
書き出し小説大賞第184回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。
書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
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月に一、二度行く近所の家系ラーメン屋はごはんが無料で、巨大な炊飯ジャーの隣には、キン肉マンのイラストが貼られており、その吹きだしには「ジャーのフタは静かに閉めてくれよな!」と書かれている。
それでは今週も、めくるめく書き出しの世界へご案内しよう!
書き出し自由部門
祈りと呪いは紙一重
大相撲の表彰式に出てくる巨大マカロンが好き。
星の砂の正体は尿道結石。
月に置き去りにした犬と数年ぶりに再会。
莫大な過払い金は気候をも変える。
続いては規定部門、今回のモチーフは帰って来た『吉田』。前回からなんと五年ぶりの再会です。50本ほど選んで置きましたので、たっぷりご覧ください!
規定部門・モチーフ『吉田』
吉田を調節することで、さまざまな図形がつくれる。
キュレーターの意味も知らないままに。
腹立つ~~~w
開いた拳からドン・キホーテのコインが……
現在その地にはずっこけた吉田の像が建っているという。
前半はより攻勢な方へつく立ち回りを見せていたが、後半は実質、吉田VSバブ・マングースだった。
なるほど(笑)動物園でも動物が客を案内するわけじゃないしね。
志村けんがよくやる鏡を使ったコントを思い出しました。
吉田がゴミの日に出した、ステンシルを見るまでは……。
教室の窓から見た風景。
怖いんですけど(笑)耳は落ちないようにちゃんとしといて。
出しても取らない方が得なアイテム。
五年ぶりの再登場にも関わらず、捕らえどころがなく、でもしたたかで、融通無碍な振る舞いを見せる吉田像は、不思議なほど継承されている。
全国の吉田さんには申し訳ないが、吉田という名字の字面と響きには、他のメジャー名字にはないある種の汎用性がある。「佐藤」や「山田」ほど主張がなく、「鈴木」や「小林」ほどスマートでもない。もちろん私たちが個別に知る吉田さんは、それぞれ個性的で豊かな感情を持っている。しかしそれらの情報を遮断して、総体としての吉田を想うとき、目に浮かぶのは開けた風景の中、少し離れた場所で、逆光ぎみに佇む吉田さんだ。
いつか見たはずの、でも思い出せない。薄い鉛筆で描かれたようなその面影は、だからこそあらゆる作者のイメージの中で、何度も自由に描き直されるのだろう。
今回も質、量ともに申し分ない吉田が集まった。数年分の吉田は充分まかなえたと思う。
それでは次回のお題を発表する。
『謎』
次回のテーマは『謎』。いまでは思いっきり自由な表現になってしまったが、書き出し小説の根本テーマは「つづきが読みたくなる冒頭」だった。そしてそうした一文には必ず「謎めいた魅力」が含まれているものである。
ミステリに限らず、あらゆるジャンルで冒頭に提示した「謎」は読者を一気に物語の中へ誘う。書き出し小説のいいところはその謎になんの責任も持たないでいいことである。投げっぱなしの魅力的な謎を募集します。
締め切りは2月21日、発表は23日を予定しています。下記の投稿フォームから部門を選んで送って欲しい。力作待ってます!
最終選考通過者
オメガ 桜草 小野芋子 シロイルカ シグナル 規約違反のため表示することはできません いちろく 薙糸
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