特集 2022年2月6日

書き出し小説大賞第230回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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先日の節分で恵方巻きを食べた。いまやすっかり定番になった風習だけど、自分はまだどこかでこれは異常に手の込んだドッキリではないかと疑っている。恵方巻きは丸っきり嘘。ただ誰かが面白がって広めただけではないか。来年あたりその「誰か」がプラカードを持って現れそうな気がする。

それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

童貞、タワマンを買う。
吉田髑髏

『ビリギャル』的な売れ方をして映画化もされそう。

あの日ぼくらは、同じ空の下、違うチャーハンを食べていた。
午前0時
夜の新幹線は街を流星に変えていく。
ウチボリ
今、この喫茶店にはビンタされた男しかいなかった。
もんぜん
凡人は忘れたくない事も忘れてしまう。
自由人

哀し可愛い、凡人。

爺ちゃんはコンセントの穴を見て相撲を観る事を思い出した。
自由人
放送室は狭くて、三人で、秘密だった。
坂上田村麻呂の従兄弟

放送室って実は保健室を上回るエロみがある気がする。

街が沈むまでに、このパンケーキを食べ切らないと。
モンゴノグノム
一瞬だけ貴族になってすぐに剥奪された。
いそうろう
詩はまとめて読むようなものではない。
井沢
抱き上げた赤ちゃんの肋骨の柔らかさにハッとした。
焙じしお茶
歯を抜いた。穴からアリが出てきた。
劇団斉藤

赤ちゃんの肋骨も、歯の穴からアリも生理的に訴える。

四番目のパパがまたもや行方不明になった頃、咲いた。チューリップの花が。
さくさく
目覚めない女の身体に鍾乳石が育っている。
昼行灯
金魚は黙って暮らしている。雪は意思を持って降っている。
タカタカコッタ

一見静かな光景がいきなり濃密になった。

大の字に寝転んだ。分からない。どんなに考えても。猫が、僕の顔を踏んで行った。
あの

雑な前半からにやりとする後半。リズムがいい。読後感もいい。

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つづいては規定部門。今回のテーマは「鬼」でした。あなたの鬼感が変わる25本を一気にどうぞ”!

書き出し規定部門・モチーフ『鬼』

鬼の貧困は見えにくい
野焼き

いままで意識することのなかった「鬼社会」がぱっと広がる書き出し。

わたしは鬼になった。なってしまった。ジャンケンに敗けたから。
ももんがもん
立春にゴミ箱からのぞく鬼の面
ひよこ?ぃーんず
そろそろ角の生え変わる時期だ。
水沢ながる
君を笑わせたくて、来年の話ばかりしている僕。
葱山紫蘇子

「来年の話をすると~」ネタを一番スマートに料理してくれました。

写真にツノを書き足すと、誰だって鬼っぽくなる。
morin

でしょうけど!

地方局アナの心にも鬼がいる。
たこフェリー
花見の場所取りに行くと、そこは金棒だらけだった。
モリダイ
燃える山。燃やした山。絶叫が聞こえる。今晩、鬼が来る。
正夢の3人目
貸し付けの鬼が、これでもかと資金を積んでやってくる。
うにねこ

笑顔でカネを押しつけてくるって、借金取りの10倍怖いと思う。

現在時刻は午後10時、今年の終戦まで後2時間だが俺の運も尽きたらしい。鬼がすぐそこまで迫っている。弾倉の豆も残り僅かだ。
JING
鬼が本当に怖いのは、キジである。
七寒六温

「あ、なるほど!」と思ってしまうのはなぜだろう?

赤鬼大学に、青鬼は入れない。
髙橋きよてん
リモートのナマハゲは、怖がらせようと必死だった。
タクタクさん
鬼の本当の勝負パンツは、シルクだ。
suzukishika
Bluetooth の接続が完了し、鬼の金棒が青く点灯した。
はらけん

スマホに入れた曲が金棒で聴ける!

驚いた鬼の角が一瞬伸びた。
住民パワー
どこを掘れば鬼が出るのか、分からないまま錆びた鍬を振るう。
ぶちゃ亭
鬼の精通。それは鬼精通
S.虚無

「ぐおおおおお!」って言いそう。

本当は緑の鬼もいた。
スパッツフェチマスター
「ツノが見えて来ましたよ!」産婆が鬼んぷさんを鼓舞した。
ビールおかわり
「女房がこれでね」一本角の鬼が三本角になった。
g-udon
このおにおにした感情はなんだろう。
寂寥
え、何その話?人ウケるんですけどw
Sam太郎
角は二本、歯は一本。最後の鬼は人類の行く末を静かに見ている。
ぐるりん

それでは次回のお題を発表します。

次回モチーフ
『二人称』

言うまでもなく一人称は「私は~」に代表される自分発信の文章、三人称は「彼は、彼女は~」という客観的な文章、そして二人称は「あなたは~」というような相手を直接指す文章です。文体としては非常に珍しい二人称ですが、誰もがSNSでつながった現代、目の前にいない相手を表し、語りかける二人称はけっこう有効な手段かもしれません。
二人称のお題は、実はずいぶん前に一度やってそのときもとても面白い作品が集まりました。今回はどんな作品が集まるか楽しみです。
締め切りは2月25日金曜正午、発表は2月27日を予定しています。下記の投稿フォームからご応募ください。力作待ってます!

最終選考通過者
みよおぶ 鮫井 おむすび降臨すっとんとん ぜんこうばし もろみじょうゆ ろっさん 新名 眉村恥目

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