美味しいけどコスパが悪い
今回の美味しいお箸にひとつ問題があるとすれば、削り出すのに時間がかかりコスパがめちゃくちゃ悪いということだ。削っている間にお腹が減ってしまう。
もっとより簡単に美味しいお箸ができないものか…今後も模索していきたい。
食事をするとき毎日のように使っているお箸。
そのお箸自体が美味しかったらどうだろう? カレー味や梅味など、いろんな味がするお箸があったら、もはやオカズがいらないじゃないか。
そんな「美味しいお箸」を夢見てたどり着いたのは、「鰹節からつくるお箸」だ。
強度もあるし、見た目も理想的になるんじゃないか。
この企画の元ネタは、何年も前に見た夢である。夢の中で私は中華屋に入り、ラーメンとご飯を注文した。
そして、近くにあった箸入れからお箸を取り出すと、先端に何かがついている。…柴漬けだ! 柴漬けがついているお箸だったのだ。
この夢の感動をどう現実に落とし込んだら良いのか、長年悩んだ。例えば割り箸をカレーに煮込んだら美味しいお箸になるだろうか? いや、そのエキスを吸いながら食べるのはイメージと違って貧乏くさすぎる。
そしてたどり着いたのが、鰹節から箸を削り出すというものだった。
買ったは良いが、想像以上の固さ。蹴りながら地球を一周してもほぼ変わらない姿で帰ってこれそうなくらい固そうにみえる。
ただ、木に近いのであれば削ればいいのだ。
ふだん固いものと向かいあって生きていないので、どうしたらいいのかさっぱりわからなかった。
DIYに詳しい知り合い何人かに意見を募った結果、電動のこぎりじゃないと無理じゃないか、と教わった。…そんなのもってないぞ。
電動のこぎりを買ったとしても、固定するものが無いとダメだし、怪我したら怖いのでこのミニルーターに落ち着いた。
これは先っぽを変えると石やガラスに彫刻したり研磨ができるというものだ。ちょっとずつにはなるが、木を切断できるパーツもある。
固いし工具慣れもしてないし、不安でいっぱいだ。とにかく怪我しないようにと恐る恐る、ちょっとずつ切れ込みを入れていった。
途中、休憩にとコンビニに行って帰ってくると、部屋中が生臭くなっていることに気づいた。最初はいい香りと思っていた鰹節だが、粉が飛び散りすっかり部屋に魚くささが充満。服やそのへんにも削りカスが飛んでいたのだ。
たまらず窓をあける。近所の猫たちが集まってきちゃうかも、でもそれはそれで面白いな・・・、などと考えていたらハエが一匹部屋に入ってしまった。くそう! 思うように進まない。
写真だと一気に進めたように見えるが、実は鰹節が届いてからここまでで1週間ほど経過している。ミニルーターを買い足したり、手がしびれたりしている間に時間は経過しているのだ(写真を見返すと服が変わってます)。
合計すると5~6時間程度の削り作業だったが、実際は長い付き合いだった鰹節。最後は端正込めて小刀で仕上げる。
本当はヤスリのようなものをかけてもっと滑らかにしたかったのだが、ここに来て強度が弱まってきたのでこれ以上は断念。さあ、いよいよ夢の食事といこうじゃないか!
鰹節で削ったお箸で何を食べるのが一番いいのか熟考した結果、お茶漬けにすることにした。
あまり主張の強すぎない食べ物かつ、お湯に浸かる部分からダシが出たら最高だと思ったのだ。
結論を書くと、ただ箸として使う分には、お茶漬けの味が変わったと感じるほどではなかった。
だが美味しく感じるのだ。なぜなら鰹節の良い香りが間近でするからだ。
水のペットボトルの蓋にレモンやバニラなど香料を敷くだけで、不思議とその味がするように思えるのと近い効果が起こるのだ。
お茶漬けに鰹の香りはピッタリだし、たくあんにも合う!
鼻フック顔になる以外は、良かったと思う。
夢の中で味わった柴漬けのお箸のように、それだけでオカズとなるようなダイレクトな味はないけれど、本当に美味しいと感じる。香りだけでなく、お湯で濡れた先端部分は少しかじったりしつこく舐めることできちんと鰹節の旨味が出てくる。
鰹節の風味がきいたお茶漬けとたくあんは両方とも高級感を増したようだった。
次にちょっとやってみたくなったのは鰹節のマドラーだ。
お茶漬けのときと同じく、ただお酒を混ぜるだけでは味はほぼ変化しなかった。だが、顔に近づけた時に鰹節のいい香りが鼻を抜け、結果美味しく感じるのだ。
ツマミにしたチーズと生ハムも、鰹節の爪楊枝を刺すことでスモーキーな香りがプラスされてさらに大人向けになる。
ちょっとお茶漬けと違ったのは、長くお湯割りに入れることにより、マドラーがふやけてきてかなりかじりやすくなってきたことだ。
なんかに似ているなと思ったらこれ、塩気のない鮭とばみたいな感じだ! ここまで柔らかくなれば(といってもちょっと固いけど)普通に美味しいツマミである。
おでんの出汁割りみたいになるかと思い、削った時に出たカスを大量に入れてみた。が、それだけだと塩気が足りずイマイチ。そこで梅干しを入れたらいい感じになってきた。
鰹節のマドラーで梅干しを潰しつつ、たまにかじってはお酒をすする。あれ、これ本気でいいぞ。
当初の目的は美味しくご飯を食べるというだけだったのにお酒まで進んでしまうとは。美味しいお箸&マドラー、流行るかもしれない!
今回の美味しいお箸にひとつ問題があるとすれば、削り出すのに時間がかかりコスパがめちゃくちゃ悪いということだ。削っている間にお腹が減ってしまう。
もっとより簡単に美味しいお箸ができないものか…今後も模索していきたい。
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