誰かのいらないものは自分にとってもいらないもの
いらないものは純粋におもしろい。
いいものだったり、エコだったりはしない。いらないものはいらないものである。
だけど、自分の家には絶対ないもの、自分では買おうとおもったことすらないものであるのがおもしろい。人んちみたいだ。
結婚したり同棲をはじめるとき、相手が持ってきた荷物を見て「へー、こういうの使うんだ」と思うあの感じ、あれを味わえるのがいらないものガチャなんじゃないかなと思った。

11月10~11日に久しぶりのいらないものガチャを実施した。CINRA.NETが主催のNEWTOWNというイベント内でである。
いらないものガチャとは自分のいらないものを入れると誰かのいらないものが出てくるガチャだ。ランダムな不用品交換である。
「誰かのいらないものはあなたの宝かもしれない」などと説明してきたが実際は何を入れて何が出てきたのか、今回は追跡してみた。
デイリーポータルZでは2008年のイベントからこのガチャを実施している。最初は通常のガチャを使って小さいものを交換していた。
2015年、大阪で開催したイベントでは大きいものが交換できるように巨大なガチャを作った。装置が3m、カプセルは30cmだった。
イベント開催前に大阪ローカルのテレビ番組「ちちんぷいぷい」で取材されたおかげで3日間で2400人が来るという事態になった。「ちちんぷいぷい」の影響力をなめていた。
このときは「すごくいいものが出てくるかもしれない」という感じで伝わった。
僕らもサイトで「あなたのいらないものは誰かの宝かもしれない!」と書いていたし、わりと派手ないらないものが集まった。
一般的に大阪の人はケチと言われるが、むしろ気前がいい人が多かった。
最終日、撤収をしていると人が寄ってきて3人ぐらいから「楽しかったのでまたやってください」と言われた。そんなことを言われたイベントはこれだけである。
2015年12月、今度は東京でエコプロダクツ展というエコのイベントに参加した。大阪で使ったガチャは主催者であるナレッジキャピタルのものなのでもう1台作った。
今度は耐久性を考えてアルミのフレーム、赤帽で運びやすいように上下で二分割できるようになっている。蒲田の金属工場に発注した。
高さは2.4m、カプセルは20cmと少し小ぶりになった。でも30cmのカプセルは実は10,000円もしたので経済的だ。
大阪でカプセルを持っていこうとする人がいたとき、慌てて追いかけたのはそういう理由があった。
このときもいくつかテレビの取材が入った。
インタビューで
「いらないものが出てきた人ががっかりするようすが面白いんですよね~」
などと答えたが、ディレクターの顔に明らかに落胆の色が見えた。
エコとかリサイクルという話が聞きたかったようだ。それを理解して
「リサイクルというとまじめなイメージがありますが、ガチャにすることでエンタテイメント性をもたせることができます」
と話すとそれが放送された。
そしてデイリーポータルZがイッツコムに譲渡されるときの資産の評価で、なぜ赤字事業なのにこんなでかいものを作るのかと指摘された。
長くなったがこれがいらないものガチャの経緯と歴史である。今回はカルチャーサイト CINRA.NET 主催のイベントだからきっとこれまでと違うものが集まるだろう、というところに興味があった。
実際、会場に会田誠さんがうろうろしていた。
会場は多摩センター近くにあるデジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ。
もともと小学校だった場所である。
この下駄箱がカプセルに入らないものを置く台としてとても役に立った。
このときに気づいのは、棚にモデルガンがあるだけで屋台のくじのようになるということだ。
さて、今回、全部で300弱の交換が行われた。
ちゃんと追跡できたなかからいくつかを紹介したい。
ひげ剃りは男性、このあとスターウォーズの扇風機も子どもが持っていった。いい交換である。
「なんか似てますね!」と言おうとしたが理由がわからないのでやめた。なんでそう思ったんだろう。
アテンドスタッフが中日ファンとヤクルトファンだったため、「いいものになった!」「あたりだ!」と絶賛していた。
ヘキサゴンファミリー!いらないものガチャをやるたびに微妙な古いものが登場して鼻の奥がツーンとする。
「彼女がバーチャルになりましたー!」と言おうと思ったがやめた。
用途が限定されている装置(たいていかき混ぜる系)はいらないものガチャによく登場する。
ソフビだけだとカサが足りかなと思ったので、なじみのコワーキングスペースからもらった白いだるまをアドオンした。
懐かしいサブカルチャーがまた別のサブカルチャーに。
木製の盾は「メルカリで全く売れなかった」と書いてあって納得した。メルカリならなんでも売れる幻想に破れたものこそいらないものガチャである。
いらないもので「宝石」は新しかった。貴族なのかもしれない。
またしてもメルカリでうれなかったものである。
今「いるもの」と「いらないもの」のあいだにメルカリがあるのだ。「いらないものメルカリ」というオンライン企画はどうだろう。
赤ちゃんがいる人にあたったので「めっちゃ使う!」と喜んでいた。今回一番のあたりである。
この子が麻雀マットを抱えて帰っていく姿を見て、いらないものガチャやってよかった、と思った。
ミステリーが実物になった。たぶんこの小説に鬼は出てこないと思うが。
顔出しOKの人はあたったものを持って撮影している。
出てきたものへの感情が見えて面白かろうと思ったがここまでうつむきがちだと、なんでもコンテンツにしようとする自分の根性をあさましく思う♪
子どもにとっくりはいらないなーと思ったが喜んでいたのでOKだ。
かぶっている帽子もカプセルから出てきたものである。シュプリームではなくスーパーミーである。
いらないものは純粋におもしろい。
いいものだったり、エコだったりはしない。いらないものはいらないものである。
だけど、自分の家には絶対ないもの、自分では買おうとおもったことすらないものであるのがおもしろい。人んちみたいだ。
結婚したり同棲をはじめるとき、相手が持ってきた荷物を見て「へー、こういうの使うんだ」と思うあの感じ、あれを味わえるのがいらないものガチャなんじゃないかなと思った。
このガチャは貸し出しています。1回30万~(運搬費のぞく)です。高いと思いますが作るのにそこそこかかったので。
いらないもの交換じゃなくて、純粋にガチャとして使うのもいいかもしれません。とあるテーマパークの人は「これにフィギュアかぬいぐるみいれて1回1000円にしたらすげえ儲かるな…」とつぶやいてました。
貸出じゃなくて買い取りたいというオファーもどうぞ。
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