優勝は「抹茶ハイボール」と「彩り野菜の茶〜ニャカウダ」
抹茶ビアガーデンを訪れてわかったのは、単にお酒と料理に抹茶をくっつけたわけではないということ。素材の相性や味のバランスが緻密に計算されていた。
結論。抹茶は美味しい。抹茶を使ったお酒と料理はもっと美味しい。というわけで、個人的に優勝したのは「抹茶ハイボール」と「彩り野菜の茶〜ニャカウダ」でした。
【取材協力】
レストラン 1899 お茶の水
仕事柄、いろんな会社からプレスリリースが送られてくるが、そのほとんどは目を通すことなく、自動的に「メルマガ」フォルダーに移動される。しかし、「『抹茶ビアガーデン』開催」という文言が目に飛び込んでくれば熟読せざるを得ませんよ。
外飲み好きとしてはビアガーデンは天国。しかも、抹茶を使ったオリジナルのお酒が楽しめる。最近、体が抹茶を欲しているような気もしていた。
行くしかない。
ルノアールでは宇治抹茶ミルクを飲み、NEW YORKER'S Caféでは抹茶ラテを注文し、ジョナサンでは抹茶ラテサーバーの側から離れない。
そんなこんなで、早足で向かった「抹茶ビアガーデン」はお茶の水にある。
聖橋を横目に本郷通りを下ること3分。目指す「レストラン 1899 お茶の水」に到着した。
運営するのは老舗ホテルの龍名館で、2015年から夏季限定の「抹茶ビアガーデン」を始めた。
ちなみに、幸田文の小説『流れる』(1955)には「ちゃんとした帝国ホテルとか竜名館とかいうのなら又いいけれど」というセリフが出てくる。それほど、東京のホテルを代表する存在だったのだ。
広報部の山口沙織さんが話を聞かせてくれた。
「『レストラン 1899 お茶の水』は2014年にオープンしたんですが、コンセプトは『茶を食す』創作和食ダイニング。そこで出していた『抹茶ビール』が大人気だったので、翌年から日本茶をテーマにしたビアガーデンを始めました」
「抹茶ビール」完成までの道のりは遠かった。
「開発スタッフは3名。昼からお酒を飲むわけにはいかないので、研究開始は18時以降でした。一番大変だったのはビールの中に抹茶を溶かし込む作業だったようです」
最終的には、生ビールを宇治の抹茶で割るというレシピに落ち着く。ビールの苦味と合う旨味があり、かつ発色がよいお茶を選定した。
なお、レストランでは「1899ティーカレッジ」という日本茶セミナーを不定期で開催。「新茶摘み体験バスツアー」なども実施している。
満を持してメニューを拝見。ビアガーデンの開催は6月から9月の4ヶ月間だ。
「最初は『抹茶ビール』のみでしたが、徐々に『ほうじ茶ビール』、『紅茶ビール』、『抹茶ワイン』なども追加。昨年の来店者数は4ヶ月間で約8400人、一番人気の『抹茶ビール』は約7000杯出ました」
しかし、今回は抹茶にまみれるのが目的なので抹茶縛りにする。今年からメニューに加わったという「抹茶ハイボール」も、ぜひ飲みたい。
山口さんの話で驚いたのは、緑茶もウーロン茶も紅茶もすべて同じ「お茶の木」(学名:Camellia sinensis)から作られるということ。えっ、紅茶の木があるんじゃないの…?
「ただし、抹茶は摘み取りの20日ほど前から遮光します。日光は当たらないけど頑張って成長しようとするから旨味がたくさんできるそうです。手間がかかる分、ちょっと高級なんでしょうね」(山口さん)
ここで、「抹茶ハイボール」の開発を担当したスーパーバイザーの荻原綾香さんが登場。お酒好きが高じて、ソムリエと唎酒師の資格を取ってしまったという。
「ビールもワインも基本的にはレストランで扱っているものを中心に組み合わせています。ハイボールのウイスキーはサントリーの角。レモンっぽい抜け感があるので、夏場にはぴったりかなと」(荻原さん)
そうだ、僕、ホッピーが大好きなんですが、「抹茶ホッピー」ってできませんかね。
「ホッピー自体が完成していて、あとは焼酎なのでちょっと想像がつきません…。日本酒と抹茶のコラボという案もありましたが、私の中のこだわりでは日本酒のまま飲んでほしい(笑)」
いよいよ、抹茶にまみれる時がやってきた。お酒と料理の準備ができるまで店内を散策。
やがて、「お待たせしました〜」と山口さんの声。テラスのテーブルに抹茶のお酒が並ぶ。左から、「抹茶ハイボール」(650円)、「抹茶ビール」(790円)、「抹茶黒ビール」(790円)、「抹茶ワイン」(720円)。
さらに、抹茶料理は「彩り野菜の茶〜ニャカウダ」(1480円)、「抹茶ぽてとサラダ」(500円)、「自家製プリン抹茶蜜がけ」(730円)が加わる。
まずは「抹茶ハイボール」から。
おお、最初に抹茶がスッと鼻腔をくすぐり、その後でウイスキーがじわじわくる。炭酸も含めて絶妙なバランスですよ。一瞬で飲み干した。
グラスの底に沈んだ輪切りレモンを眺めながら、ふと思った。完全にぴったりサイズだが、端の方のレモンはどうするんだろう。
続いて、「抹茶ワイン」。
なるほど、抹茶感にはやや欠けるが普通に美味しい。以前は甘口の白ワインを使っていたが、現在はスペインの「Wabisamba(ワビサンバ)」という辛口ワインに変更したそうだ。
「抹茶ビール」と「抹茶黒ビール」も人気メニューだけあって、ホップと茶葉が仲よく共存している。なんというか、抹茶がビールのいいところを褒めて伸ばすイメージ。
お次は抹茶料理。
おっと、これはすごい。新鮮な野菜はそれだけでも美味しいが、熱々ソースのパンチがたまらない。これは知っている味だが、なんだっけ。シェフを呼んでくれ。
「基本のソースは抹茶と豆乳で、隠し味にカツオの酒盗を入れています。お酒のつまみなので塩辛さを強調しようと思って」
そうだ、酒盗だ。大久保さんは調理の専門学校を卒業後、六本木にあった龍名館の懐石料理店に勤務。やがて、フグ料理を極めたくなり、専門店で修行。その後、八重洲のホテル龍名館東京の開業とともに龍名館グループに戻ってきたそうだ。
ならば、抹茶フグなんていかがですか?
「うーん、なくはないですね(笑)。フグ刺しならポン酢に抹茶を混ぜたり、鍋の出汁を抹茶で作るとか」
なお、抹茶料理はこれら以外にもたくさんある。
さらに、新メニューも開発中だという。山口さんが横で「個人的には『抹茶かき氷』を開発してほしいです」とつぶやいた。来年の夏は緑色のかき氷が味わえるかもしれない。
抹茶ビアガーデンを訪れてわかったのは、単にお酒と料理に抹茶をくっつけたわけではないということ。素材の相性や味のバランスが緻密に計算されていた。
結論。抹茶は美味しい。抹茶を使ったお酒と料理はもっと美味しい。というわけで、個人的に優勝したのは「抹茶ハイボール」と「彩り野菜の茶〜ニャカウダ」でした。
【取材協力】
レストラン 1899 お茶の水
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