特集 2023年11月10日

【大胆予想】痛バッグの次は痛帯が来る【好きなものを腹に巻く時代】

痛バッグとは、好きなキャラクターのグッズを用いて過剰な装飾をしたバッグのことである。

好きなものをたくさん敷き詰めたそのカバン、今度は腹に巻いてみるのはどうだろう。

社会人。体育が嫌い。大人になった今でも大抵の物事を「体育よりマシか、否か」で判断している。

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> 個人サイト note

ここ数年のアクスタの大ブームにより、こんな写真を見ることが増えた。

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オタクたちが帯の隙間にアクスタを挟むようになったのだ。

「隙あらば」とはまさにこのことだなと思う。いかなる場面でも好きなものの要素をねじ込もうとするオタクの力技よ。
その剛腕っぷりに感心しながら、わたしはふと、こんなことを思った


「もっといけるな」

と。


そこで私が考えたのが以下のアイテム、名付けて「痛帯」である。

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帯の隙間に差し込むのも良いが、最初からグッズの居座る席をご用意するのはどうだろう。


夏の現場には浴衣、ちょっと涼しくなってきたらアクスタ握りしめて浅草観光、冬には成人式や卒業式、……意外と和服に身を包むことの多いオタクたちにはピッタリのアイテムなはずだ。

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つくる

今回つくるのはお太鼓(一重)結びと呼ばれる、最もスタンダードな結び方の女帯。

背面にビニールの窓枠を配置する。そして、なるべく帯を結ぶ工程で痛部分を動かしたくないので、2部式にするという算段だ。

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一応、以前本気の和裁本も読んだことはあるのだが、ガチで手間がかかっているということ以外わからなかった。

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文字がいっぱいで難しい
(※「新きもの作り方全書 表紙/大塚末子」(文化出版局)書影)

なので、今回はほぼ全部ミシンの直線ぬいで、勘を頼りにやっていく。

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さっそく裁断

ちなみに、上記の写真にある水色のハサミは小学生の時から使っている。

本当は、大学の時もっとマジな感じの裁ちばさみも持っていた。ただ、当時大学構内で窃盗が横行していたため、盗まれた。

学食などで席確保するために置いた私物は、基本的に盗られると覚悟した方がいい。そういう学校だった。
特にイヤホン・ヘッドホン類は頻繁に盗まれていた。しかも、盗人たちは目利きなので、その中でもしっかりと『ちょっといいやつ』を優先的に盗っていくのである。(50㎝定規とポスターケースの盗難も多かった)

当時は「これが大学か~」と思っていたのだが、たまたま自分が通っていた学校の治安が終わっていただけの可能性もある。

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まずチャックを付けた。これが帯の裏面にくる。


次はビニールの窓になる部分。

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ビニールは一回針を入れると生地に穴が空くので慎重になる必要がある。ただ、これは記事なので最悪失敗しても画像加工で誤魔化せばいいから大丈夫。ビニール、おそるるに足らず。

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ビニールの窓ができたので、チャックを付けた裏地と縫い合わせた。

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帯芯代わりに裏地に帆布を二枚挟みこんでいる
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ここまでの手順です

...で、細長い筒状になったこれをひっくり返すわけだが...。

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ビニール部分がかたくてつっかえる。

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すごくつっかえる。

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ほんとうにつっかえる。

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やっとひっくりかえせた
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バキバキになった

写真だとわかりづらいが、ビニール部分に無数の傷跡ができた。

こういう作業って本当に苦手。ほんのちょっとフィジカルの要素が加わっただけで動揺してガタガタになる。

光が当たるたびに己の不器用さをまざまざと見せつけてくるビニールを眺めていたら、かつてロックミシンのエアースルーのレバー(※)を折ったことや、精密機械のネジをなめて完全に終了させてしまったことを思い出して、「なんだっていつも俺は...」と暗い気持ちになった。
(※ロックミシンには、空気圧で糸通しができるエアースルー仕様のものがある。レバーを押すだけで糸が通るお手軽機能ではあるが、多少コツがいる。)

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格闘の痕跡。おわかりいただけますか

なんとか挽回する術がないか調べたら、『ドライヤーで熱すると直る』という情報を見つけた。

「ビニールってそんなヤワか...?」と若干の疑いはあるが、いまはヤフー知恵袋を信じるしかない。

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祈りのドライヤー
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直った………………

すごすぎる。完全に元通りだ。なんなら最初よりきれいになっている気がする。

インターネットに落ちている情報の9割が嘘だとしても、ビニールにドライヤーをあてると折り目が消えるのはマジ。これだけは信じてほしい。

 

山場は乗り越えたので、あとはこの中に入れる土台部分などを作る。

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メッシュはこの滑り止めマットで代用できるらしい。インターネットに書いてあった。

ちなみに、窓枠部分に使ったビニールも100均のカードケースで代用している。それもインターネットに書いてあった。インターネットってアイディアマンだらけで助かる。

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土台部分は帆布と縫い合わせて袋状に

あとは胴体部分のパーツなどをつくり、

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ビニール部分は上辺を除き窓枠の際にミシンをかけて、丁度いいサイズのポケット状にする

できた。よし、トルソーに着せよう。

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痛帯の実用性

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前面
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背面

概ね「こういうのがつくりたかった」という想像通りのものができた。

ひとつ難点をあげるとするなら、窓枠の部分がでかすぎて着せづけづらかったことだろうか。
「収納部分なんてデカければデカいほうがいいだろ」という思想の元つくったのが原因である。


さて、さっそく中に何か敷き詰めていこうと、家の中を漁ったのだが

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Qちゃんの缶バッジ×1

これしかなかった。

「そんなバカな」と、あらためて部屋中の引き出しを開けてみたものの、痛バッグに詰め込めるものはなかった。わたしは物心ついた時からずっとなにかしらのオタクなのに。こんなに何にもないことあるんだ。

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気休めに脇からマスコットを下げるなどしてみた

オタクだからと言って、即席で痛バッグに対応できるわけではない。痛バッグ道は甘くない。

ただ、このまま空っぽの状態で終わるわけにはいかないので、

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とりあえず愛咲ルイTシャツを入れてみた。これはこれでいい。やはり持つべきものは愛咲ルイTシャツである。(※愛咲ルイ・・・漫画『ルナティック雑技団(岡田あ~みん著)』に登場するキャラクター)


…と言っても、せっかくここまでやったのだ。缶バッジも用意した。

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57㎜缶バッジ×20個

グッと痛バ感が出た。


…ただ、なんだろう。端的に言って、重い。

缶バッジを敷き詰めた布を持った瞬間の「お、おう...」という重み。痛バッグを引っ提げているオタクってめちゃくちゃ肩に負荷かけてるんだな。

この重み、こと着物においては、着崩れの原因になる気がする。見た目のインパクトだけなら申し分ないが、実用性について考えると改善の余地ありだろう。

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缶バッジを並べるのは、見た目以上に難しい

しかし、ここで終わる私ではない。こんなこともあろうかと、前面にビニール部分がくるバージョンも並行して作っておいた。(用意がいい)

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いかがでしょうか
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後ろはこんな感じ
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兵児帯仕様です

当たり前だが、着装したときの安定感が段違いに良い。さっきのやつよりも窓枠を小さくしたのも大正解だった。

そしてなんといっても、このサイズはアクスタを入れるのにちょうどいい。

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高さ12.5cmまで対応可能

ここでお見せできるようなアクスタをひとつも持っていないのでモザイクをかけてしまっているが、実際入れてみたらかなり収まりがよかった。

缶バッジを付けるための土台に使った滑り止めシートのおかげで、アクスタの位置が大きくズレることもない。もしこれがふつうにメッシュ生地だったら、動くたびにアクスタがスカスカと移動してしまうだろう。インターネットの知恵に感謝。


ちなみに、ファスナーを上辺のギリギリに付けたので、帯を巻いている状態でも内容物の出し入れが可能だ。

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着ている時の視界

『着物 ポケットがなくて地味に不便問題』にもしっかりと対応している。

とくに、チケットなどを爆速で失くす人にはちょうどいいのではないか。わたしはすぐに映画館のチケットを失くしたりグチャグチャにしたりするので、このようにして腹に収納できるのはありがたい。

気合いが足りない

最後に、つくった帯を自分の腹に巻いてみた。

服にしてはあまりにもダイレクトに感情を詰め込んだそれは、人間が身に纏うとより一層服からは掛け離れ、いっそのこと入れ物と言った方がしっくりくるように思えた。
これ自体が持っている意味としては、特攻服に近いかもしれない。特攻服を実際に着たことはないけれど、ヤンキー的なニュアンスの「気合い」を感じる。あとシンプルに硬いし。服にしてはかなり防御力が強い。


冷静になって鏡を見ていたら、物に対して着ている人間の気合いが全く釣り合っていないように思えてきた。自分で作っておきながら「なんかすみません…」という気持ちになり、すぐ脱いだ。


とにもかくにも、まずは腹に缶バッジやアクスタを携えて闊歩できる根性のあるオタクになる必要がある。


痛バに缶バッジをギッシリ並べることを「痛バを“組む”」と言うらしい。今回いろいろと調べる中で知った。

「組む」という言い回しについて、正直最初は「やぐら気取りか?」と思ったのだが、実際やってみるとたしかにこれは「組む」だなと感じた。
缶バッジ同士を微妙に重ねながら、なるべく均等に隙間なく一面埋め尽くす作業は、「缶バッジを“付ける”」では言い表せない。非常に神経質で技術を要する行いである。ひらたくいうと、かなり面倒くさい。

缶バッジというアイテムのカジュアルさ、それをカバンに目いっぱい付けるおもしろさに引っ張られて安易に「付ける」で済ませなかった人、つまり「痛バを“組む”」と最初に言い放ったオタクの魂の気高さに思いを馳せる。

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