カラオケの話を聞くのが好き
JOYSOUNDさんはスポンサーでもあるので定期的に話をしているが、カラオケの話が毎回面白い。音楽性を軸にしつつ、誰にでも楽しめる工夫が端々にされているからだ。
その工夫に感謝しつつ、高得点界隈で人気の曲を聞いたので歌ってみたら本気のアドバイスが出た。
カラオケで採点機能を使った。
「『あなた流』が最高潮です。音程を正確にとってみましょう。」
というコメントが出た。
これはつまり、音程を外しているということだろう。
それを「『あなた流』が最高潮です。」とはずいぶん気をつかった表現である。もしかしてあのコメントは気づかいの塊なのではないだろうか。
メーカーに聞いてみた。
ーーー うまくない人へのコメントに気づかいを感じました
中谷:
はい、ほかに「独特のリズム感」や「あなたは作曲家です」というのもあります。
ーーー 作曲家って元の曲を無視してるってことですね。そもそもあのコメントは得点を元に選んでいるんですか。
中谷:
音程や安定感など、採点画面で見えている5つの要素だけじゃなくて、点数化されてないところに関しても特化したところがあれば、コメントに入るようになってます。しゃくりとかリズムに関するコメントもあります。
ーーー コメントって何種類ぐらいあるんでしょうか
中谷:
トータルで数百種類はあります。
ーーー コメントは2行だから、その掛け合わせの数だけあると
中谷:
はい。組み合わせだけで言うと数千パターン以上になります。
うまい人だと高得点ばかりで、そうじゃない人だと低得点ばっかりになるんで、1行目だけ見たなとか、2行目だけ見たなっていうのはあるかもしれないですけど。全く同じのを見るのはたまにぐらいなんじゃないでしょうか。
ーーー私は見たことないですが、上手な場合はどんなコメントが出るんですか
中谷:
上手な場合は具体的というか。とにかく褒める。リズム感がいいときは「文句なしのリズム感で完璧です」や、ほかでも「世界中に響き渡る」とか
ーーー褒め言葉のバリエーションって難しいですよね
中谷:
そうですね、「 言うことなし。あなたは素晴らしい音程感の持ち主です」とか「プロのアーティスト顔負けの完璧な音程感です」とかですね。「1曲を通してぶれることなく完璧です」とかいろんな褒め方があって。かなりひねり出してますね。
ーーー中谷さんが書かれたんですか
中谷:
いえ、ハナミズキの作曲家のマシコタツロウさんに監修いただいてます。私もちょっと手を入れたところはありますけれども、マシコさんに考えていただいた部分が多いですね。
これは私が勝手に思ってるだけなんですが、マシコさんが普段ディレクションをされるとき、いろんな言葉でアーティストさんに伝えるので、伝え方もバリエーションをお持ちなんだと思います。
ーーー うまくないときの言葉もある
中谷:
たぶん、プロじゃない方にアドバイスする機会もあるのだと思います。あと、ご本人もライブとかされてますので。おそらく、自分自身がうまくなってきた過程とかもトレースされてるんだとは思います。
ーーー うまくないときも目立つポイントから言葉を選んでいるんですよね
中谷:
得点が高くない場合のほうが、パラメーターからこの要素が足りないだろうってのは分かるので。
「リズムが乱れて惜しいところがあります。あと1歩です。」
「ドラムの音を意識するといいかもしれません。」
「まずは小節の1つ目の音をリズムよく当てましょう。」
とか具体的なアドバイスができますね。
ーーーただただ慰めてるわけじゃない。褒める場合とそうでない場合はどっちが大変ですか
中谷:
十数年前になりますが、カラオケの採点コメントがけなしすぎているというか、少し辛口で…そこから、点数が低いときに傷つかないような表現へ整えていくのが大変でした。
ーーーけなしすぎてる時の言い回しってどんなのでしょうか
三島:
当時は酒井政利さんに監修いただいてました。昭和を代表する音楽プロデューサーで、ピンクレディーを世の中に輩出した方です。コメンテーターとしてもワイドショー等々にも出ていて、音楽の知識があって、キャラクターとしても成立してる。その時は当社としても、ボーカルレッスンのアドバイスのようなものではなくて、もうちょっとエンタメ性の強いものにしたかったので。
あのとき確か3日間ぐらいずっと会議室で、紙と鉛筆持って、「ビブラートがいいんだけど、ロングトーンが低い場合のコメントをお願いします」みたいな形でやったんですよね。
本当に酒井さんはエンターテインメントの人なので「あなたの声は宇宙まで響きます」とかそういった言葉をチョイスしてました。
一方、悪い時はですね、例えば「身内に不幸があったんですか、声が出てません」とか「もう少し違う趣味を探してみたらどうですか」とか、ちょっとそういう方向に行ってしまって。
間もなくしてですね、いろんな方からやはりちょっと指摘を受けまして、で、ガラッと内容を変えたという経緯があります。
ーーー 「違う趣味を探してみたらどうですか」っておもしろいですね。昭和と令和の時代感ありますね
三島:
監修してもらった方の色が強く出たのと、我々もやったことがないような機能だったので ちょっと振りすぎたなっていうのはありますね。
ーーーコメントとしては面白いんですけど、自分が言われるとショックかもしれないですね
三島:
そうなんです。ちょっと半分冗談みたいなエッセンスはあったんですよね。
レッスンに行って先生からそんなこと言われたら確かにショックかもしれないですけど、そうじゃないですよ。あくまでもカラオケで遊んで歌った後のフィードバックのコメントだったので。
中谷:
ただ、昔ながらの上司と部下でスナックとかに行って、辛口なコメントが部下に対して出る分にはいいんですけど、上司に出ちゃって変な雰囲気になるっていうのは想像しやすい。
そこにママさんとかもいらっしゃって、フォローしづらいという。
ーーーコメントは得点高くても低くても頭使いますね
中谷:
褒めるバリエーションを考えるのが大変ではあります。点数低い方は、クッションを考える手間と、基本的なコメントを限られた文字数で表現する必要があって。これができてなさそうだなっていうのをひねり出す。
ーーー文字数の制限がなかったら言いたいことが言えるのに
中谷:
文字数もあんまり長くしすぎると逆に伝わらないっていうのがあって。
結果画面ずっと見てるってことないと思うので。あれをじっくり全部見ようとすると、たぶん1分ぐらいかかるんですよね。
でも、もう次の人が待ってるし、そんな長いこと表示するわけにはいかないので。
ーーー次の人がいるからじっくりは見ないですね。
中谷:
パッと見でわかるようにしないと。テンポよく、短く伝えることも大事なんですよね。
ーーー カラオケ採点の難易度は、随時調整するんですか
中谷:
2022年に「分析採点AI」をリリースしたときと、あと2023年に新機種「JOYSOUND X1」を出したときに調整してます。 あんまり頻繁に採点基準を変え過ぎちゃってもですね。カラオケで高得点を目指す方にとっては、せっかく攻略できてきたのに、急に変わったということになりますので。
ちなみに、過去に最もユーザーから反応をいただいたのが、2015年に採点基準を変えたときでした。そのタイミングで、採点を厳しくしたと同時に、コメントも厳しくなっちゃったっていう。
それでクレームもありました。
ーーーそれまでは甘かったんですか
中谷:
歌う楽しさを優先していたので、見方によっては「甘い」といえると思います。2015年のちょっと前ぐらいからカラオケ採点の利用者が増えてきていて。
それまではちょっとゲーム要素が強いというか。とにかくテクニックをいっぱい入れれば高得点を狙えるとか、そういう要素が強かったんですけど、カラオケ採点がテレビ番組とかで取り上げられるにつれて、ちゃんと歌唱のうまい下手を判定しなきゃねっていう風潮になって、2015年にこれまでより厳しめの基準に舵を切ったんです。
ーーーしかし、ユーザーからは反発があったんですね。そこからどれぐらいで方針転換したんですか
中谷:
1年か2年か、それぐらい。1年後には、ユーザー様の意見に寄り添うかたちで軌道修正しました。
ーーー みんな厳しいことを言われたくないのかな
中谷:
1人で来てたらいいと思うんですよ。ただ、周りに人がいると気まずいですよね。
ーーーひとりでショックを受けるというよりも関係性の中で
中谷:
そう、そうなんですよ。
三島:
厳しくしたら厳しいって言われて、優しくしたらまたその逆のことも言われるというのはいまだにずっとあるんですよ。
一般的にJOYSOUNDは甘いって言われてるんです。どこまでいっても、歌のうまさを万人が納得する形で点数化するのって難しいと思うんで、どういった方針でやるかによります。技術的にはどっちでもできるんですよね。
中谷:
いろんな目的で採点されてる方がいて、単純に点数競って盛り上がればいいっていう人もいれば、ちゃんと歌練習したい方もいらっしゃいまして。
ちゃんとやりたいっていう方は、もうちょっと厳しく細かく見てほしいし、負けたら罰ゲームとか盛り上がりのためにやってる方は、そんな厳しくされてもな…っていう。
ーーーところで最近の歌って難しくないですか?
中谷:
高得点出すのが 難しくなっている傾向にあると思います。昔からそういう曲はあったんですけどランクインすることが多くなった。 YOASOBIさんの「アイドル」とか。
音程の跳躍や、急に飛ぶところが多くて、音符が短いとかですね。短いと音程は合わせづらいですよ。
ーーー簡単な曲はなんですか
中谷:
ちなみに、高得点界隈で取りやすいねって言われてるのが、「セーラー服と機関銃」ですかね。薬師丸ひろ子さんの。ゆったりした音程で跳躍がない。長い音符が多いこと。
ーーー高得点界隈があるんですね
中谷:
ありますね。「全国採点グランプリ」っていう採点機能がありまして。上位は100点が取れるハイレベルな方々が、しのぎを削っている状況です。
ーーー100点が出ちゃうんですね
中谷:
バランスはすごく難しいんですよね。厳しくしすぎるとクレームが来ちゃったりとか。
いろんなユーザーさんが同じ機能を使うっていうところの難しさはあるなと。
毎回1人で来て、めちゃくちゃ歌ってる方から、飲み会でただ単なるゲームで使ってる方まで。皆さんの満足度をできるだけ高められるようにバランスを取らなきゃいけないっていう。
ーーー 全ての学力の子が同じテストするみたいなものですね
中谷:
カラオケは大衆の娯楽なので、ターゲットユーザーが決められないんです
JOYSOUNDさんはスポンサーでもあるので定期的に話をしているが、カラオケの話が毎回面白い。音楽性を軸にしつつ、誰にでも楽しめる工夫が端々にされているからだ。
その工夫に感謝しつつ、高得点界隈で人気の曲を聞いたので歌ってみたら本気のアドバイスが出た。
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