特集 2025年10月20日

書き出し小説大賞 296回秀作発表

書き出し規定部門・モチーフ『ゆるい絶望』 つづき

父は入っていたケンタッキーの部位を見て顔をしかめた。
ぐるりん

ハズレ部位じゃん!

友達の友達と席で二人きり。「いい天気だね」の後が続かない。
げたのにつけ
不用意にオタマを洗い、Tシャツがずぶ濡れだ。
g-udon

人類がいまだ解決できない問題。

大丈夫、きっとPayPayが使えるはずだ。楽しみにしていた鶏白湯ラーメンは、もはや何の味もしなかった。
ゆうちゃん

あるわー。すべて政府の責任。

ヒップハングのスカートを、気づけばジャストウエストで履いていた。
小野芋子
A棟がこんな奥地にあると誰が想像できる?
暖簾の部屋干し
鼻の穴に入れた南天の実が奥へ奥へと吸い込まれて行く
加藤ペーラ
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紙の端が、指の肉を割って切り進む感覚がした。
まおん

読むだけで痛い。体感する文体。

居留守しているのに、誰も気付いてくれない。
ろっさん

誰も気づかない居留守──パラドクスの思考実験みたい。

サイズを間違えた。3億が入らない。汗を吸った目出し帽は重い。
maebarc
きいろのくれよんがない。ばなながかけない。
いちもくれん
ご飯の上のふりかけが、フーフーの風圧で食卓に散らばった。
imaちゃん
定食屋での注文は、飛行機の音にかき消された
寿三郎

福生あたりの鄙びた定食屋。文学の匂いがする。

「光沢のある面」が見当たらない
暖簾の部屋干し
コンビニのレジでバーコードをスキャンするたび、ピッと音が鳴る。僕の寿命も、一円ずつ、こうして誰かに売り渡しているような気がした。
箭田儀一
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風になることを風化というならば、悪くない気がした。
南極行太郎
玄関に突っ立ったままスプリンクラーの雨を浴びている。
七世

表情が浮かぶ文章笑

わたし以外の全員が結託して、わたしをPTA会長にしようとしている。
もんぜん
お父さんごめんなさい。あたしお母さんよりごはんを作るの上手くなっちゃったよ。
小鳥待て
露天風呂でセミを踏んだ。新しいな、うん。新しい感触。ぼくの足裏はそう思っただろう。
たうる

いくつになっても初体験って残ってるんですね!元気をもらいました。

勝手に去勢されたがどうにかなっている。
いそうろう
棺に釘を打つ衝撃で目が覚めた。
suzukishika
パン粉じゃない。砂鉄だ。
寂寥

揚がらない話。認定。

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それでは次回のモチーフを発表します。

次回モチーフ
『音』

次回のテーマは音。雨、風、雷など自然の音。コップを置く音。皿が割れる音。岩にしみ入りる蝉の声。駅前に響くバニラ求人の音。印象的に音がひびく書き出しを募集します。今回は禁じ手ルールも追加します。オノマトペは「禁止」です。擬音語を除いた表現で、読者に音を伝えてください。
締切は11月14日、発表は17日を予定しております。下記の投稿フォームからご応募ください。力作待ってます!

最終選考通過者

本野ムシカ 全力中年 無意味創造委員会 節度亜図夢 南極行太郎 しょーりん 人馬一体勘 うにねこ いずも 楽観的ネガティブ

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