特集 2024年11月6日

汚い字を褒め合う会をやろう

汚い字はセキュリティが高い

続いては月餅さんの字。「余白を意識している」「どの文字も真ん中にぎゅっとおさまっていていい」と初手からどんどん褒められていく。
「誠実な汚さ」「優しさを感じる」「マイペースで焦りがない」褒め殺しでどんどんニヤニヤする月餅さん。
月餅さんの最高ポイントのひとつが「急いで書いてるのに濁点を毎回ちゃんと打っている」ところ。この誠実な姿勢には続々と褒め言葉が寄せられていた。
たくさん褒められてすごく嬉しそうな月餅さん。「えっこれ嬉しい!」と叫んでいた。
続いては伊藤さん。最初に函館(下関)の字をじっくり見たおかげで「あの手帳の字の人だな」と一瞬でわかる。
小さな点でもきちんと打っていた月餅さんに対して、伊藤さんはすべての線を繋げて書くスタイル。「『とにかくペンを離さないぞ』という意思を感じていい」「でもよく見ると『そこでペンを離すんだ』というところもあって独創性がある」
「ひらがなか漢字かわからなくてフェアだと思う」「ただ書いているだけなのに謎解きの要素がある」ぎりぎり褒めている名言が次々と飛び出て大盛りあがり。
伊藤さんでひときわ目を引いたのがこの「か」。「絶対に伊藤さんにしか書けない」「セキュリティが高い暗号」と絶賛されていた。
最後は石川さん。「漢字がしっかりしてる」「読む時のガイドになる」「いい目印だ」まずは漢字を褒められる
「『じめじめ』と『ニャーニャー』も主張が激しい」「これだと思ったキーワードを強く書いている気がする」
気になったキーワードをしっかり書くのは、石川さん的にも納得感があるらしい。褒め合いは自分の字の書き方を再発見にもなるのだ!

 

いったん広告です

字には人の数だけ汚さがある

汚い字を褒め合う会がかなり楽しかったので、身の回りの友達ともやってみることにした。

まずは近所の友達にかたっぱしから「字汚い?」と聞きまくる。「誹謗中傷だ」「失礼極まりない」という返信を続々いただいた.

最終的に、前々から字が汚いと思っていた人とたぶん汚い気がする人に協力してもらうことに成功した。同じく1分で「吾輩は猫である」を書き写してもらう。
まずはこちらの字。資格試験の塾で「回答はいいが字が汚すぎる」とみんなの前で公開処刑された経験を持つ猛者である。
「全体的に平行四辺形」「どの字も平行四辺形で一貫性がある」「筆跡鑑定がしやすい」と一貫性を絶賛。
「最初の『吾輩は』だけしっかり書いてあるおかげでこの後は『猫である』だなとわかる」「汚い字とそうでない字に差がある。汚さにメリハリがある」自分でも気づいていなかったメリハリを指摘されて照れる本人。
特に芸術点が高かったのが一文字の中でメリハリがつけられている「泣」。「さんずいがしっかりあるおかげで泣ってわかる」「右と左でメリハリをつけるのは表現がコンパクトでいい」
続いては「字が汚いかどうか自信がない」と謙虚とも傲慢ともとれる発言をしていた友人の字。書き終わったあと「書いてみたらちゃんと汚かったよ」と安堵の表情を浮かべていた。
「字が小さい」「ニャーニャーの『ャ』がそこまでと思うぐらい小さい」「インクの節約になり地球にやさしい」エコ意識を次々と褒められる。
「毎回汚さの方向性が違う」「人を楽しませようという意識がある」エンターテイメント性を高く評価される。
最後にもう一度私の字も褒めてもらった。「原稿用紙の線をまるで気にしてない」「とにかく潔い」と評された。
「エクセルの接合みたいなところあるよ」「原稿用紙でこれをやるのは独創的」とのお言葉をいただいた。

散々褒め合ってわかったのは、字の汚さは十人十色ということだ。

同じ汚い字といっても、「つながっていて汚い」「つながっていなくて汚い」「小さくて汚い」「大きくて汚い」と様々な汚さがある。

字とは、人の数だけ汚さがあるものなのだ。たとえ字が汚かったとしても、個性だと思って自信を持って書き抜いて欲しい。


褒め合う会を2回やったのだが、どちらも終わった後は「郵便を出すときに毎回届くか不安になる」「親の戒名を書くとき本当に俺でいいのかと思った」などなど字が汚くて苦労したエピソードで30分ぐらい盛り上がった。

 

みんな、きっとどこかで自分の字の汚さを語りたかったのだ。ぜひ、字が汚い人は一度身の回りの人と字の汚さについて語り明かしてみて欲しい。

<もどる ▽デイリーポータルZトップへ
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ