特集 2026年3月26日

奄美群島・加計呂麻島に幻のような角打ちがある

忘れられない店にもう一度

旅が終わってしばらくの間、人に会うと「加計呂麻島にすごいお店があった」と話した。その中に奄美大島が好きで何度か行ったという友達がいて、私の話に興味を持ってくれたようだった。

「いつか行ってみたいっすねー!」とその時は未来の夢について話すように言葉を交わしたのだが、その友達が後日、関西空港から奄美大島までの航空券が破格で販売されていることを教えてくれた。いわゆる“早割”みたいなチケットで、その時からすれば数か月先の出発日だったが、かなり安かったので、私も便乗して一緒に予約してもらうことにした。

それでその友達と一緒に、2026年3月に再び奄美大島に行くことになったのだった。今回も3泊4日の旅程で、島のあちこちを散策したり、ハシゴ酒をしたり、色々と楽しいことがあったのだが、旅の目玉は、あの加計呂麻島の「茂岡売店」にまた飲みに行くことだった。

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豆腐料理専門の「島とうふ屋」の定食がめちゃくちゃ美味しかったな

旅の二日目、前回と同じ民宿「南龍」を予約して、加計呂麻島へ向かった。加計呂麻島へ行くためには奄美大島の南端にある古仁屋(こにや)という街の港からフェリーに乗っていく必要がある。

まず、その古仁屋に向かうため、島を縦断するように通っている国道58号線を、友人のSさんの運転する車に乗って南へ南へと進んでいく。車を運転できない私はこうして今回も誰かに頼りっぱなしである(奄美空港から古仁屋まではバスを乗り継いで行くこともできる。加計呂麻島内にもバスがある)。

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古仁屋港からこのフェリーに乗って30分ほどで加計呂麻島の瀬相港に着く

飛行機に乗って奄美大島まで来て、車で島を縦断して、南端の港からフェリーに乗って加計呂麻島まで行くというルートを経ると、はるばる来たなーと思う。

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Sさんの運転する車(加計呂麻島にもレンタカーがあって、そこで車を借りた)で、島を少しドライブした後、いよいよ再び「茂岡売店」までやってきたのだった。

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天気はあいにくだったが海は青かった

こうして遠くから来たはいいが、肝心の茂岡売店が今日、営業するとは限らない。営業日は月・水・木・土曜日のはずだったが、それは昨年(2025年)時点の情報で、お店の電話番号もわからないので、変更があったとしても確かめようがなかった。さらに、その日は朝から雨が降ったり止んだりしていて、明日は強風のためにフェリーが欠航になるだろうという話を島の方から聞くような状況だった。臨時休業なんていうこともあり得る。

まあそれならそれで、めちゃくちゃ残念だけど、Sさんの車でどこか酒を売ってくれる場所まで行って、宿の部屋で飲もうと、そんな覚悟もしていた。

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18時が迫る茂岡売店だったが人の気配はない

18時近くなっても店の中は暗いまま、内側にはカーテンがかかっている。Sさんとともに「これはちょっと、厳しそうですね」と半ば諦めかけた。しかし、店の脇の道からふいに店主が現れ、ドアを開けるのが見えた。

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急に開いた感動で思わず記念撮影

「やった!開きましたよ!」「もうなんか、泣きそうです」と、Sさんと二人ではしゃぐ。お店に近づき、「入ってもいいですか?」とおそるおそる聞いてみると、「いいよ」とのこと。また来ることができた……。

観光客も地元の人も一緒になって飲んでいる店

茂岡売店の角打ちタイム(と私は勝手に呼んでいるが、常連さんの間では「立ち飲み会」「うなぎを見る会」などの愛称があるようだ)はセルフスタイルである。飲み物は店の冷蔵ケースから自分で取る。グラスや氷も、お店にあるものを自分で動いて用意する(洗い物を少なくするためにマイグラスを持ってきている常連さんもいる)。会計は退店時にまとめてするのだが、何をどれだけ飲んだかを自分で把握しておいて店主に伝える必要がある。

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こんな風に冷蔵ケースに並ぶお酒を各自で取って飲むスタイル

と、こう書いている私は最初、この店の勝手がまったくわからなかったのだが、常連さんが優しく教えてくれた。店員さんに「瓶ビール!」と注文するような店ではない。自分で行動し、時にみんなで手伝いあって快適に過ごそうという精神が大事なのだ。

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茂岡売店の店内の雰囲気
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またここで飲める幸せを嚙みしめる

日によって、店主や常連さんが持ち寄った惣菜が提供されることがある。常連だからとか一見だからとかは関係なく、それはみんな食べていいものらしい。ただ、その際は店にあるチンパンジーの顔型の貯金箱に一人100円を入れるルールだそう。

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この店で飲む場合はこの貯金箱に100円入れるルールのようだ。安い
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この日は、店主が太刀魚のフライや漬け物を振る舞ってくれたり、常連さんが釣ったカスミアジの刺身をいただいたりした。

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その日その日のおつまみがうれしい
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このお漬物でお酒が進んだ
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カスミアジは賢い魚で釣るのが難しいとのこと

私とSさんの他にも、他県から観光で来た方が何人もいた。ホエールウォッチングをしに奄美大島に来て、加計呂麻島にも寄ったという人がいたり、毎年子連れで加計呂麻島に来て、そのたびに必ずここに顔を出すという方もいた。

そんな人たちが混ざり合って、18時から19時半までの、あっという間の宴に同席している。

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天井には「うなぎの会」の提灯が吊るされている

途中、さっきまで大うなぎに魚肉ソーセージを与えるのに夢中だったらしき子どもたちが「ママ!夕焼けだよ」と店内にいるお母さんに向かって言うのが聞こえ、私を含めた大人たちが外に出る。さっきまで雨が降っていたが、雲の隙間に赤い空がのぞいていた。

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雨が上がって空が赤く染まっていた

こんな風に、夕焼けを見たり、うなぎを見たりして、また店に戻って酒を飲む、この幸せ。

⏩ 店主・茂岡さんにお話を聞く

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