タイムアタックもきっと楽しい
「自宅にあるもの限定しりとり」をやってみたら、家ならではの制約や、家だからこそできることがたくさんあって面白かった。パズルのような楽しさもある。
今回は1人でじっくりモードだったが、次のようにやるともう少し気軽に、複数人やリモートでも楽しめると思います。
・物を実際に並べるのはやめて、写真を撮るだけ
・制限時間を決めて、その中でいくつしりとりをつなげられるか競う
・もしくは、順番を決めて家をまたいでのしりとり
自宅ですごす時間が増え、家での楽しみ方がいろいろと紹介されている。中には全く新しい遊びもあり、楽しむということに対して人類がちょっと進化した感じさえする。
そんな進化の流れにのって、僕も何か家での新しい遊びを見つけたい。
例えば、しりとりはどうだろうか?自宅にあるもの限定で。
「しりとり」という遊びは小さいころは楽しめたが、大人が楽しむには簡単すぎる。大人の語彙力をもってすれば、永遠に続けられてしまうからだ。
しかし、「国の名前」や「動物の名前」など、そこに何かしらの「縛り」を加えると、大人でも盛りあがる。
では、家ですごす時間が増えた今、「自宅にあるもの」を縛りにしてみるのはどうだろうか。
次のルールでやってみる。
①「ー」で終わった場合、次の言葉はその前の文字から始める
(例:チーター ⇒ タヌキ)
② 家の中に「しりとりスペース」を用意し、実際に物を並べていく
③ スペースがしりとりで埋まったらゴール
④ 商品名や本のタイトルなど固有名詞はNG
(簡単になってしまいそうそうなので)
実際にやってみたら、家ならではの制約や攻略法がいろいろあって面白かったので、しりとりの進捗とともにご紹介していきます。
スタート後、写真のように順調にしりとりをつないだが、「き」で初めてつまずいた。
「き」から始まるものなんていくらでもありそうな気がしたが、「家の中に今あるもの」に限定すると意外とない。普通のしりとりがいかに自由だったかを思い知る。
こんなに何かを家中さがしまわるのは、マイナンバーの通知カードがどこかにいってしまったとき以来だ。「き」から始まるものが、個人情報と同じレベルで探されている。
家中を3周ぐらい探しまわったがなかなか見つからない。そこで、何かないかなと妻にも聞いてみた。すると返ってきたのはこの言葉。
「あっ、昨日買い物行ったときキュウリ安売りしてて、迷ったけど買わなかった・・」
「あー、キュウリ・・」と思わずつぶやく。
今までキュウリに対しては、冷やし中華に入っていなかったとしてもスルーできてしまうぐらいの気持ちで向きあってきた。でも今はキュウリがないことがとても悔しい。キュウリだけのっていれば最高の冷やし中華だ。
そうか、これが家にあるものでしりとりをするということか。
家にあるものは、毎日の生活の中で食べられ、使われ、買い足されていく。しりとりで使えるアイテムのラインナップは、日々変わっていくのだ。特に、直近の買い物の影響は大きい。
悔やまれるのは過去の自分。
我が家は、妻が料理、僕が掃除・洗濯という形で家事を分担しているのだが、メニューを日々考えるのは大変なので、食べたいものを聞いてくれることがある。
そういえば昨日はそれを聞いてくれていた。あの時バンバンジーが食べたいと提案していれば。もしくはキャベツを使うホイコーローでも良かった。
自分の生活がそのまましりとりのアイテムにつながってくる。それが自宅にあるものでしりとりをするということなのだ。
そんなことをしているうちに、既に「き」を探しはじめて30分がたっていた。
実はこの間、1つだけ思い浮かんでいたものがある。
でも普段あんまり「キー」って言わないから負けた感じもするし、これを選んだところで結局また次も「き」なんだよなぁ。そう思いながらあらためて鍵をながめていて気づく。
意外な盲点にビックリしてしまった。
普段、キーホルダー込みで「鍵」と呼んでいたので気づかなかったが、よく考えたらこれは「キーホルダー」と「鍵」の組み合わせだ。
日常生活で忘れられていた「キーホルダー」が、その名前を取り戻した。
このキーホルダーは10年ぐらい前に買ったもので、気に入ってずっと使っていた。なのに僕はその名前を忘れ、一括で「鍵」として認識してしまっていた。
「お前の名前、一生忘れないからな」と、転校生への寄せ書きのような気持ちでしりとりに並べる。
その後しばらくして、普段つかっている「キッチンペーパー」が堂々と台所に置いてあることに気づいた。
絶対に何度も目に入っているはずなのに、スルーしていた。どうも、日常的すぎるものは「キーホルダー」と同じように名前が埋もれてしまうようだ。
家の中で日常的に使っているものは、もはや視覚だけでそれを認識しているんじゃないかと思う。台所で何かが濡れたら、その名前を意識することなく白いロールに手をのばす。
そして、「キッチンペーパー取って」「キッチンペーパー買わなきゃな」など、口や頭で具体的にそれを呼ぶ必要があるときに、その名前はよみがえってくる。
しりとりを探すときは、部屋をながめるだけではなく、1つ1つ「これは〇〇」と名前を思い出しながらやるのが良い。
次にひっかかったのは「ぎ」。
ここでは、「実際に物を並べていく」というルールに苦しめられた。
「ぎ」から始まるものはすぐにいくつか思い浮かんだが、それぞれの事情があってこのスペースに持ってくることができない。
「ぎ」から始まるものはたくさんあったが、「とけちゃう」「万が一でも壊すのがこわい」「コンプライアンス」と、それぞれしりとりには派遣できない事情があった。
家にあれば何でも使えるわけではないというのも、このしりとりならではの制約だ。
その後ここまでしりとりは進み、ゴールである「部屋が全部埋まる」まで残りは10個ぐらいとなった。
しかしこの日はスタートしてから既に5時間ほどがたっており、日が暮れてきた。この部屋は布団を敷いて寝室に戻さなくてはいけなかったので、いったんここでセーブし、翌日また再現することに。
そして翌日。
RPGをやっていて、セーブしていたところから再開したときにアイテムが1つなくなっていたら、それはバグだ。
でも、このしりとりでスルメがなくなっているのはバグではない。「生活」だ。
このスルメは、妻が昨晩のオンライン飲み会のために買ってきていたものだった。そしてその飲み会で全部食べてしまったのだそうだ。
買い物につづき、またしても生活トラップにかかってしまった。
さいわい「スズメ」の置き物があったのですぐにリカバリーできたが、あやうく5マスほど戻るところだった。
このしりとりでは、長時間やるとき、特に日をまたぐときの食べ物には気をつけなければいけない。
するめトラブルをクリアし、気を取り直してしりとりを再開する。「ライト」の「と」からスタートだ。
この時、「トマトはなかったよね?」と確認しにいった冷蔵庫の前で気づく。
ゴゴゴゴゴと、この世界の隠し扉が開く音がした。
今さがしている「と」で始まるわけでもなければ、終わりの文字は「ん」。しりとりにおいては全く役に立たないものだった「食パン」が、焼くことによって「トースト」に生まれ変わった。
そうか、食材は調理すれば別の名前に変えることができるのか。このしりとりでは、アイテムは見つけるだけでなく、作ることもできるのだ。
これは楽しい。同じ1ターンのしりとりでも、ポイント5倍ぐらいの嬉しさがある。もっとやらせてくれという気持ちでいっぱいになり、その後もずっとチャンスをねらう。
そしてやってきた「ぶ」で、「インスタントコーヒー」を「ブラックコーヒー」に作りかえる。
自宅にある物を使ったしりとり、その一番の醍醐味を見つけてしまった。
そうこうしているうちに、このしりとりにも終わりが近づいてきた。
本来のしりとりでは、語尾が「ん」にならない限り終わりはない。でも、家のスペースに制約があるこのしりとりでは、「部屋が埋まるまで」とゴールを決めていた。
せっかくの終わりがあるしりとり。何か気持ちいい形で終わりたい。
そこで、最後のアイテムを「で」で終わるものにして、一番はじめの「デイリーポータルZ」とつなげることを目指すことにした。
次の頭文字は「ひ」。置けるアイテムはあと3〜4個。そして最後は「で」で終わる。この3つの条件をうまくクリアしたい。
先に「で」で終わる物を見つけて、そこから逆に考えることにした。
「で」で終わるものは難しかったが、15分ぐらいかけて「筆」を発見。
最後が「筆」に決まると、「ブラックコーヒー」⇒「紐」⇒「毛布」⇒「筆」というルートが見えた。今イメージとしては、頭の中で天才刑事が黒板に数式を書きまくっている。
「紐」と「毛布」がこの家にあることは分かっているので、すぐに持ってくる。
そして、
部屋は埋まったし、最後の「筆」と最初の「デイリーポータルZ」もつながった。気持ちいい。クロスワードパズルとジグソーパズルが両方同時に完成したような、やりきったぞという満足感がある。
この達成感は、部屋の広さに限りがあり、このしりとりに終わりがあったからこそ。最後まで、自宅という制約に楽しませてもらった。
「自宅にあるもの限定しりとり」をやってみたら、家ならではの制約や、家だからこそできることがたくさんあって面白かった。パズルのような楽しさもある。
今回は1人でじっくりモードだったが、次のようにやるともう少し気軽に、複数人やリモートでも楽しめると思います。
・物を実際に並べるのはやめて、写真を撮るだけ
・制限時間を決めて、その中でいくつしりとりをつなげられるか競う
・もしくは、順番を決めて家をまたいでのしりとり
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