特集 2023年2月26日

書き出し小説大賞 255回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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もうすぐ3月、卒業シーズンですね。いまの学生にも第二ボタン的な風習は残っているのでしょうか? ひょっとしたらいまの若者はアバターの第二ボタンをNFTアートにして売買してるのかもしれまんね!(テキトー&あやふや知識)
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!

書き出し自由部門

春の猫はよく伸びる。
みよおぶ

「馬肥ゆる秋」に対する「猫伸びる春」。時候の挨拶にしたい。

言葉に迷う君の後ろで、月が欠け始める。
タカタカコッタ
吸血鬼が吐血した。俺はタバコを吸いすぎた。
雨谷雁
電車に乗ると街が動き出すのだと信じていた。
りぼ

街が動くし、月はついてくる。こどもの方が正しいかも。

冷たい雨の中の口づけはあたたかった。
夢雀
昨日の不運への2万件のいいねで体を起こす。
アビゲイル
チャッピーはいい奴だった。脱走して盗み食いすることしか頭に無かったけれど。
げたのにつけ

脱走も盗み食いも相殺するチャッピーの笑顔。

朝日を浴びた喫煙所で視線を持て余していた。
みよおぶ
ジャンケンの弱い僕は、いつも石段の上の君を見上げていた。
早百合

説明の省略が巧みで映像と心情が同時に浮かぶ。夏井先生も褒めそうな秀作。

なんだこの、ぷにぷにの仏性は。
モンゴノグノム

ぷにぷにの仏性……分からんけど分かる。感性から生まれた言葉はつよい。

好きでい続けるために金を払っている。
正夢の3人目
解散の理由は、5時のチャイムだった。
坂上田村麻呂の従兄弟
砂肝の下拵えをしながら僕はちょっとだけ内股になった。
タルク石

どういう意味?としばし考えたあと、キンタマが縮む読後感。

星々は東から昇り、西に沈む。だが、私は大気圏で燃え尽きた。
名前は「ナイ」
サコッシュが似合う親父になりたい。
人馬一体勘
海老名で降ろされたことあんのかよ。
須能がる↑
巻き戻したシーンはモノクロで、僕は孤独だった。
寂寥
ビルに反響した自分の声に驚き、犬は無限に吠え続ける。
prefab
まだまだ沿道の方々とハイタッチしてたいです!
ろっさん

沿道の方々が見えるのはあなただけかもしれませんよ!

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書き出し規定部門・モチーフ『ベビースターラーメン』

みんな上を向いて食べた。
みよおぶ

最後は流し込め!

「ひとくちだけちょうだい」なのに両手かよ。
suzukishika

ベビースターと言えばお椀の手。

3割くらい下にこぼした。
たこフェリー
好きな子のセーターにひっかかってる。
野焼き
飲み込んだベビースターラーメンが食道にまだ居る感覚。
若葉猫
ソファーの隙間から、ベビースターのかけらが発芽した。
有機
絨毯に絡まったまま、3回目の春を迎えた。
タクタクさん
口の中にベビースターラーメンを含んでいると、コンソメのキューブが生成できるような心地がしたものだ。
首廻り寝具
ぱっぱらぱらぱら
ぱらぱらぽりん

よぴこ

「気をつけて、ベビースターラーメンよ」床には侵入を足音で知らせる罠が撒かれていた。
ぴすとる

ベビースタートラップ!

『成人おめでとう。小さい頃から好きだったお菓子だが、おつまみとしても最高だ』実家から届いた荷物に添えられた手紙とビールとベビースターラーメン。
はらけん
あなたの手のひらから犬食いで食べるベビースターラーメンが、生涯でいっとうおいしかった。
葱山紫蘇子
壁に掛けたロザリオと散らばるベビースター。
モンゴノグノム
画面の中で死んで、ベビースターを齧る午後。
シキブ

上記の2作みたいにベビースターでもこんなかっこいい書き出しが出来るんです!

街を行き交う雑踏がベビースターラーメンを粉々にする。
ろっさん
火夫はベビースターラーメンを食べる手を止め、時計を見遣った。
タルク石
サラダの森に隠れたって、すぐに君だと分かったよベス。
カズタカ

ベビースター愛が変態の域(笑)

明日からこれだけで生きよう
S.虚無

極端(笑)

「あちらのお客様からです」ショットグラスの中身はベビースターラーメンであった。
あの
ベビースターラーメンが泳ぎ出す。大気圏を抜けたようだ。
南極行太郎

無重力(笑)

未亡人の手には、ベビースターラーメンが固く握られていた。
にら将軍ハルナ
駄菓子屋のおじさんの通夜帰り、カミさんにベビースターでお清めしてもらった。
モリダイ
水筒に入れてきたのか。
suzukishika

口中の水分持って行かれるわ!

賞味期限当日、それはシニアスターとなった。
須能がる↑
砕いたベビースターを口に含んで、不良軍団のもとへ向かった。
もんぜん
「ベビースターラーメンみたいな人生だった」と呟いて目を閉じた。きっと、幸せだったんだと思った。
魚子

なんも言い得てない感じがいい(笑)

今日、ベビースターラーメンは全て真っ直ぐになった。
平真琴
ゆっくり呼吸を整えて、ベビースターでも食って落ち着け。そしていまお前に起こったことを説明するんだ。
g-udon

ベビースターのちょっとした食べにくさは、パニックになった人を落ち着かせる効果もあるんだぜ!


それでは次回のお題を発表します。

次回モチーフ
『朝』

次回のお題は朝。朝は一日のはじまり、心と体が動き出す時間。物語のはじまりとしてこれほどシンプルな設定はありませんが、だからこそ考え甲斐のあるお題のような気がします。
それは平凡な朝か、それとも特別な朝か、遅刻しそうな女子高生の朝か、目が覚めると虫になっていた男の朝か、どんな設定であれ人物であれ、朝にはなんらかの予感が含まれています。予感に満ちた書き出しをよろしくお願いします。
締め切りは3月10日、発表は12日を予定しています。下記の投稿フォームよりご応募下さい。力作待ってます!

最終選考通過者

八王寺義昭 まだまださはら ZERU 地雷犬 チャウコン 星雫々 田中

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