書き出し規定部門・モチーフ『音』つづき
彼の三三七拍子は裏拍だった。
アダナス
ミラー越しにふたつの寝息が届いた。
南極行太郎
それは幸せの音。
秋のひまわりはよく軋む。
南極行太郎
可愛いくしゃみ。振り返る先にはおじさん。
早百合
音は隠蔽できたが臭いは拡散してしまった。
吉田髑髏
隣はまたカップ焼きそばだ。
カズタカ
蜂の巣を踏みつける。骨に伝わるクリスピー。
白石ポピー
ドップラー効果。金切り声に近い、君を乗せた救急車のサイレン。
山田ユキ
回る洗濯槽の中に言葉を探している。
ねもっ血風クン
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まどろむ意識の中、娘が二重跳びで風を切る音だけが反響していた。
暖簾の部屋干し
小学生が出すかっこいい音と言えば二重跳びの音。
革靴が花道を蹴る。俺が世界だ。
たに
ゾーンに入れた者のみパチンコ店で静けさを手に入れる。
ぐるりん
パチンコ店を訪れる者は喧騒よりむしろ静寂を求めている。
渡らないで待つ俺に踏切が喧しい。
ろっさん
まるで叱られてるみたい。
襖を開け放つ殿の手は速すぎて見えなかった。
suzukishika
魔女が指を鳴らすと、大阪のおばちゃんの服から一斉に獣の咆哮が鳴り響いた。
prefab
それでもおばちゃんの方がやかましい。
ペニスケースを叩く雨粒の音で目覚めた。
寂寥
テレビドラマのインターホンだと悟った時は、すでにハンコを持って玄関先に立っていた。
g-udon
オルゴールは間のわるい最後の一音を絞り出し、西陽のあくびを誘った。
タカタカコッタ
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後ろから奴を撃った。テレビからは「やすい、やすぅ〜い」の声。
たこフェリー
月明かりにまぎれ、忍者が庭に降り立つと同時、池の鯉が跳ねた。
七世
おっさんの皮膚がスピーカーの役割を果たしている。
いそうろう
焚き火の中で何かが爆ぜた。僕らは瞳の炎を見つめて、ルーツの話を始めた。
なかもりばなな
そう、これが罪の音だ。濡れた手袋を外しながら男は言った。
たうる
4つの小便器が歌を奏でている。
いそうろう
現代音楽みがある。
ブレーキを少し握りながら自転車を押すと、酔い狂った笑い声みたいな音が鳴る。僕はその音で、「岡島のもっぺん」を思い出す。顔中皺くちゃでタニシみたいに真っ黒だった目、たんぽぽの綿毛みたいなのが一面に張り付いてた背中、ズボンの後ろから垂れていたビニール袋。
なかもりばなな
岡島のもっぺんのキャラが気になりすぎる!
「あなたの親は毒親です。」その言葉を聞いた時、私の中の生きづらさがシャボン玉の如く弾けて消え、かすかな静寂だけが残った。灰色だった世界が、少しだけ色づいた気がした。
a bit felicity
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それでは次回のモチーフを発表します。
次回モチーフ
『官能小説』
『官能小説』
次回は「官能」をテーマに深淵なエロスを表現してください。何度か出したお題ですが怪談と同じく、無数の切り口や視点を持てるテーマです。コツはどんな事象もまず「エロいのでは?」と疑ってみることです。日常に潜む、これまで気づかなかったエロスを発見してください。
締切は12月19日。発表は22日を予定しています。下記の投稿フォームからご応募ください。力作待ってます!
最終選考通過者
加藤ペーラ 首廻り寝具 節度亜図夢

