特集 2019年1月9日

激安遊園地「前橋るなぱあく」が市民から愛され続ける10の理由

副園長とともに万歳をキメる筆者

TDL(東京ディズニーランド)やUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)を始めとして日本には名だたる遊園地がいくつもある。しかし、時代は一周回ってMLPなのだ。え、知りませんか? 群馬県の「前橋るなぱあく」ですよ。

開業は1954年(昭和29)。キャッチコピーは「日本一なつかしい遊園地」だ。派手なパレードも最新式のアトラクションもないが、閉園の危機のたびに前橋市民が立ち上がり、現在に至る。

「前橋るなぱあく」(以下、「るなぱあく」)は、なぜ地元の市民から愛され続けてきたのか。実際に現地を訪れ、そのヒミツを探った。

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もともとは、市政60周年を記念して作られた児童遊園

新宿駅から湘南新宿ラインに乗り、高崎駅で両毛線に乗り換える。約2時間で前橋駅に着いた。新幹線を使えばもう少し早いが、所用時間はそれほど変わらないので在来線で十分かもしれない。

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前橋駅からはバスで10分程度

前橋公園前で下車して歩くこと3分。「るなぱあく」の入り口が見えてきた。

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風もない穏やかな冬晴れの日でした

大仰なゲートのようなものはない。階段を下りてトンネルを抜けると、涅槃のような遊園地が待っているという演出が憎い。

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前方の光を目指して歩く
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こちらが全景

広さはサッカーコート2面ほど。この中に8つの大型遊具と5台の電動木馬などがある。市民から愛される理由を探るには運営者に話を聞くのが手っ取り早い。今回は、副園長の井階渉さん(34歳)が丁寧に応対してくれた。

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園内の事務所にて

「もともとは、前橋市の市政60周年を記念して作られた児童遊園です。当初は市営でしたが、2004年に民間運営となり、そのタイミングで『前橋るなぱあく』という愛称が付けられました」

市民から愛され続ける10の理由はこれだ!

さて、ここからは「愛される理由」をひとつひとつ検証しながら進めよう。

【1】65年という親子3代にわたる長い歴史

2006年から指定管理者制度が導入され、数年ごとに施設の運営企業が変わってきた。2015年にはオリエンタル群馬が指名され、井階さんはそこの社員なのだ。

「開業が65年前だから、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんが子供の頃に遊んでいたわけです。時が流れて、今は彼らが孫を遊ばせに来る場所になっています」(井階さん、以下同)

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1970年代の乗り物遊具(画像提供/前橋市)

外車、新幹線、二階建てバスという子供が食いつくラインナップ。そして、なんと偶然にも同じアングルから写真を撮っていた。

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屋根の形状からすると、ここだろう
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小規模とはいえ遊園地にはこれだけの鍵が必要となる
【2】郷里の詩人、萩原朔太郎の詩から取られた愛称

市民公募で決まった「前橋るなぱあく」という愛称の由来についても教えてくれた。

 

「前橋は詩人の萩原朔太郎が生まれ育った土地。彼はのちに『遊園地にて』という詩集を出すんですが、遊園地のルビが『るなぱあく』なんです。それを知っていた市民の方が応募したんでしょうね」

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朔太郎関連の資料は全国一の質と量を誇る前橋文学館。施設内には銅像も

近代詩人の雄は、児童遊園が開園する12年前に没している。

【3】「日本一安い遊園地」という絶対的な評価

タイトルに「激安」と打ったが、ちょっとやそっとの激安ではない。何しろ、入場料は無料。大型遊具は1回50円、電動木馬と小型遊具は1回10円なのだ。

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8つの大型遊具にはこれで乗れる

「50円の遊具は利用券を買っていただいて、10円の遊具はその場でチャリンと入れるシステムです。皆さん両替されるので、繁忙期には10円玉だけで毎日2500枚を用意します(笑)」

なぜ、値上げしないのか。「るなぱあく」はあくまでも市民のための公共施設。市民サービスという意味でも、気軽に値上げはできないそうだ。オリエンタル群馬には前橋市から指定管理料が支給されるが、それほど多くはない。

「でも、私たちが引き継いでからは遊具の利用料のみで黒字にしました。値上げですか? 50円を100円にすれば2倍かあとは思いますが、『日本一安い遊園地』というのもウリなので、なかなか踏み切れません。駐車場が無料というのも他の自治体ではあり得ないかも(笑)」

【4】電動木馬は国の登録有形文化財に指定

園内の注目スポットについて聞くと、井階さんは「ぜひ電動木馬を見ていってください」と言う。

「電動木馬は開業当時からあるもので、2007年には現役の遊具としては初めて国の登録有形文化財に指定されました」

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常に子供たちで賑わっているので写真を撮るタイミングが難しかった
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もくば館の建物とともに文化財登録

65年間、メンテナンスを重ねて現在も稼働している。

【5】8つの乗り物、それぞれのレトロな魅力

子供たちの楽しそうな声があちこちで響き渡る園内を散策してみよう。まずは、「豆汽車」が目に入った。

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遊園地では定番の乗り物

「昔は運転席に本物の猿が乗っていたんですよ。『おサルの電車』なのに猿はいないのかと言われて乗せるようになったそうです。時代ですよね(笑)」

調べてみると、上野動物園の「おサル電車」は戦後すぐに運転を始めたが、「長時間鎖で繋ぐのは動物虐待だ」という声が上がり、1974年に姿を消したようだ。時代です。

お次はサーキット風のコースをのんびりと走る「豆自動車」。

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親が子供の運転に寄り添って1周する姿も

こちらも、ほぼ同じアングルの昔の写真が残っていた。

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「ソーラーボーイ」とある(画像提供/前橋市)

「結晶形シリコン太陽電池を搭載したソーラーカーですね。この『ソーラーボーイ』は省エネ時代のパイオニアで、『るなぱあく』では1983年から15年間稼働していたようです」

じつは、今回の取材でぜひ実現させたいことがあった。副園長の井階さんと一緒に乗り物に乗るというプランだ。

「『くるくるサーキット』は想像以上にトリッキーなコーナーリングが楽しいですよ」

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しかし、大人の二人乗りはできなかった

「じゃあ、一番人気の『ウェーブスターライド』にしましょう」

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ジェットコースターか…

じつは僕、こういうの苦手なんですよ。中学の修学旅行でスペースマウンテンに乗って泣いて以来、できるだけ遠ざけてきました。

「スピードはかなりゆっくりだし、小さいお子さんでも楽しそうに乗っているから大丈夫ですよ」

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本当に大丈夫ですかね…
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大丈夫だった!

高さも速さもないが懐かしさはあふれている。ザ・子供向けの平和な遊具だ。

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