特集 2024年8月21日

広辞苑の第一版は予測不能でおもしろい

最新版との読み比べがおもしろすぎる

1955年版を読んでいるうちに「最新版ではどうなっているんだろう」という好奇心がおさえられなくなった。

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というわけで、最新版の広辞苑も借りてきました。左が1955年版、右が2018年版。
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紙がよくなったのか、最新版の方がちょっと薄くなっていた。

第一版の広辞苑でひいた言葉を、最新版でもひいてみる。

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「アナウンサー」にはテレビアナウンサーの説明が追加。
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「アニメ」の項目も誕生。「アニメーター」という関連項目まで載せられている。
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「文学の王座」だった小説は「文学の中心」へ。時代を経てちょっと謙虚に。

他にも「テレビ」や「画面」の説明が大幅に追加されていたり、「チャンネル」「カー」の説明などはまるごと変えられていた。

読み比べると「辞書の改定ってこういう作業だったのか!」というのがよくわかる。

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「車」には「自動車を指すことが多い」という説明が追加。さらに図まで載せられた。
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「公害」は言葉が追加されただけでなく、関連語ふくめて1/3ページを占めるまでに。
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大出世した「スーパー」の項目。スーパーマーケットだけでなく、スーパーがつく他の言葉も大量追加されていた。
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アジヤは「アジア」、エンジニヤは「エンジニア」に。こういう読み方を変える改定は勇気がいりそう。

読み比べて特におもしろかったのが「割烹」の説明だ。

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1955年版では「料理のこと」だった「割烹」は、2018年版では「日本料理のこと」に変わっていた。

おそらく「割烹」という言葉が一般的だった頃は、「料理=日本料理」だったのだろう。

その後、海外の料理がどんどん増えて

  • 割烹:日本料理
  • 料理:料理全般

というすみ分けになり、「割烹」という言葉を使う頻度が減っていったと思われる。

こういう「昔からある言葉だが意味は昔といまで違う」という言葉は他にもいくつかあり、おおまかに3パターンがあった。

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いまと昔の広辞苑を読みくらべると、時代や社会の変化が見えてくる。

辞書、めちゃくちゃおもしろい。分厚すぎてハードルが高いという人も、ぜひ試しに辞書を読んでみて欲しい。

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なお、雑な説明で私を勇気づけた「数個」は項目ごと消えていた。広辞苑も時代とともに進化しているのだ!

読んでいるうちにどんどん楽しくなって、気づいたらランチも取らずに4時間ぐらい広辞苑をひき続けていた。

ここに紹介した以外にも「へぇ〜!」という言葉がたくさんあったので、おまけで少し紹介したい。

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1955年には「隠語」として紹介されていた「やばい」。最新版では隠語ではなくなっていた。おめでとう、「やばい」!
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昔は山口と名古屋の名物とされていた「ういろう」。最新版では「伊勢」が追加されている。この項目をめぐってどんな話し合いがあったのか、これだけで記事が一本書けそう。

広辞苑には、これ以外にもまだまだおもしろい項目がたくさんある。

「最近おもしろい本ないかな」と思っている人、ぜひ広辞苑第一版を読もう!!

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