いろいろな島で出会ったヤギの写真を見て、このヤギ良かったなあ、長い時間見ちゃったなあとかいろいろ思い出しながら記事を作っていて、ふとヤギはどんな思いでこちらを見ていたのだろうと考えたが、やはり少し馬鹿にされていたのかもしれない。
マイ・ベストヤギたち
数々のかっこいいヤギとそのかっこよさを紹介してきたがここからは私が惚れに惚れた現時点の推しヤギベスト3を挙げていきたい。
漆黒のクールビューティー
海風になびくクワズイモの前にすくっと立っていたのは南国の緑を飲み込むようなリッチブラックの毛並みを持つクールなヤギ様だった。
これほどパキッと黒いのは見たことがなかった(たぶん)。先にあげた「沖縄でなぜヤギが愛されるのか」(平川宗隆・ボーダー新書)によると白はヤギの毛色の中で最も優性であり、白い日本ザーネン種との交配で沖縄のヤギの毛色は白が占める割合がかなり多くなったというから、レアキャラではあるのだろう。
黒い、かっこいいけどなんかこわい。暗黒からの使者、サバト......。禍々しいイメージも相まってその迫力に圧倒されていたら草むらからまた一頭姿を現した。
黒ヤギは母親だった。白いヤギとの間にできた子なのだろうか。真っ白でかわいい子ヤギは人なつっこくこちらに歩いて来てしきりににおいを嗅いでいたが、母ヤギは用心深く距離を取りながら子に「そんなうだつの上がらなそうなサラリーマンに近寄るのはよしなさい」と諫めるように鳴き声をかけていた。
世界一美しい少年のようなヤギ
竹富島でこのヤギを見て瞬時に映画「ベニスに死す」に出てきた世界一美しい少年、ビョルン・アンドルセンのイメージが想起され、ベニスに死んでしまうのではないかと思った。それほどまでの美ヤギがこの世に存在したのだ。
左右対象にゆるやかなカーブをえがく完璧に整った角、黄金色の巻き毛の間からのぞく無垢さと計算高さを内包した瞳。それらが織りなすどこか憂いをたたえた表情には時が経つと失われてしまうような、脆くてかけがえのないきらめきがあった。
西表島をロック・タウンにしてしまう
日本最大の秘境、西表島で私に忘れられない感動与えたのは柵越しに寄ってきたロック・ステディなやつだった。耳をすませばラバー・ソウルの靴音とRock This Town(邦題:ロック・タウンは恋の街)が聞こえてくるようだ。
私が中学の頃、初めて買った洋楽のレコードはストレイ・キャッツの「ごーいんDOWNTOWN」だった。不良の先輩や暴走族のかつあげから逃げるように暮らし、リーゼントを見るのも嫌だった私はジャケットのブライアン・セッツァーを見て本当にかっこいいリーゼントを見た気がしたのだった。
西表島のブライアン・セッツァー(ストレイ・キャッツのボーカルのかっこいい人)は 完璧なリーゼントパーマで若き日のあの憧れの心を呼び覚ましてくれた。
鳴き声を聞くことはできなかったのだけど、きっとグレッチのような声だったに違いない。