特集 2019年10月24日

フルーチェの可能性はカルシウムで開かれる

トマトジュースで作ったフルーチェの意外な美味さを真顔で表現しました。

今まで、フルーチェが嫌い、という人に出会ったことがない。

たとえ初対面であっても、あの“クリーミーでフルーティーなプルプルとろとろ”の話をすれば誰もが笑顔になるし、「ほほう、あなたはイチゴ推しですか。私はミックスピーチですねー」なんて感じで会話も弾む。そこは憎悪も争いもない、真に平和な世界だ。

ただ、一人のフルーチェ好きとして生きてきた中で、ひとつだけ疑問がある。「どうしても牛乳じゃなきゃ駄目なのか」ということである。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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そこにカルシウムさえあれば

そもそもハウス食品のフルーチェといえば、かつてCMで「ミルクとフルーチェまぜるだけ」「やってミルク」と西田ひかるが言ってたように、基本的に牛乳とセットで作るデザートだ。

もちろん、あのクリーミーさは牛乳あってこそ、というのは分かっている。しかし、牛乳に頼りっきりではフルーチェの可能性を狭めることにもなりはしないか。実は我々はフルーチェの新たな扉に気付いてないだけ、なんて可能性もあるだろう。

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個人的にはパインが好きなのに、最近あんまり見かけないなー。

そこでいきなり「じゃあいろんな液体でフルーチェを作ってみよう」というのは、素人の手業だ。

フルーチェにはひとつ大きなお約束がある。あのプルプルとろとろを作るためには、カルシウムが必須なのである。

ざっくり言うと、フルーチェに含まれたLMペクチン(食物繊維の一部)と牛乳のカルシウムが反応して、例のプルプルとろとろにゲル化する、ということだ。

つまりカルシウムが含まれていないと駄目なんだけど、ちょっと待って欲しい。逆に言うと、カルシウムさえあればなんでもいいんじゃない?って話かもしれないぞ。

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フルーチェの作り方。かわいいキャラはアンパンマンでお馴染みやなせたかしデザインだ。

牛乳で作るノーマルなフルーチェの場合は、牛乳200mlに対して等量のフルーチェ200mlを混ぜる、と作り方に書かれている。
一般的な牛乳に含まれるカルシウム量は100ml中に110mgなので、つまり、それに匹敵するだけカルシウムを含んだ液体ならば、フルーチェをプルプルとろとろにできる可能性があるわけだ。

ところが、探してみるとこれが意外と難しい。なんせ牛乳といえばカルシウム食品の王者。牛乳以上にカルシウムを含んだ液体食品というのはまず見つからないのである。
パッと思いついたところでは、例えば硬水だ。カルシウムやマグネシウムといったミネラル分が豊富…というのが彼らのウリだが、ハード寄りな硬炭酸水の「ゲロルシュタイナー」でも100mlあたりで計算すると36mg。これではゲル化には足りない。

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ゲロルシュタイナーの成分表示。500ml中にカルシウム180mgは水としてはかなり多いけど、フルーチェのゲル化にはまだ足りない。
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とりあえずそのままやってみたけど、いつまでかき混ぜてもややトロッとするだけで、固まる気配がない。

いや、足りないといって諦めるのは良くない。足りないなら、必要な分だけ足すというやり方だってあるじゃないか。
今のご時世、カルシウムなんてドラッグストアのサプリでいくらでも買えるわけだし。

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この組み合わせならゲル化まったなしの予感。いけるはず。

ひとまず目に付いたところで買ってきたサプリは、1錠あたりカルシウムが約88mg。おお、これ1錠+ゲロルシュタイナー100mlで合計すればほぼ牛乳と同量のカルシウムだぞ!
これならいけるんじゃないですか。いけそうじゃないですか。

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カルシウムサプリを細かく割ってからすり潰して粉末にする。錠剤を割るときは林刃物の「錠剤カットハサミ」が最強によく切れてオススメ。
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炭酸水に粉末をいれたもんだから、とにかく発泡がすごい。そして明らかにさっきまでとは違うプルとろ具合。I did it!!(西田ひかるオマージュ)

予想通り、牛乳で作った場合と同様にイイ感じでみるみるうちにゲル化していく。おお、これ成功じゃないか。

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炭酸の泡を残した状態でゲル化したゲロルシュタイナーチェ(イチゴ)。ちなみに今回の試作は全てベーシックなイチゴフルーチェで作成する。

その後、念のためさらに30分ほど冷蔵庫で冷やしたのが、上写真のゲロルシュタイナーチェである。
とろっ、もたっ、とした美しいビジュアルだ。ゲルの中の泡が涼しげで、もうちょっと暑い時期に作れば良かったなー、という気がする。
では、いただいてみよう。

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あっ、なんか遠くの方で炭酸がシュワッとする。

写真はややマズそうな表情になっているが、味は悪くない。というか、こういうデザート普通にありだな、ぐらいのレベル。
炭酸水で作ったんだからクリーミーさは当然ゼロだが、イチゴの甘酸っぱさとプルプルとろとろ食感の奥に軽く炭酸のシュワッとした感じがあって、面白い。あー、これ絶対に夏のデザートだ。
ただ、攪拌時に炭酸が抜けすぎたせいで、期待していたほどのシュワッが無かったな−、という残念さが写真に出てしまったのだろう。

ともかく牛乳を使わずともカルシウムさえ足せばフルーチェは作れる、という確証は得た。
他にもいろいろと試してみよう。

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可能性の扉、開いたぞ

とりあえずいろいろ試すに当たって、ひとつポイントにしたのは「糖分が入ってないドリンク」をベースにするということ。フルーチェの原液自体がかなり甘めなので、そこからさらに甘みを足してしまうと困ったことになりそうだ、と考えたのである。

で、そういった糖分無添加ドリンクーチェをいくつか作ってみた中で最も「これは新しい!」と感じたのが、こちら。

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これだってちゃんとフルーチェになるはず。トマトジュースは硬炭酸水よりカルシウムが少ないので、とりあえず計算して必要量を添加する。
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はい、トマトーチェ(イチゴ)。

実は以前に「イチゴとトマトのジャム」というのを食べたことがあって、ゲテモノだと思ったらこれが意外と美味かったのだ。
ジャムも要するにペクチンによるゲル化作用の産物(ジャムは酸と糖でゲル化するHMペクチン)なので、トマトとフルーチェもわりと方向性は近いんじゃないかと推測した次第である。

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新たな可能性に思わず真顔になる。これ扉開いたぞ。

トマトーチェ、有りだ。トマトの青臭さがイチゴの爽やかさにマッチしてるし、トマト自体の旨味成分もプラス方向に作用してる。さすがにトマトが苦手という人にはおすすめできないが、トマト好きならみんな真顔になって「おお」と言ってくれるんじゃないだろうか。
今回は低塩とはいえ塩分入りトマトジュースを使ってしまったが、食塩無添加のものを使えばさらにフルーティな感じで良くなりそうな気がする。

もうひとつ、これは完全に想定外だったのがコーヒー。

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コーヒーはカルシウム分ゼロなので、初手から牛乳と同量になるまでサプリで調整する。
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見た目もひどいコーヒーチェ(イチゴ)。これで期待しろというほうが無理じゃないか。

正直な話をすると、コーヒーは完全に「作ってはみたものの、そりゃ駄目だよね」枠として準備していたものである。
いや、だってそりゃそうだろう。プルプルとろとろでイチゴでコーヒーって、無いって。

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あれ?俺なんかおかしくなってる?これはこれでありな気がするの。

ところが、これが思ったほど悪くない。大手を振って「バンザイ!うまいです!」とは絶対に言えないけど、でも、コーヒーの香りとイチゴ味……俺、これ嫌いじゃないかもしれない。
苦みと酸味と香りがプルプルとろとろと舌の上で溶けていく感じに最初は戸惑うが、慣れると「もう一口いけるかも」みたいな気分になってしまうのだ。
ただ、妻に試食してもらったところ「これは許せない。すぐ吐き出したい」と言われてしまったので、人によるのは間違いなさそう。

ちなみにあとで調べたら、ネスカフェのサイトにもイチゴをいれた「イチゴコーヒー」というまんまダイレクトなレシピが載っていたので、俺だけがおかしいわけじゃない、とは言っておきたい。

逆に、期待しすぎて残念だったのが、紅茶を使った紅茶ーチェ。

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試す前は圧倒的に期待値の高かった紅茶。
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見た目もコーヒーチェと比べたら断然にありな紅茶ーチェ(イチゴ)。

ジャムをいれて飲むロシアンティーだってあるし、そもそもフルーツの風味と相性が良い紅茶だけに「これは間違いないぞ」とかなり楽しみにしていたんだけど、作ってみるとなんかちょっと違う。

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うん……ガウスぼかしをかけ過ぎた的な味だな。

いや、決してマズいわけじゃない。マズくはないんだけど、なんというか、思ってたほどの感動がないのだ。最初の期待値が高すぎたか。
どこかうすぼんやりというか、イチゴと紅茶の両方がかなり遠い。距離にして500m先からうっすら見えてるぐらいのかすみ具合。なんかプルプルとろとろ食感によって風味にピントが合いにくくなってるような気がする。
とはいえ、そのまま飲む用のペットボトルではなくて、自分で濃いめに紅茶を入れて作ればまた結果は違ったような気もするから、全否定もしづらい。

そして間違いなくフルーチェな豆乳ーチェ

で、結局のところ試すまでもなく一番美味しかったのは、豆乳を使った豆乳ーチェである。
だって普通に牛乳の代わりになるやつなんだから。失敗する要素が見つからないだろう。

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フルーチェのパッケージにも「かたまりません」と明言されてる豆乳。カルシウムは含まれているが、やっぱりプルとろには足りてないので必要量を添加する。
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カルシウムさえ足せばこの通り、豆乳ーチェ(イチゴ)になるのだ。

見た目も違和感なく、ほぼフルーチェ。
あー、これ間違いないわー。絶対に問題ないわー。

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ほらやっぱり。思わずウフフと笑ってしまうフルーチェっぽさ。9割ぐらいはフルーチェだ。

なんせ、今まで試したどれよりもクリーミー。新しい扉をこじあけるために色々と無茶をしてきたが、結局のところはここに収束する気がするのだ。
ここまでの全てを台無しにする結論で恐縮だが、フルーチェはクリーミーかつプルプルとろとろであってこそ、である。うまーい。
確かに、牛乳で作った本家フルーチェと食べ比べると、ややあっさりとしている気もする。でも、いきなりこれだけ出されたら「ウフフ、フルーチェはやっぱり最高ですね」と微笑んでしまいそうだ。豆乳ーチェなのに。逆に、あっさりしてる分だけ豆乳ーチェの方が好き、という人もいるかもしれない。

なにより、牛乳アレルギーの人は当然フルーチェを楽しむことはできないが、大豆がイケるなら豆乳ーチェも食べられるんじゃないだろうか。これはちょっと助かるわ、という人もいるはずだ。

あと、カルシウムはサプリで1日に500mg以以上を摂取すると、腹痛やその他の問題を起こす可能性があるとも言われている。いちおう念のため、一度に無茶な量を食べるのはやめておいたほうが良さそうだ(今回の記事も試食を複数日に分けた)。

 

ちなみにフルーチェのパッケージ裏には「フルーチェは冷やさない」「牛乳は冷えたものを使う」という注意が記されている。

これは、フルーチェのペクチンとカルシウムが一番反応しやすい温度が15℃前後だから。常温のフルーチェと冷蔵庫で冷やした牛乳を合わせるとそれぐらいの温度になるわけだ(ハウス食品お客様相談室に確認)。なるほど納得。

あと、「牛乳は一度に注ぐ」「かき混ぜる速度は1秒間に2回転」とも書かれているんだけど、こちらはベストなプルプルとろとろ食感を出すのに必要な行程とのこと。フルーチェ、意外と製造上のお約束が多いな。

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きちんと注意書き通りに牛乳で作ったフルーチェが結局最強だったりも。

 

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