無邪気にバリバリさせてたあの頃
なにが「だったら逆に」なのかは不明だが、そういう衝動は大事にしたい。普段はおとなしい財布を使っているからこそ、反逆の狼煙として財布をバリバリ言わせたくなるのかもしれない。
実例としてマジックテープ式の財布を探したところ、見つけるのが意外と難しかった。スナップ式、ファスナー式といった無個性なものが大半だ。
それでも見つかったのは写真の黄色い財布。こういう感じのやつ、小学生の頃、駄菓子屋でバリッとさせてた記憶がある。
この黄色い財布も開けると心地よくバリッと響き渡る。ただ、大人になった自分にはちょっと物足りない。もっとバリバリさせたい。
ベースとして買ってきたのはこの財布。イオンで1,100円で見つけたもの。普通の二つ折り長財布だ。
留める機構が何もないので、あっさりと開いてしまう。完全に無音。手応えがなくて不安になってくる。
これをマジックテープで改造してバリバリ言わせたい。落として交番に届けられたときも「ものすごくバリバリ言うやつです」と特徴を説明しやすい。
ところで、読者の中には「マジックテープというのは登録商標で、普通名称は『面ファスナー』だよね」と思う方もいらっしゃるだろう。
OK、その通り。ただ私はどうしてもマジックテープと言いたかったので、今回はそれと名乗って売っているメーカー製のものを用いているのだ。
安心のマジックテープ保証。この記事の中でも無駄に連呼したくなりそうだ。
新たな息吹を吹き込まれた財布
手芸店でマジックテープを必要量買ったところ、財布本体よりも高く着いてしまった。創作とは往々にしてそういうものだ。そして普通の財布は、バリバリ財布へと生まれ変わった。
生まれ変わったとは言え、その性質上パッと見ではなにも感じないだろう。手にとって開こうとする瞬間、牙を剥くのだ。
カード類を入れる部分にもぜいたくにマジックテープを貼り付け、バリバリ面積の最大化を図った。収納は捨ててバリバリのプライオリティを高めた設計なのだ。
すごくバリバリ言う財布だから、盗まれて開けられたら音が聞こえて犯人がわかる。あっちでバリバリ言ったぞ、あいつが犯人だ!セキュリティも高い。
これだけでもかなりバリバリなのだが、今回はもう一歩踏み込んだデザインに挑戦した。
写真だと少し分かりづらいが、一度開けただけだとお金の収納部にまだアクセスできないのだ。
二つ折りの財布だと、1回バリバリさせておしまいですよね。せっかく作るなら、そこで終わりにしたくはない。もっとバリバリさせたい。そういうわけでさらなる改造を加えているのだ。
外装の一部を切って取り外し、それを反転させて装着することで三つ折りの財布にするという算段だ。
改造の手順を簡単にお伝えしたが、たぶんこの説明ではわからないだろう。ただ、詳しく説明したところで「そうなんだ」という感想しか生まれないと思う。がんばって三つ折りにしたのね、という理解があれば十分だ。
というわけで、1回開けたあともう1回開けるところがあります。
財布として使うためには2回バリバリさせる必要がある。そのため正確には「バリバリ、バリバリ財布」なのだが、冗長なので今後も「バリバリ財布」で行くことにする。
素早く開けると「バリッッ!」。ゆっくり開けると「…バリバリ…バリバリバリバリ……」。
音が聞こえないのに「うるせえよ」と思ってくれているなら、それは私の伝えたいことが伝わっている証拠だ。
フタを開けたと思ったらもう1回フタ。こういう行動を経て、人間はお金のありがたみを実感するのだ。
十分にバリバリさせたとは思うが、改造しているうちにもうひとバリバリさせたい気持ちが湧いてきた。
バリバリさせると財布が開いてしまう。それだと「買物するわけじゃないけどバリバリさせたい」というニーズにマッチしない。ただ単にバリバリさせることができるようにしたい。
そこで考案したのがインフィニティバリバリシステム。財布の裏側にもマジックテープを貼り合わせ、上の写真のような構造にした。
フリーに動くマジックテープの端をつまみ、パタパタさせると無限にバリバリできるのだ。
うるさい。画像だけでうるさい。
手持ち無沙汰の友としてのバリバリ。バリッと爽快な音は嫌なことも忘れされてくれる。財布の機能から離れた、純粋なレジャーとしてのバリバリだ。
これで改造としては完成。あとは伝説になろう。