特集 2025年10月13日

酒のまずみを求めて

ノンアルコールのサワーには酒の「まずみ」が再現されている。
だってほら、カルピスサワーって雑味のあるカルピスソーダじゃないですか。
つまり、酒の味とはあの「まずみ」なのだと思う。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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冒頭に書いたことを図にするとこのようになる。

「まずみ」とは、飲んだ後に感じる苦みのような、くさみのような、割り切れない風味のことだ。 

酒をやめてアルコールの刺激臭は苦手になったが、あの「まずみ」のことはたまに思い出す。

酒からアルコールを抜いてあの「まずみ」だけを取り出せば、ノンアルコールのアルコール風味の素になる。はずだ。

概念
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 常々そう思っていたところ、そういう商品が発売されていた。

サントリー・ゼロッパ ノンアルコールサワーベース

ノンアルコールの素だ。ドーナツの穴だけ取り出したような商品である。
そのまま飲んでみると、レモン風味で、終わりごろに酒の風味が現れる。 

まずみよりもレモンが強い。酸っぱさ、舌に残るざらっと感が強い

「まずみ」のなかでも「えぐみ」「くさみ」が強いようだ。私が好きな「苦み」は弱い。

「まずみ」は「えぐみ」「くさみ」「にがみ」で構成されていることを前提にした図

これをいくつかの飲料で割ってみたところ、割材が濃いとアルコール風味が目立たなかった。意外にデリケートなようだ。

レモンスカッシュ:レモンスカッシュが勝って、あまりノンアル感を感じない
乳酸菌飲料:乳酸菌飲料の味の前にノンアル風味が消えた
お茶:ゼロッパの酸味でお茶が酸っぱくなった

「強い割材の前に存在感を消すまずみ」の図

でも薄味の割材だと調和した。

レモン風味の炭酸:これがいちばんノンアルレモンサワーに近いかもしれない
ジャスミン茶:飲み終わった確かお茶の向こうに硬いものがいる気がする。
やさしい割材との親和性の図

それでも市販のノンアルサワー・ノンアルハイボールのような強烈なまずみがあるわけではない。

じっくり飲むと分からないが、テレビなどに気を取られてなにげなく飲んでみると、「おや?(なんかいる)」と思う。 

正面から見ると隠れるが、横を向いたときに現れるまずみ
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いや、だったらもう焼酎からアルコールを飛ばしてまずみだけを取り出せば良いのではないか。

 煮立てよう。

焼酎を煮立てたのは人生2回目である。最初は僕が高校生のころ、父親が煮立てたのを見た。

飲んでいた焼酎が薄かったのが気に食わなかった父は、焼酎を煮立てて、蒸発したアルコールを集めて飲もうとした。理科の実験でいう上方置換だ。

しかし機密性が高い器具があったわけではなく、ヤカンの口にコップを当てるという雑な方法だった。

蒸発したアルコールは家中に行き渡り、家を笑笑(居酒屋)の匂いにしただけだった。いまでも笑笑(特にお台場)に行くと実家を思い出す。実家じゃないのに。 

それ以来だ。40年ぶり2回目である。だが今回はアルコールをなくすことが目的なので難易度は低い。 

とんだアルコールが目に来る

そして家を笑笑のにおいにして(40年ぶり2回目)まずみが現れた。
ちょうどあのころの父と同じ年齢かもしれない。

レモン風味の炭酸で割って飲んでみよう。

これは、ただの水だ。成功でもないし、笑えるほど大失敗でもない。現実だ。

今回試したなかでいちばんまずみを感じることができたのは、ゼロッパ+炭酸(砂糖なし・レモン風味)だ。

遠くのほうにだけど

まずみ探しの旅は始まったばかりだ!(おわり) 

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