いきおいで始めてしまう
こんなふうに首を振ったりエサを食べたりするには、さてどう動かしたらいいだろう。(動画を未見の方は冒頭に貼ったリンクから確認しておいてください。)
なんとなく頭にあったのは、マグネットを使う方法だ。愛読書「愛しのインチキガチャガチャ大全−コスモスのすべて−」(双葉社)の中に、こういうおもちゃがあったのを記憶していたのだ。
ドリフのネタ「からすの勝手でしょ」、うっすら覚えている。
マグネットの反発を利用して、からすがそっぽを向く。これだ。この方法を応用してみよう。
しかし、そっぽを向く=イヤイヤをする、のは可能だろうが、「食いつく」ところまでを再現するとなると、くちばしを開ける機構とか、それがほっといても元に戻るようにするとか、考えることが何倍にも増える。上のからすの構造、見たかったな…
おっと、ではここで、私の一人語りになってしまうと読みにくいかもしれませんので、成果物さんにおいでいただきましょう。イヤイヤハシビロコウさんです。
え、えーと、作り出すまでがとにかく難所だったわけなんですね。
(呼んでも意味なかったかな)そのままでいいので、聞いててください。先にバーッと喋らせてもらいます。
いちおう、問題をクリアにすべく最初にラフを描いてみたんですが、描いたところでこれまたよくわからなくなりました。
そういえば私、こういう機構系のこと考えるの弱いんですわ。
どこが「問題をクリアに」なのかわからないラフ画。
舌をマグネットにして、そこに別のマグネットを近づけると、NかSかで反発または接近するわけですね。反発するときは、首にベアリングでも埋めれば滑らかにイヤイヤするかと思うんですが、接近したときどうするか。できればくちばしを開けたい。何かツメでも足して、上のくちばしに引っ掛けるところを作って、舌が引き出されると同時に開くとか…聞いてます?
(しゃべった)
ですよね、じゃとにかく先へ進めます。
とにかくだ。マグネットを使うことだけははっきりしている。ちょうどうちに、以前買った強力なネオジム磁石が残っていたので、これを使おう。
以前何に使ったのかまったく覚えてないが、助かった。
1個は舌に埋め込み、あと2つを食べたいエサと食べたくないエサに、それぞれNとSにして埋め込む算段である。
さて、まずはハシビロコウ本体を作っていこう。機構の次は、それをどういう材質で作るか、それが問題だ。ここで間違えるととてつもなく面倒なことになるのだ。
ここでこう書いているということは、実際そのとてつもなく面倒なことになったからなのだ。
芯は、おなじみのスタイロフォームで。ここまではまあ大丈夫か。
とはいえ、当初は全部、木で作ろうとして。普通の固い木だと大変なので、うちにバルサ材があったのでそれを彫り出してみたんですが、途中で「バルサって彫りやすいけどもろいよな」と考え直し、結局いつものスタイロフォームです。
あ、立体物作るときは軽くて割と形を出しやすいこの青い物体を使うことが多いんですが、やはり欠点もありましてね…
(イメージ通りの寡黙さ)扱っていくうちにやはりちょっとグズグズになってきて、それが動きの妨げになったりしまして。
これも、当初はスタイロの上にオーブン粘土を盛って、フィギュア的に作ろうと思っていたが…
こうして作っていくうちに、なんか違うなーと。
このまま作っていって、さて想像通りのものができるかどうか、煩悶するんですよ。で、このオーブン粘土方式では、できあがりのテイストに違和感あるかなと思って、やめました。似せる技術も不安が残るし。粘土剥がして、一からやり直しですわ、あっはっは。
結局、フェルト原毛を埋める手芸的アプローチに落ち着く。
幾度もの見直しを経て、やがてノープランとなる
体はまだいい。割と慣れている手芸的手段で切り抜けられると思う。が、問題はくちばしのつくりである。ここはかっちりした材質でいかないとダメだろう。ああ今年こそ、今年こそ3Dプリンタを買おう、そう心に誓った。
最初、プラ板を温めて曲げて…と思ったが、思うようには綺麗に曲がらない。
プラ板用に木型を作るくらいなら、もうくちばしは木そのものでいいんじゃないか。
できそうな気がしてきた。でも気のせいかもしれない。
ここにマグネットをどう設置するか考えてたら、何日もかかっちゃってねぇ…さらりとそういう設計ができる人になりたい。
5回くらい、試作しては壊し、というのをここでやってしまいました。やはり、あなたのくちばしをこう、パカッと朗らかに開けたいじゃないですか。
バネを使うとか…
バネじゃなく、アリもののプラ部品から切り出して、何かからくりを作るとか…
結局、布でマグネットを覆ってゴムひもでつなげるという、しょーもない感じに落ち着いたのだった。
図にするとこうである。くちばしの先端、赤い輪で示してあるマグネットが引っ張られると、上くちばしがパカッと開く。そして重みで閉まる。
よく考えたら、ゴムひもじゃなくてもよかったかな…でも少しでも戻りやすくということでは、これでよかったのかも。
(そこかい)いや、すみません、GW中に改良しますんで!
足はわりばし、関節にはパテを盛って。
首には滑らかに動くようベアリングを埋める。
時間もなくなってきたので、エサは絵だ、絵。
(あーもう)これも後日改めて、立体物にしますんで!
こうして、何度も逡巡し、一進一退を繰り返したのち、なんとか、イヤイヤをするハシビロコウが完成したのだった!
どうしてもドヤ顏になるなこの鳥は。
ニジマスの先には、反発するほうのマグネットを。
鯉の先には、吸い付くほうのマグネットを仕込んである。
ほら、ご飯だよー、ニジマスだよ。
じゃあ、鯉は…!
鯉へのパクつきはもうちょい勢いの欲しいところですが、イヤイヤはけっこういい線行ってるかと。
そうだね。パクつきは、ネオジムの力が強くて、手で押さえて離さないといけないところがつらいね。
あと上くちばしの開閉に必要な隙間が、そのままになっている。ここをもう少しフェルトで覆えるといいね。
あとはエサのディテールと、動作のわかりやすさにもう少し踏み込めるといいだろう。
(終盤の怒涛の食い込み…!)承知しました。持ち帰らせていただきます!
まとめ
動きのあるおもちゃをこうやって試作するだけでも私にはとにかく大変だった。繰り返すがこういう設計のできる人々を心から尊敬する。私ももうちょっと勉強しよう。
今回はいっそ、イヤイヤ機能だけにして、延々とエサを選り好みするハシビロコウということにしてもよかったかなと思ったりしている。
でも好きな鳥を、これでいつでも家でかまってあげられるようになった。たまにニジマス持ち出して、嫌がられてみよう。
【告知】
動物をテーマにした企画展に参加します。当サイトからは林さんべつやくさんも出展するよ!私はベアリングマ や水吐きフグさんバッジなどお出します。(本人は常時在廊はいたしません、ご了承ください)
『くらまえ動物園 』
日程:2019/5/2(木)〜5/13(月)
時間:12:00〜19:00(最終日18:00まで)
定休日:火・水曜
場所 : トーキョーピクセルギャラリー
住所 : 〒111-0042 東京都台東区寿3-14-13-1F
入場料:無料
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池田 浩明
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