お金がやばい
このホテルに行く前日に、僕は引っ越しをしていた。忙しかった……!
そしてなによりもヤバいのは金銭面だ。
引っ越しの金額やらホテル代やらで、次月のクレジットカードの引き落とし額がエグかった。しんどい。
クレジットカードの上限を超えて止まってしまい、各種支払いが止まって焦った。(電話をしたら上限を一瞬であげてもらえた。助かった)
貯金がまったくないということはないが、しばらくは節約せねば……
愛する弟の就職祝いに10万つかってホテルでお祝いしたら、「高級ホテルってすげぇー!!」ということに感動した。
弟の尊さと高級ホテルのホスピタリティの両方を紹介していく。
今年の4月に、弟が転勤する。
場合によっては関西や九州に行く可能性があるらしい。寂しい。
なかなか会えなくなるし、弟が関東にいられる時間も残りわずかだ。悲しい。
それならば、東京でしかできない体験をプレゼントしつつ、一緒に最後の時間を過ごそうじゃないか!!
よっしゃ、10万使ってホテルで豪遊するぞ!!!!!
香港から始まり、アジア、アメリカ、ヨーロッパ地区にも展開している世界でも有名なホテルだ。
日本では東京駅近くに「ザ・ペニンシュラ東京」があり、スイートルームからは皇居の緑園を一望することができる。(今回はスイートではないが)
転勤前の弟の最後を祝うには最高の環境だ。祝うぞ!!!!
・15:00
ホテルチェックイン
・16:00
プールとかジムあるので行く
・17:30
ホテルをブラブラする
・19:00
ディナー
・21:00
部屋帰ってルームサービス頼むとかする
・次の日
朝飯をホテルで食べて帰宅
ホテルを堪能するために盛り盛りのスケジュールにした。弟を喜ばせるためのプランを考えた結果として10万かかってしまったのである。ウケる〜
「弟の就職祝い」がメインであるが、宿泊してみると「東京のホテルのホスピタリティすげぇ〜〜〜〜」という点に感動した。とにかくストレスがないのである。
高い料金を払うのは豪勢な思いをするためではなく、ストレスをなくすためなのだ。裕福な人たちはストレスを消すことにお金をかけている。
この日の出来事は個人のブログなどで書く予定だったのだが、ダメ元で広報に連絡してみたところ、
「記事掲載は問題ございません。ファクトなどの事実確認のため掲載前に一度原稿を確認させていただけますと幸いです」
という感じのなんでも受け入れ体制で了承してくれた。やっぱり高級ホテルは懐も深いぜ……!
前提として伝えておきたいが、僕は弟が大好き。大好物と言ってもいいだろう。
10歳離れていることもあり、弟というよりも子どもの感覚に近いのかもしれない。かわいいが弟の毛穴から溢れている、それを飲みたい。
もしも、「世界と弟のどちらかを助けるか?」と問われたら0.01秒で弟を選択する。さよなら世界。
そんな弟がついに大学を卒業して、2021年に就職をした。自分の手の中にいた赤ん坊が気づけば成人して社会に飛び出している。
ついに大人になったのだ。ああ、早い……!!
それならば、祭りをするしかないだろ!!!!!!!!!!!
一応の補足であるが、宿泊の代金を取材費として出してもらったり、ザ・ペニンシュラ東京から特別な待遇をしてもらったりは一切していない。
弟の体内に蓄積されるものは俺が金をだす。お前らはなにもするな、さがれ。
さて、まずはアフタヌーンティーからだ、楽しもう。
弟の脳のシワに俺という歴史を刻む伝説の1日が開・幕!!
『就職おめでとう』のプレートは、僕がホテルにお願いしたわけではない。運ばれてきたときには、弟よりも驚いてしまった。
Webでホテルの予約をしたときに、「弟の就職祝いで利用させていただきます」と僕が書いたのを見て用意してくれたようだ。これぞホスピタリティ……!
よくよく考えたら推しが身内にいるって最高じゃない?
課金し放題だし、合法的に一緒に泊まれるし、遅延もサービス終了もない。永遠のコンテンツじゃん。
アフタヌーンティーを終えて、いよいよ今日のメインであるホテルの部屋へ。
行く前に受付で驚いたのだけれど、客室の最上階である23階だった。(全24階)
うおお、めちゃくちゃ良い場所じゃん……!!
いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!テンションあがりますわ!!!!!!!!!!
ビジネスホテルしか泊まったことがなかったので、部屋の広さに感動した。部屋から余裕を感じる。誰でも受け入れてくれるような包容力がある。
渋谷に初めて遊びに行ったときに蝶野正洋を見たのだが、そのときと同じオーラを感じた。雄大で壮大で厳格。
ちなみに、ザ・ペニンシュラ東京で結婚式をあげる際は、朝起きたときにメイクさんが部屋に来てくれるとのこと。
泊まって起きたら、ドレッシングルームで化粧や着付けをやってもらい、そのまま式場に行けるのだ。贅沢の極み。現実に戻れなくなりそう。
なんでもあるぞ、この部屋……!!
引き出しを開ければいろんなものがでてくるので、部屋を見て回るだけで楽しい。脱出ゲームみたいだ。新しいアメニティを見つけては、「おお〜〜!」としきりに感動した。
兄弟揃ってホテルの仕組みをまったく把握していないので、何にお金がかかるのかまったくわからない。
最終的にはテーブルに置いてあるワインの値段をネットで調べて、「払える金額だからOK」という情けない判断をした。兄としての威厳は地上に置いてきた。
(ちなみにウェルカムドリンクだったのでお金はかからなかった)
東京を一望できる景色、そして目の前には弟。これ以上の人生があるだろうか?
否、ない。俺は今までこのために働いてお金を貯めてきたのだ。俺より幸せな人がいるならかかってこい。
部屋を探索したり、写真を撮りあったりしていたら、なんだかん1時間くらい経っていた。あっという間だ。
プールに行く予約をしていたので、すぐに着替えて部屋をでる準備をした。
もう少し、弟との濃密の時間を過ごしたかったのだが、スケジュールを詰めすぎた。意外に忙しい。
ザ・ペニンシュラ東京の宿泊者であれば、プールやジムを自由に利用することができる。ありがたい。
「無料なものはすべて使う」、それが我ら兄弟の鉄の掟!!
「適当に泳いだら部屋に戻ってゆっくりするかー!」と話していたのだが、プールを見て硬直した。
「僕が考えた最強のリゾート地」が目の前に広がっていたのだ。
想像していた100倍のクオリティだったので、2人とも思わず笑ってしまった。想像を超えてくるものを見ると、ニヤニヤと笑うしかない。
※ プール内は撮影禁止であるため、写真はお借りしました
外を見るとスーツを着た人たちが行き交っている。僕は裸でそれを眺める。これが、勝ち組なのか。
今まで僕は、「自分が暮らせるだけのお金がもらえていればいいや」という考えて生きてきた。
しかし、このときは、本気で心から「金持ちになりたい」という欲望が湧いていた。贅沢を知らないと贅沢になろうとは思わないのかもしれない。
ザ・ペニンシュラ東京は現在、2人で3〜4万くらいから泊まることもできる。コロナで旅行に行けない今だからこそおすすめしたい。
「旅行気分になれる」という常套句があるが、そんなレベルではない。「旅行」と言い切れる。
都内から数分でいけるリゾート。このプールのためだけにまた来たい。
プールから帰ってきてヘトヘトな状態だが、ディナーは19時から。まだ時間には余裕があった。
ということで、再びスーツに着替えてホテル内をぶらぶらすることにした。今日はとことん遊び尽くすぞ!!!!
ザ・ペニンシュラ東京には、約90名のアーティストが手がけた1000を超える美術品が展示されている。
アートに興味ある人は行ってるみるだけでも楽しいかもしれない。入るだけなら無料だし。
『ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ』では、お土産用の紅茶やスイーツを買うことができる。
しかも、先ほどの厨房で作られた焼きたてパンもここで販売されている。ホテルにパン屋が内蔵されている、強い。
ここまでホテルで様々な体験をしてみて、あることに気づいた。
イライラすることや腹が立つできごとがまったくないのである。
1日中遊んでいれば、「あの従業員ムカつく」「施設の〇〇が気にいらない」というような不満が出てきそうだが、今日はそれがまったくない。ホテルにいる従業員全員の接客がパーフェクトなのだ。
「良いホテルだ」と客側が感じるためには、突出した売りがあるだけでは足らず、サービスが均一であることも重要なのかもしれない。
せっかくホテルに泊まってお金を使うと決めたので、夜はコース料理を予約した。今日はとことんお金を使う。
ホテルのディナーってもんのすごく料金が高い。
宿泊料と同等かそれ以上する。今回、ディナー料金を調べて初めて知った、驚いた。
世間の人たちはデートでこんなにもお金をかけているのか。
静寂を優しく包むようにBGMが流れ、ダイヤモンドのようにきらめく夜景を堪能。そして、心地よいタイミングで運ばれてくる料理。なにもかもが完璧だ。
唯一、異物があるとすれば僕らの存在だけだろう。
「最近、どんな漫画読んでる?」「引っ越して家が広くなった」など、どこにいてもできる薄い会話が延々と繰り広げられていた。ムーディーな雰囲気の中にちゃぶ台があるような違和感。
ホテルのディナーじゃなくて、やよい軒でも良かったかもしれない。
さあ、いよいよ、今日、最後の時間だ。
ルームサービスで料理を注文して、部屋の棚に置いてある有料のお酒を飲む!俺は今日、破産するぞ!!!!!!
これだけ懇切丁寧な接客が続くと、もう身体が贅沢に慣れてしまっていた。当初は緊張したこの部屋も自宅同然だ。
美人は3日で飽きるというが、贅沢は3時間もあれば当たり前になってしまう。
もはやシーザーサラダが3000円だろうと、5000円だろうとなにも感じない。金という名の紙を持っているから、相手に渡すだけ。
金銭感覚という名のパイロットは僕の心から旅立ちました。グッドラック。
今日、1日ホテルで過ごしてわかったことがある。
部屋が豪勢でも、食べているものが高級でも、サービスが丁寧でも、当然だが2人が話す内容や行動は変わらないということだ。
この日、大笑いするような出来事があったり、将来を左右するような会話があったりすることは一切なかった。特別なのは場所だけだ。
いつもと変わらぬ会話が延々と宙を舞っている。明日になれば何も記憶に残っていないだろう。
しかし、それが最上の幸せなのかもしれない。
普段は忙しくて足元が見えずに気づくことができないが、日常の積み重ねの延長に幸せは落ちている。ホテルでゆっくりと腰をおろすことで、当たり前の幸せに気づくことができた。
休暇にゆっくりと時間を過ごすのは、幸せの再認識のために必要なのかもしれない。
7時に起床した。
4時間しか寝ていないが、ぐっすり眠れたおかげで身体は快調だった。
この朝食を終えれば、楽しかった一日も終わる。最後の時間を噛み締めよう。自分の人生の栄養になるように、弟と一緒にいる目の前の光景をゆっくりと咀嚼する。
弟が社会人になった今でもこうやって一緒にいれるのだから、こんなに幸せなことはない。
人生はまだまだ長い。40歳になっても、50歳になっても、今と変わらぬ関係で歩んでいきたい。
僕は仕事があるのでチェックアウトより早めに帰宅することにした。
僕が期待を込めて、「一緒に出ていく?」と聞いたら、
「いや、俺はギリギリまでここで寝てるわ!バイバイ!!」
とベッドに入ったままあっさり言われてしまった。弟はこちらを見向きもしなかった。
ええ……
昨日まで、さっきまで、あんなに楽しかったのはなんだったの……
僕と弟をつないでいたのは愛や絆などではなかったのかもしれない。「ホテルの代金を出している」という事実だけだったのだ。
こんなのもう、パパ活じゃん……
1日でこんなにお金を気にせずに贅沢に使ったのは初めてかもしれない。むしろ、人生で二度とないかもしれない。
豪快にお金を使ったときって、1週間後とかに「なぜ、あんな無駄遣いをしたんだろう……」と後悔することが多々ある。しかし、今回に限ってはネガティブな気持ちはまったくなかった。
「まあ、それくらいの金額だよね」という納得感がある。それくらいホテルでの生活は快適だった。
ということで、弟が転勤してしまう前に、就職のお祝いをすることができてよかった。
関西や九州に転勤してしまったら、しばらくは会えなくなるだろう。
寂しくはなるが、そんなときには今日を思い出そう。宝箱からそっと宝石を取り出すように。
改めて、就職おめでとう。
…
……
………
という感じで、本来であれば、最後はエモい感じで終わる予定だった。
しかし、だ。
このあとに弟の転勤先が池袋だということが発覚したのである。
めちゃくちゃ東京じゃん……!!!!!!
こんなに豪華にお祝いする必要はなかったのかもしれない………
このホテルに行く前日に、僕は引っ越しをしていた。忙しかった……!
そしてなによりもヤバいのは金銭面だ。
引っ越しの金額やらホテル代やらで、次月のクレジットカードの引き落とし額がエグかった。しんどい。
クレジットカードの上限を超えて止まってしまい、各種支払いが止まって焦った。(電話をしたら上限を一瞬であげてもらえた。助かった)
貯金がまったくないということはないが、しばらくは節約せねば……
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |