特集 2022年5月10日

言葉禁止ボウリング!

言葉禁止ボウリングだ!

ボウリングの分かりやすさと楽しさがあれば英語禁止どころじゃない、もっともっと厳しい『言葉禁止ボウリング』でも楽しめるんじゃないだろうか。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

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言葉禁止ボウリングだ!

『英語禁止ボウリング』というテレビでおなじみの企画がある。

英語を言ってはいけないのだ。つまり「ストライク」「ガター」など、ボウリング用語をうまく日本語に言い換えながらボウリングを盛り上げて楽しむ遊びである。

「ラッキー」「ナイス」などもつい言ってしまいがちなので注意しなけれないけない。

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「ストライク!」じゃなくて「全倒し!」とか言う。

しかしボウリングにものすごく熱中でもしない限り、まあなんとなくできてしまう。

もっと制限を厳しくしてもいいと思うのだ。『言葉禁止ボウリング』とか。言葉禁止ボウリング!? …言葉禁止ボウリングだ!!

言葉禁止ボウリングとは

勢いで『言葉禁止』と言ってみたが、言葉とはなんだろう。辞書を引くと『声に出したり文字に書いて表す、意味のある表現』と出た。

『意味のある表現』が無いボウリングを想像してゾッとした。球を持って投げることすら捉えようによっては言葉なのだ。意味があるので。

球を食べようとしたり、ピンに色を塗ったり、そういう意味の無いことだけをしないといけなくなる。

ボウリングが成立しないのは困るので、今回は『言葉』をこのように定義した。

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つまり「ここでストライクが出せれば逆転だよ」と声やジェスチャーで伝えるのはNGだが、気持ちが溢れて「頑張って!」「やったー!」「ドンマイ!」などという意味合いの声を出したりジェスチャーをするのはOKとする。もちろん球も投げていい。

ボウリングってすごくシンプルなスポーツなので、これでも楽しくできてしまうと思うのだ。たくさん倒れればみんなで喜び、倒れなかったらみんなで悔しがる。それだけでいい、いや、それだけこそが良いんじゃないだろうか。

ボウリングの分かりやすさをとことん信頼するなら言葉禁止ボウリング、言葉禁止ボウリングなのだ!!

皆でボウリング

ルールができたところで、デイリーポータルZの関係者の皆さんをボウリングに誘った。

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筆者を入れた計5名でボウリングをします。

皆久しぶりのボウリングだった。普通にやっても十分新鮮に楽しめるのだが、このあと言葉を奪われることになる。

英語禁止ボウリングから

いきなりやっても皆さん戸惑うと思うので、段階を経て言葉を禁止していくことにした。

まずは英語禁止ボウリング。

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つりばんど岡村さんの名前が「ついばんど」になっている。ボウリングってこういうのあったな。いちいち感慨深い。
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「あー、一本残し!」

「全部倒し」「溝」などと言いながら球を投げていく。

ボウリング楽しい。これ自体が久しぶりなのだ。ちょっとした心持ちや姿勢でうまくいったりいかなかったりする。

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「イェーイ!」と言ってはいけない。「わー、すごいすごい!」とか言う。

英語と熟語禁止ボウリング

それぞれ何投かしたのち、一段階ルールを厳しくした。英語は禁止、日本語も熟語は禁止にする。

これも定義が難しいが、ざっくり漢字が二つ以上組み合わさった言葉はNG、ぐらいの認識で進める。

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「やれ!」「いけいけ!」「惜しい!」「すごーい!」というシンプルな歓声が飛ぶ。

長くしゃべっちゃいけないわけではないのに危なっかしくてしゃべれない。

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林さんと僕が「単語で言うのも禁止?」「漢字一つだったらセーフです」みたいな会話をしてしまい、減点。

「単語」と「禁止」と「漢字」と「セーフ」が引っかかった。

普段、熟語かどうか考えてしゃべることがないので新鮮でおもしろい。

英語と漢字禁止ボウリング

次は漢字も禁止である。漢字に変換できる言葉は禁止。ただし普段使わないような漢字はセーフ。「嗚呼」とか。

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「わー!」「へー!」「あっはっはっは!」

ほぼ言葉禁止ボウリングである。ひらがなだけでしゃべれることなんてほとんどない。

しかし投げた人に向かって「すごいすごい!」とか「ドンマイ!」みたいなジェスチャーをしている様子には『言葉』っぽさがあった。

イントネーションや動きに意味を込めて伝えていたのだ。あれは『言葉』だ。

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つりばんど岡村さんが「いいぞ!」と発した。それは「良いぞ」となるのではないかと指摘が入り、減点。
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言葉禁止ボウリング!

そしていよいよ言葉禁止ボウリングである。英語も熟語も漢字も、何かに意味を込めて人に伝えようとする意志そのものを禁止する。

自分の気持ちが溢れた結果の声や動きはOK。そして意味の無い言動、意味の分からない言動も言葉とカウントしないのでOK。

だからこうなる。

「おー!」「えー?」「あっはっは」
「わー!」「ヒュー!」
「ホッホッ!」「ホッホッ!」

こんな感じでそのゲームが終わるまで投げ続けた。

今まさにこの記事の本題に当たるのだが、上のgifアニメ以上にお伝えできることがない。

 何が言いたくてあの動きをしているのか分からないし、分かったら「それって言葉じゃん」ということになるので、ただカメラが映したものをそのまま見ていただくしかない。

「ヒョー!」「ゥオー!」
「おおー!」「お?」「お?」
「お?」「おお?」

ただ続けるに従って「投げる前になんか動いて、投げた後にもなんか動く」という「空気」ができてきた。言葉を使わず、いや使わないからこそ共有した「空気」である。

そして出来上がった空気には、誰も異を唱えることができなかった。言葉が無いからである。言葉が無い環境での「空気」はとんでもない力を持っていた。

そんなこと言ってから貼るこのgifアニメにはすごい哀愁がありますね。

とにかく大人が普通やらないような動きがたくさん見られた。

「わー!」「あらー!」
「ドンドンドンドン!」「ドンドンドンドン!」
「セイセイセイセイ!」「セイセイセイセイ!」
「ワッサ!ワッサ!ワッサ!ワッサ!」
「ソッソイ!ソッソイ!ソッソイ!ソッソイ!」
「ヒョイヒョイヒョイヒョイー」
「ヒョイヒョイヒョイヒョイー」

全部だいたい嬉しい動きか悔しい動きのどちらかなのだけど、残っているピンの数を見ないとどちらか分からない。

 どちらでもいいと思う。そういうことじゃないんだ。

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「言葉って便利ですね」

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ゲームの終わりまでやり切った。

こんなに長くやるつもりじゃなかったんだけど「一旦止めましょう」と『言葉』を発するのが怖くなりやり切ってしまった。

疲労。疲労と、この5人で何かをやり切ったという一体感がすごかった。誰も言葉を使わなかった。言葉を使わずボウリングを楽しんだのだ。

出た感想がこちらである。

  • ゲーム性は無い(駆け引きとか、思わず言葉を使ってしまいそうになる場面が無かった)
  • ボウリング自体は成立していた
  • すごく疲れる
  • 「何かしよう」と思った時にたくさん動かなきゃいけないからだと思う
  • しゃべれば一瞬なのに
  • 言葉って便利ですね
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スコアはこんな感じだった。ほのぼのボウリング。林さん優勝。

これがとにかく見たかったんだ

言葉禁止ボウリングには、英語禁止ボウリングのようなゲーム性は無かった。あったのは言葉を奪われ、戸惑いながらも思い思いに躍動する大人たちだった。

つい考えすぎて身動きが取れなくなってしまう時にはいいのかもしれない。見る前に跳べ、という言葉があるが、見る見ない以前に、崖とか障害物とか一切無い真っ平らな地面で、跳べ、というのが言葉禁止ボウリングだったと思う。

跳びたいなら跳べ! ということだ。それが言葉禁止ボウリングだ!

んー、終わりー!

スコアに戸惑いが現れていた

このあと、何も禁止せず、普通にボウリングをした。

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ボウリングの打ち上げをボウリングでした。

皆、言葉を禁止した時よりスコアが良かった。皆さん協力してくれて本当にありがとうございました。

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それでもこんな感じでほのぼのボウリングだった。
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