売っている飲み物のクオリティの高さよ
こうしてちょっとした加工をしてみると市販されている飲み物のクオリティの高さがよく分かる。少しバランスが崩れるだけでかなり味わいが変わってしまう繊細な商品なのだ。
手軽に美味しく野菜が取れる野菜ジュースにもっと感謝しよう。
コンビニなどに売っている紙パック入りのジュースをゼラチンで固めてゼリーにするのが定期的にSNSでバズっている。
簡単そうだしやってみたいなという気持ちの反面、そもそもジュースが美味しいんだからゼリーにしても美味いだろうという気持ちもある。そう、SNSでバズっているのは「ピーチ&オレンジティー」みたいな小粋なジュースばかりなのだ。結局のところ「映え」である。
では、例えば野菜ジュースなど少し地味な路線の紙パック飲料をゼリーにしたらどうなのだろう。「映え」への屈折した反骨精神を抱えつつ試してみよう。
今回はこちらの12種類の飲み物をゼリーにしてみる。
「映え」なんかに騙されないぞ!と意気込んでいたわりにビジュアル的に面白そうだったのでタピオカミルクティーも買ってしまった。もはや紙パックですらないがご容赦いただきたい。
作り方は簡単でそれぞれの飲み物にお湯で溶いたゼラチンを混ぜて冷蔵庫で冷やすだけだ。
1個あたり5分もかからず作業としても混ぜるだけなのでお菓子作りをほとんどしたことがない筆者のような人間でも簡単にできてしまう。
紙パック飲料を使ったことを隠しておけば手の込んだ一品に見えなくもないので、急にデザートバトルに参戦することになった時にも使えそうだ。ちなみにこれまで急にデザートバトルに参戦したことはないのでこれからも機会がないことを願いたいが人生何があるか分からない。転ばぬ先の杖というやつだ。
冷蔵庫で固まるまで冷やしたら紙パックから取り出していく。このサイズの紙パックだとそこまでするっと出てこないものが多かったが、野菜ジュース系は比較的気持ちよく取り出せた。なかなか出てこない時は紙パックをハサミで切り開いて取り出していこう。
というわけで12種類の紙パック飲料ゼリーが完成した。
なんだかゼリーというよりは羊羹とか豆腐みたいな見た目である。「映え」から距離をとった結果、おばあちゃんちの食卓になってしまった。
軽く揺すってみるとちゃんとプルプルしているので羊羹でないことは分かるが、豆乳系の飲み物や野菜ジュースはどちらかというとプリンのような仕上がりになった。
あと映え代表として入れてみたタピオカミルクティーが全然ばえていない。さすがのタピオカミルクティーも底にタピオカが溜まった状態で固められてしまうと映えを維持できないようだ。
一通り食べてみると、全体的に普通に飲むよりも味が薄い。味のないお湯で溶かしたゼラチンを加えているので当たり前なのだが、タピオカミルクティーやアーモンド効果、ヤクルトはかなり気が抜けてしまった。甘い系の飲み物はあえて固める必要はなさそうだ。
逆に紫の野菜生活や豆乳飲料のバナナはデザートとして普通に美味しく食べることができた。やはりフルーツ系は多少甘みが薄くなってもフルーツの味わいがちゃんと残るので、デザートとして成立するのだろう。紙パックゼリーの王道はフルーツ系だ。
りんご味なので一応フルーツ系と呼べなくもない黒酢飲料も個人的にはけっこう美味しかった。普通に飲むと酸っぱすぎたのでゼラチンで薄められてちょうどよい濃さになったのだ。見た目的にもゼリーとして一番違和感なく楽しめたのが黒酢飲料だった。
一番の失敗だったのがウーロン茶。お茶の味は引き伸ばされて薄くなっているのに、苦みだけが嫌な感じで残っている。材料を3つくらい入れ忘れたお菓子といった味わいだ。
今まで食べたことのない種類の不味さだったが、「ああ、不味いから今まで食べたことないんだな」とある意味納得できるレベルの不味さだった。ウーロン茶は普通に飲もう。
当たりはずれはあるものの、たくさんのゼリーをちょっとずつ食べられるのはバイキングみたいで楽しい。手軽に出来るし、こんなに作っても費用としては1,300円くらいだ。間違いないフルーツ系をもっと増やせばお家でスイーツビュッフェが簡単にできるぞ!
最後に、固めてゼリーにしたことで新たな可能性を見出すことのできた2つを紹介します。まずは青汁。
元祖罰ゲーム飲料の青汁、普通に飲むとやっぱり苦くて飲みなれていないとどうしても抵抗がある。
しかしゼリーにすることで苦みも薄くなり、一気に食べやすくなる。甘さ控えめの抹茶菓子くらいのレベルだ。
とはいえやっぱりどことなく気が抜けた感じがするなーと思っていたら一緒に食べていた妻がひらめいた。
「これ、きな粉と黒蜜かけたらいいんじゃない?」
それだ!
完全に「抹茶わらび餅」である。きな粉と黒蜜をかければ大抵のものがわらび餅になる説もあるが、それを考慮してもしっかり青汁ゼリーとの相乗効果を生み出している。きな粉と黒蜜によってデザート化が進み、青汁の面影が完全に消え去っているのだ。
青汁なので栄養価も高く、これは積極的にゼリーにしていきたい紙パック飲料として認めざるを得ないだろう。
そして2つ目は野菜ジュース。
こちらは普通に飲むのとゼリーにして食べるのとで味の差はそこまでない。しいて言うなら他の飲み物同様に少し薄くなっているので、食べやすくなったかなという感じだ。
元々が野菜なので、固められたことで料理っぽさがでる。フランス料理とかにありそうな感じだ。
ならば、ということで次の日の朝ごはんにちゃんと盛り付けをして食べてみた。
野菜を固めたものなのでつまるところサラダである。ドレッシングはもちろん合う。ビジュアルの得体の知れなさといい、これはもうフレンチと言っていいだろう。結婚式の食事でメインの横に添えられている聞いたことのない料理だ。
しかも普通に飲むよりゼリーにすることでボリュームが格段に増す。朝ごはんとして野菜ジュースだけ飲んでも物足りなさが残るが、ゼリーにしてこうやって食べるとしっかり食べた感があり、朝ごはんとして成立してしまう。
野菜不足をごまかす免罪符として片手間で飲みがちな野菜ジュースを最も楽しめるのはこの食べ方かもしれない。
こうしてちょっとした加工をしてみると市販されている飲み物のクオリティの高さがよく分かる。少しバランスが崩れるだけでかなり味わいが変わってしまう繊細な商品なのだ。
手軽に美味しく野菜が取れる野菜ジュースにもっと感謝しよう。
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