意外と気軽だった叙々苑
値段が高く、入りにくいイメージがあった叙々苑だが、ランチなら頑張れば行ける値段である。はちゃめちゃにおいしい肉を食べたいときは一度、行ってみてください。あと、いつかのれん分けのお店に行きたい。
私たち庶民がいつか行きたいと思っている高級焼き肉屋「叙々苑(じょじょえん)」。以前、行きたいと思い、メニューを確認したところキムチが800円だった。行くことをあきらめ、松屋で牛焼肉定食を食べたが、こんなことではいけない。新しい年号になったのだから、自分だって新しい自分へと変わらないと行けない。叙々苑に行こう。
ただ、気軽にディナーへ行こうと思ったらきっとローンを組む値段になってしまうだろう。そこで提案したいのがランチである。
どんなに高くても7000円あればおつりが来て、帰りにハーゲンダッツを食べながら帰れる。
なんか行ったことのあるように書いたが、行ったことなんてない。庶民なので松屋で牛焼肉定食はよく食べる。
値段の高いイメージがあるが、それよりも庶民が行っていいのか、ドレスコードは必要なのかなどわからないことが山ほどある。一度、行ってみようじゃないか。
ゴールデンウイークということもあり、多くの人たちでにぎわう恵比寿。あまりの多さにカメラで撮影する女子たちの後ろを何度も通ることがあったので、彼女たちのインスタグラムに自分が写っていると思う。知らない男がカメラ目線で。
入口からオーラが違う。果たして入れるのか。入ってもいいものなのか。入った瞬間、黒服の人たちが出てきて外に連れ出されはしないか。ジャケットを着てきた方がよかったかなど不安がつきない。
入る前に落ち着いてランチメニューを見よう。メニューはいつだって心を落ち着かせてくれるし、ずっと見ていられるものだから。
ビビンバ肉重、S(サービスのSらしい)ランチ、Aランチ、Bランチ、Cランチと段々と値段が上がってくる。一番安いメニューで1800円、高いのだと5800円する。ただ、普通に食べたらきっと5万ぐらい食べないとお腹いっぱいにならないので安いだろう。
一人で叙々苑に行くのが怖かったので友人の能登さんに来てもらった。そして、メニューを見るなり「高いな…」とつぶやいた。
友人に「これ、本当に手軽ですか?」と言われたが、「おいしかったらいいじゃないか」と論破した。おいしいものは正義である。
Cランチ(5800円)、ビビンバ肉重ランチ(1800円)を頼んだ。
風景を見ながらランチを待っている。周りにはビールを片手に談笑する人たちが多い。話も「こないだ泊まったホテルがよかった」、「不動産を増やしたい」という会話をしていた。さすが叙々苑、お金持ちたちの会話である。そして、そんな話を聞いているうちに王者のランチがやってきた。ゲームの話をしていた。
サラダ、わかめスープ、キムチ、ナムルなどの野菜がこれでもかとテーブルに運ばれてきた。これだけでお腹いっぱいになる人もいるだろう。そしてメインの肉がこちらだ。
肉たちからは光り輝くオーラが放たれている。食べて大丈夫なのか。食べる順序が実はあって、違う順番で食べたら「すみません、お引き取り下さい」と言われないだろうか。それか急にやってきた海原雄山に怒られて泣きながら食べることにならないか。
普段食べている肉とは全然違う。噛んだ瞬間にスッと切れるやわらかさ、そしてにじみ出る肉汁、脂たちの甘さ、うまい、うまいと思っていたらすぐに口の中からいなくなった。
焼肉に行って悲しい気持ちになった。だって、肉がすぐになくなってしまうのだから。
食べ終わった直後ぐらいに「デザートがどうされますか?」とベストタイミングで聞かれた。サービス、接客対応も値段以上で居心地が最高である。これが叙々苑か。
初めて叙々苑はまるで夢のような体験だった。ただ悲しいもので夢は終わるものである。
そんな悲しい気持ちを明るくする方法がある。2軒目に行くのだ。叙々苑のはしごが決まった瞬間だった。前日からご飯を抜いてきたかいがあった。
友人の能登さんが「全然お腹が空かない」と言うが無理矢理連れてきた2軒目。叙々苑目黒店にやってきた。
同じお店ならメニューも一緒だろうと思ったが、メニュー看板を見ると少し違う。
値段も少し違うが先ほどにはなかったメニューがある。こういう少し違う商品は興奮する。
まるでスナックやクラブのような大人の雰囲気の中でおいしい焼肉を食べる。能登さんは牛切落しランチ、私はAランチを頼んだ。
肉の種類こそ少ないが赤身は歯ごたえと共に肉の味がしっかりと味わえる。先日食べたスーパーのお肉の15倍おいしい。
そして、牛切落しもほどよく脂がのっており、値段以上においしい。
叙々苑をはしごしていて疑問に思ったことがある。よく町の焼肉屋ではご飯のおかわり自由のお店があるが、叙々苑ではどうなのか。注文してみよう。
「すみません、ここってご飯のおかわりって可能ですか?」と聞いたところ、「やっておりませんが、追加のオーダーなら可能です」とのことなので、ライスの追加をお願いした。
叙々苑ではライスは食べ放題ではないが、追加すれば(少し厨房がざわざわするが)食べることができる。
「きっとお腹が限界になるほどたくさん食べるような人が来ないんでしょうね。お金持ちたちはそんなにがつがつしないで優雅に食べるから。」と能登さんが言っていたが、何も言い返さずに肉で白米をつつんで食べた。
目黒の叙々苑で会計するときに「ひとりで叙々苑に来られる方っていらっしゃるんですか?」と聞いてみた。「はい、いらっしゃいますね。」ということなので、これは体験してみたい。ひとりで行ってみよう。
ゴールデンウィークということもあって外まで並んでおり、30分の待ち時間があるようだったがひとりは誰もいない。「叙々苑にひとりで来るんだ」という目線が気になるが、入ってしまえばこっちのものである。
とりあえず注文をしよう。食べたことのなかったBランチを頼んだ。まわりが楽しく談笑しているが自分ひとりだけかなりの緊張感を持ってランチをしている。
そして、やったきたお肉たち。Bランチは2番目に高いコースなので、肉たちがそれはもう素敵である。
あれだけ緊張していたにもかかわらず、お肉を焼いてしまえばおさまってきた。ヒーリング効果があるかもしれない。
もしかしたら、他の叙々苑にも変わったメニューがあるかもしれない。そう思い、編集部の安藤さんを誘ってゴールデンウィークに行ってみることにした。
小田急江ノ島線相模大野駅から歩いて15分の場所にある叙々苑相模原店である。ここは叙叙々苑からのれん分けされたお店で叙々苑の公式ホームページには載っていない特別なお店である。これなら変わったメニューもあるかもしれない。
変わったメニューはいつだって楽しみだ。コンビニで新商品が出たら買ってしまうタイプである。お腹いっぱい食べて帰るぞと思い、受付にきたら驚きのお知らせがあった。
ゴールデンウィークの悲劇である。ランチメニューは提供されておらず、途方にくれた。しばらく立ちつくしたが、このあと安藤さんとラーメンを食べて帰りました。
値段が高く、入りにくいイメージがあった叙々苑だが、ランチなら頑張れば行ける値段である。はちゃめちゃにおいしい肉を食べたいときは一度、行ってみてください。あと、いつかのれん分けのお店に行きたい。
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