晴れ間に何をするかは自由
掲載日の前日にこの記事を書いているのだが、当たり前のようにザンザン雨が降っている。しかしつい最近晴れた日があって、しかもその日にこんなことをしていた、というのがウソみたいに感じる。やっておいてよかったなと思う。
何をするでもなく横になってゴロゴロするのが好きだ。ゴロゴロするのが好きなので他人がゴロゴロしている様子にもアンテナを張っている。
そして今、うらやましいと思うのが、スヌーピーなのだ。
自分の小屋の上に仰向けになっている。寝ているのか起きているのか分からないぼんやりした目をして、体からはもう力が抜けきっている様子が垂れた耳から伝わる。最高に気持ちよさそうである。
本当は閉所恐怖症で犬小屋の中で寝られないから、という大変な事情があるらしいけど、それにしてもいい顔で寝ている。小屋の上が快適なんだろう。これはやってみたくもなるというものである。
そんな理由で、スヌーピーのように「小屋」の上でゴロゴロすることにした。ということは、まずその「小屋」を作らなければいけない。
小屋、といっても今回は中に入れなくてもいい。「自分の体重を支えられる、小高くて上に寝転がれる四角い物体」があればいいのだ。
木材で作れたら一番いいのだが、材料をそろえる手間と加工の手間を考えたら腰が引けてしまった。ダンボールで作りたい。ダンボールが好きだ。ダンボールでできて欲しい。
災害時に活躍するダンボールベッドというものがあって、調べてみるとまさにこんな感じでダンボールの中にジグザグに補強が入っていた。これをたくさん作って小屋にしよう。
あとはひたすらダンボールの補強を作る作業だった。簡単な作業なんだけど作るものが大きいのでいちいち時間がかかる。用意したダンボール全部の補強をするのに1時間ほどかかった。
スヌーピーのイラストを見ると、小屋はスヌーピーの身長の1.5倍ほどある。そのまま人間に当てはめるととんでもない高さになるのでほどほどにしておこう。
真っ赤な小屋がかわいいのでそのままマネさせてもらう。スプレー糊で淡々と貼る。こちらも地味で大変な作業だった。スプレー糊の大きな缶が一つと小さな缶が一つ、空になった。でも大きな缶の方はもともと残量が少なかった。ダンボールに色画用紙を貼るのは、特別な技術がなくてもきれいに仕上がるので好きだ。
世界はドラマチックな語りで溢れているが、本当は、このような語るほどでもない営みの方が圧倒的に多い。だから何というわけではないのだけど、とにかく圧倒的に多い。そして、このダンボールに色画用紙を貼る作業はそのうちの一つだ。
全部終わってから気が付いたが、本物のスヌーピーの小屋とはかなり雰囲気が違う。 屋根はもっと下の方まであるし、側面にも付けなきゃいけなかった。
「寝っ転がれるかどうか」を気にしすぎて造形がおざなりになったようだ。本当に、撮影当時は全く気にしていなかった。これができあがってニコニコだったのだ。
とにかくこれでゴロゴロできる。
ゆっくり体重を預けて横になった。「なるほど、これは気持ちいいな…!」と思った。
まずこの高さからくる浮遊感である。自分と同じ面積の土台しかないので、何かの上に乗っている、という感覚が薄い。浮いている感じがするのだ。これが気持ちいい。ハンモックに揺られているのと同じ感覚かもしれない。
音の聞こえ方や風や光の感じ方もいつもと違う。外で横になる気持ち良さってある。ダンボールのクッション性のある感触も優しくて良い。
梅雨の晴れ間に憑き物を落とすような体験ができた。今悩み相談をされたら、内容に関わらずこれを勧めるだろう。万能だから。
ここからは、ただもうゴロゴロするだけである。
本当に昼寝をしてみたかったが、落ちてケガをしたら台無しなのでしなかった。下に大きいクッションを敷いておけば昼寝できる。
そういえば、スヌーピーに見えるかな、と思って上下白い服を着てみたのだけど全然そう見えない。手足の細長さが際立って虫っぽい。
外で食べるゆで卵はうまい。真理である。
このあと雲行きがあやしくなってきて、慌ててダンボールを解体して物置にしまった。
すぐに何もなくなって、あとには大量の自分がゴロゴロしている写真と動画が残った。今、その写真を見返してうらやましいような腹立たしいような微笑ましいような複雑な気持ちになっている。
掲載日の前日にこの記事を書いているのだが、当たり前のようにザンザン雨が降っている。しかしつい最近晴れた日があって、しかもその日にこんなことをしていた、というのがウソみたいに感じる。やっておいてよかったなと思う。
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