十把ひと唐揚げ・改
十把ひと唐揚げを確実に成功させたい。
まずは唐揚げ粉を買った。これなら醤油で下味をつけなくていいので具材に余計な水分が回らない。
それと具材は品数そのままに小さく切る。見た目のゴツさによる面白さは損なわれるが知ったこっちゃない。おれはうまい十把ひと唐揚げを絶対に食いたい。
だいたい失敗はそのままにする性格なのだけど、今回ばかりはモチベーションが違っている。ちゃんと作る十把ひと唐揚げは絶対にうまいから成功させたい。
「十把一絡げ」という言葉はダメなことを表すことが多く、毎度否定のために担ぎ出されるのがかわいそうだ。わたしは十把一絡げにして幸せになる人間の姿を十把一絡げ(概念)に見せてあげたいのだ。
それでは、揚げていきましょう。
具材を油に流し込んだ途端、またたく間に煙が上がり鍋の中が泡に覆われて何も見えなくなってしまった。
次に具材が見えたときに成否がはっきりするのだ。粋な演出である。して、どうだ……??
めでたく大成功だ。最後にちゃんとした十把ひと唐揚げを食べて終わろう。
ちゃんとした十把ひと唐揚げは美味すぎる
それでは、うまくいった十把ひと唐揚げを食べてみよう。
唐揚げ粉のダシの匂い、カラッと揚がったニンニク、衣から溢れて溶け出したチーズ。美味そうさの暴力といっていい。食べる前から最高だ。
既製品だけあって衣の味がしっかりしていて、11品目の食材が使われていると思えないほど一体感がある。それでいて各具材の主張もしっかりあって頼もしい。
なんといっても揚げた牛肉がうますぎて困る。火が通ったトマトもうまい。餃子も揚げ餃子だ。もう全部うまい。
食べる部分によってぜんぜん違うメニューになっているのがおもしろい。これがそれぞれ別の料理として皿に盛られていたら箸が迷いすぎて腕が疲れてしょうがないからな。
ご飯のおかずにしようと思っていたのに、あっという間に食べきってしまった。これを書いている現在も食べているときのことをハッキリ思い出せない。
もしかしたら夢だったのかもしれない。4食連続で十把ひと唐揚げを食べたのは夢か現か、それはあした体重計に乗ればハッキリと分かることだろう。

