特集 2022年4月10日

書き出し小説大賞第234回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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桜が散って、タンポポが咲いています。毎年言ってるかもしれませんがタンポポ、改めてすごくないですか?花が終わってからの綿毛、からの旅立ち。なんですかこのストーリー性は、もう映画じゃないですか!タンポポは映画です。
それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!

書き出し自由部門

あの青い部分を空と呼びます。
あの

ひと言で世界を創る、好例。

バケツいっぱいの桜の花びらを川に放流する。
いずも

風流は地元の有志によって、つくられている。

1人で背中に湿布を貼っているあいだに夜はふけていった。
もんぜん
歴史の教科書に残ったのは、わたくしが成し遂げた政策や偉業などではなく、性癖だった。
さくさく
スキップの先にバッタ咥えたカマキリ。
人馬一体勘

陽気からの自然の摂理。ギャップがよい。

「二光年以上、道なりです」
suzukishika
登山列車に乗り合わせた小学生達が爆ぜ損ねたポップコーンの様に黙っている。
Yuzie
一緒に長くいれるように花火を買い足した。
自由人
泣かない君の黒目を舐める。
沈黙の反逆者
ムール貝は虹をため込む。
みよおぶ

イタリアにそういう民話がありそう。

密談していたペンギンたちは、突然、月を見上げた。
 

みよおぶ

すべてを作ってしまったと書き置きを残しシェフは消えた。
Airda
廃れた神社に、ランボルギーニが停まっている。
南極行太郎
必死で忘れようとしている自分にケリ入れたい。
人馬一体勘
一生かけて死ね。
井沢

なぜか不思議にポジティブに聞こえる。

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続いては規定部門。今回のテーマは『おっさん』でした。悲哀!哀愁!苛立ち!リアルおっさん&予備軍から異常に実感のこもった作品が集まりました。

規定部門・モチーフ『おっさん』

「すっかり春ですね~」とおじさんが土から這い出た。
寂寥

出てこなくていいのに。

いつもカウンターにいるおっさんが、今日はテーブル席にいる。
沈黙の反逆者
オッサンのくしゃみで、新入社員がまた1人辞めていった。
えむけい

やることなすことハラスメント

同じハロプロファンなのに娘との距離が縮まらない。
午前0時
あたしが下の名前を憶えてただけで、オッサンがめっちゃ嬉しそう。
昼行灯
コレステロール値だけが、高みを目指している。
タクタクさん
さよなら。さよなら。ラーメン大盛り半チャーハン。
レ高血圧
おっさんはその日、何かに期待してトーストをくわえたまま、急いで家を出た。
eat_sushi
もうどこまでも走れない。
もろみじょうゆ
おっさんを笑えるうちが幸せだと知っておけ。覚えておけ。お前に言っている。
正夢の3人目
あの武器屋のおっさんは信頼できる。
シキブ

おっさんがなりたい職業ナンバー1!武器屋!

ITに詳しいオッサンもまた、陰で笑われている。
たこフェリー

じゃあもうどうすればいいんだよ!(カツラを床にたたきつけて)

いつからだろう。笑う時むせるようになったのは。
g-udon

一緒に笑ってた人たちから心配されるという申し訳なさ!

ダウジングおじさんがうろうろしている。
寂寥
前カゴに乗った柴犬がおじさんをコントロールしている。
ビールおかわり

自転車で月を横切るおっさん。

ここにいる三人のおっさんの中から、好きなおっさんをあげよう。
prefab

いらねー

「もしかして?」「入れ替わってる??」おっさんとおっさんは顔を見合わせた。
ぴすとる

二回で打ち切られそうなドラマ

お願い、私の中のおっさんが出てくる前に……早く!
若葉猫

すでに痰が絡み始めている。

おっさん。ねえ、おっさん。答えてよ。目を開けてよ
S.虚無

答えてから死んで。

列車の上で決闘するおじさんとおじさん。
モンゴノグノム

トンネルの入り口でどっちも死亡

おじさまのような野犬。
人馬一体勘
「お世話になっております」おじさんはいつも心の底から言う。
suzukishika

しかもあまり重く聞こえないように気遣って。

形状記憶おじさんが、正座に戻りました。
morin
おっさんは、来世も人間になれるように、ポインセチアに優しくした。
七寒六温
星空の真ん中で、おっさん座は寝ていた。
髙橋きよてん
極み、とでも言おうか、単なる経年劣化では決してたどり着けない、長年にわたり燻されて磨き込まれた勲章を、彼はただただ、ぶら下げていた。
はらけん
ペットに適したおじさん以外、絶滅した。
ミミズグチュグチュ
きっとここにオッサンがいた。そんな残り香。
ぐるりん

早くファブリーズしたい。

 

それでは次回のお題を発表します。

次回モチーフ
『シスターフッド』

シスターフッド、まだあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、近年にわかに注目を集めているジャンルです。おおざっぱに言うと女性同士の連帯や絆をテーマにした物語です。女性版バディものと言ってもいいかもしれません。(二人以上でも構いませんが)男性のバディものでは描き得ない葛藤や関係性、美学に想像を巡らして挑戦してみてください。
ちなみに最近立て続けに読んだ王谷晶「ババヤガの夜」藤野可織『ピエタとトランジ』が面白くて、お題にしてみました。気になった方はディグってみてください。
締め切りは4月22日金曜日、発表は4月24日を予定しています。下記の投稿フォームから応募下さい。力作待ってます!

最終選考通過者
千野濔布 にトロ 八重樫 村上 耽美 住民パワー 吉田髑髏 キキ 缶コーヒーを持つ男 坂上田村麻呂の従兄弟 彗彩 大山倍達 ペリラン やばがさきk 木蓮亭わびさび いそうろう 哲ロマ 葱山紫蘇子 南極行太郎

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