吃さんの補足:「普通の油糕(ヨウガオ)は、中にあんこや棗餡(なつめあん)などを入れた甘い揚げ餅。
昨年李さんが帰省した時、五台山近くの古城がある街・忻州の店で、このニラ玉入り油糕が大行列だったことが印象深く、今回のメニューに採用したそうです」
そろそろデザートかフルーツかと思いきや、具沢山の汁あり麺料理がドーンと登場。李さんの奥さんである秀珍さんの故郷の味だ。
面は小麦の平麺で、かんすいは入っていないっぽい。日本でいうところのうどんである。ラーメンとはちょっと違う麺の食感を、複雑な味のスープと共にじっくりと味わう。
愛吃さんの補足:「この麺はおっしゃる通りのうどんみたいな麺で、手擀面(ショウガンミェン)と言います」
最後の最後に最も腹持ちが良さそうなトウモロコシの麺が登場。本日のコースにデザートやフルーツなどない。どうあっても満腹にしてやろうというサービス精神がすごい。
臊子は細かく刻んだ肉や野菜という意味。なかなか箸が進みにくい腹加減だが、このムキっとした麺も好きなので手が伸びてしまう。麺の断面が均一に丸いので、押し出して作るのだろうか。
小麦の麺に比べて伸びづらい麺なので、ゆっくりと今宵の余韻を楽しみながらいただいた。前半になにを食べたのか、もう完全に忘れている。
愛吃さんの補足:「麺は押し出しで正解。李さんのお母さんが作った玉米面(ユーミーミェン/トウモロコシ粉)の饸饹面(ハーラーミェン/押し出し麺)の乾麺を、五台山から持ってきたのだそうです」
ということで、クリスマスだけどケーキもチキンも一切出ないストイックな麺リークリスマス会(別名、炭水化物祭)を無事完走。今年一番お腹いっぱいになった気がする。
こんなにも面食の幅広さを体感させてくれた山西亭の李さんだが、恐ろしいことに去年とはほとんどメニューが違うらしいのだ。彼の引き出しはまだまだこんなもんじゃないのである。
さすがに食べ過ぎたので、しばらく麺のことは忘れたい気分。これじゃ忘麺会ですねと思った。
食べているときは理解できていなかった諸々が、愛吃さんに補足をしてもらって、こうして文章にすることで、ようやくそれなりに消化できた気がする。理解をした上でもう一度これらの料理を食べて、それぞれの穀類の違いを舌と知識で把握したいところだ。
もし次回があるならば、今回よりも少しだけ深く山西省の麺食文化を理解できるはず。とりあえず今年のクリスマスの予定は明けておこうと思う。
「さぬきうどんを食べ歩く旅」などを引っ提げて、9/13(日)の文学フリマ大阪に出展します。サークルは「う-52 玉置標本」です。よかったら来てね。
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