あのピエール・エルメとのコラボ品だった
こちらの品、とらやがパリに出展して40周年になるのを記念し作られた、フランスのパティシエ、ピエール・エルメとのコラボ商品らしい。
「イスパハン」というのはピエール・エルメが得意とするフレーバーの名前なのだそうだ。
パリ……ピエール・エルメ……イスパハン……。
お、おお……。
なんもかんも知らん。
なんもかんも……知らんな!!!!
未知が畳みかけ、内在する無知が爆発してしまった。
気持ちをおちつけ正座しよう。
作ってみたらめちゃうまくいったイスパハン羊羹
さきほど「40周年記念のコラボ」と書いたが、それは2020年の話。
作ってみたらめちゃくちゃ美味しくできちゃったことから、40周年のあとも数回再販を重ねて好評続きだという。
商品として進研ゼミのDMマンガくらいうまくいっている。うらやましいな。
今回は、とらや伊勢丹新宿店のリニューアルオープンを祝うのにぴったりの品ということで改めて限定販売されているのだそうだ(販売は3月末から、売り切れ次第終了とのこと)。
イスパハンとは、どんな味か
で、このイスパハン。鬼才とも言われる凄腕のパティシエがこれぞと押し出す味、いったいどんな味かというと、すごい。
バラとライチとフランボワーズ、みっつを組み合わせた味なんだだそうだ。
みっつの風味を羊羹に生かすことにより、
「最初に甘酸っぱいフランボワーズがほのかに香り、食べすすめていくうちに華やいだライチの風味が口いっぱいに広がり、最後に上品なバラの香りが立ちのぼり、羊羹本来の甘みが感じられます。」(「小形羊羹 イスパハン」リーフレットより)
のだという。
そんなことするのか! という思いだ。
羊羹は羊羹の時点で十分美味しいのに、ものすごい複雑なことをする。
ライチといえば塩を組み合わせたところで感性がカンストし、おらが村ではソルティライチを珍重し大喜びしているわけだが、そこで終わらないあくなき味覚の旅があったのだ。
都立で言ったら日比谷味
正座のまま食べてみた。
……うわっ。こんな羊羹があるのか。
最初にフランボワーズの酸味、それからライチの香りが鼻から抜けて、追いかけてバラが香る。
最後に羊羹独特のぬったり終わらない甘みが口内に広がって滞在した。
この私の感想、ほとんどリーフレット通りじゃないか。参考書どおりテストに出たみたいなことがお菓子で起こり得るとは。
複雑で、凝っている。天才の研鑽が味として伝わる。なにか探訪的、学問的で、難解とまでは言わないが、頭の良い味がする。
都立で言ったら日比谷味である。
ふたりで勉強がんばろう
伊勢丹新宿店のリニューアル記念小形羊羹としては、もうひとつ、伊勢丹のあのタータンチェック、マクミラン柄のパッケージも並んでいた。
紅茶味のこちらも特徴的だった。
紅茶が発酵して作られる茶葉だという知識だけは持っていたが、発酵を味として感じたのは今回がはじめてではないか。一口食べるなりぶはっと一気に本気の紅茶が香る。
紅茶の奥深さがしっかりある。製法を味わっているような、飲む物を正しく食べている実感があって、おもしろい。
こちらもまけずに秀才の味であった。
イスパハンとふたり、これからもはげましあって勉強してほしい。未来はきっと明るい。
舌が驚き、羊羹の感想としてよくわからない着地をしてしまった。こういう文化的な食べ物は、たまに食べて感心していきたい。