特集 2022年3月23日

一番広い世代に知られている国語の教科書の話はなにか調べてみる

小学校のものはだいたいなんでも懐かしいが、なかでも懐かしいのが国語の教科書だ。

『スイミー』『おおきなかぶ』『くじらぐも』...ちょっと思い出すだけでもとにかくすべてが懐かしい。しかし、日本全国に配られている教科書でも、世代が違うと載っている作品はけっこう違う。

国語の教科書のうち、みんなが知っている作品はどれなのか。歴代の国語の教科書を調べ、「もっとも知られている国語の話」を探し当てたい。

どうでもいいことを真剣に分析してみる記事をたくさん書いているエンタメライター。音楽や映画が特に好き!

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日本の6割以上の小学生に読まれている光村図書

本題に入る前に、まずは私の”推し”の教科書について話したい。

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この表紙にビビッときたら、あなたは「光村に育てられたアラサー」だ。(教科書クロニクル 小学校編(光村図書)よりキャプチャ)

光村図書出版。小学校の国語の教科書の最大手だ。

これ以外にも教科書はあるが、光村のシェアはなんと約67%。

「教科書の出版社なんか覚えてないよ」という人も、だいたいは光村で育っているのだ。

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企業理念は”『言葉の時代』は終わらない。” いつか何かで言ってみたい。(光村図書Webサイトよりキャプチャ)

ちなみに、次に多いのは東京書籍。ざっくりとだが、「表紙に淡い色が多いのが光村」「表紙に鮮やかな色が多いのが東書」と覚えておくと、今後なにかと役立つはずだ。

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簡単な早見表。これをもとにググってみると懐かしの教科書が見つかるはず!

これ以外にも教科書はあるが、今回は私の”推し”である最大手・光村の教科書をメインに調査を行いたい。

6歳から57歳まで読まれ続ける『くじらぐも』

ここからは、光村ライブラリーの昭和46年から現在までの教科書をもとにした真剣勝負だ。

まずは、私が思う「よく話に出る小学校の国語の話」でトーナメントを組んでみる。

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勝ち敗けはシンプル。光村の教科書に掲載されている年数が長い方が勝ちである。

それでは早速ブロックA。定番中の定番作品の対決だ。

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どちらもかなり有名な作品。
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こうして絵を見るとなつかしい。

光村ライブラリーをもとに、それぞれ「何歳から何歳までの人(2022年現在)が知っているのか」を出してみよう!

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結果はくじらぐもの圧勝である。その歴史はなんと50年以上!Z世代からバブル世代まで、皆がくじらぐもの虜である。

ジェネレーションギャップで会話のネタに困ったときは、ぜひ「くじらぐも」で会話をなんとか繋いで欲しい。

『ごんぎつね』の認知度の高さは異常

続いては大注目のブロックB。「国語の教科書とは思えないバッドエンド」対決だ。

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「なにもそんな話を小学生に聞かせなくてもいいのでは」と誰もが思ったこの作品。

特に『ごんぎつね』で、イタズラを詫びるためにせっせと栗をあげていたごんが兵十に撃たれるラストに衝撃を受けた小学生は多いだろう。

そんな注目の結果がこれである。

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どちらも昭和46年から現在まで、50年以上も読まれている。

いい勝負すぎて決着がつかないので、延長戦として「光村以外の教科書に掲載されたことがあるかどうか」を調べてみた。

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『スーホの白い馬』が(探せる限り)光村でしか見つけることができなかったのに対し、『ごんぎつね』はあらゆる教科書で大人気。

地域に関係なく盛り上がれるキング・オブ・バッドエンド『ごんぎつね』。

これから国語のバッドエンド作品について話したいときは、『ごんぎつね』で攻めていくのがおすすめだ。

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私はスイミーよりも大造じいさんを応援したい

続いてはブロックCの「生きもの」のお話対決である。

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「協力しよう」と言いながらおいしいところをかっさらっていくスイミーと、せっかく捕まえた宿敵の鳥をついつい逃してしまう大造じいさん。

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「黒いから」という理由でいいところをかっさらっていくスイミー。

小学校の頃からスイミーはいかがなものかと思っていたので、大造じいさんを応援したいが、対決結果はどうだろうか。

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わずかの差でスイミーの勝ち!これには大造じいさんもガッカリだ。

スイミーはネットでもよく話題になる作品だが、45年も読まれていれば納得がいく。

しかし、対する大造じいさんも42年。皆様には、ぜひ大造じいさんのことをもたまには思い出して欲しいと思う。

小学生を虜にしたポディマハッタヤさんと、ぷかぷかわらうクラムボン

最後は「そこまで知られているかは怪しいが、好きな人はめちゃくちゃ好き」なカリスマ作品対決だ。

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『やまなし』は、「クラムボンはかぷかぷわらったよ」のパンチラインで知られる宮沢賢治の名作だ。

タイトルを思い出せず「クラムボンのやつ」「ぷかぷかするやつ」と人に説明したことがある人も多いだろう。

対する『一本の鉛筆の向こうに』は、一部の小学生にだけカリスマ人気を誇った怪作。

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光村の公式ページでも「よく問い合わせが来る作品」として紹介されている。(教科書 time travel(光村図書)よりキャプチャ)

スリランカで、鉛筆のための黒鉛を掘る「ポディマハッタヤさん」に心奪われた人も多いだろう。

タイトルは覚えていないが、中身だけは異常に覚えている作品の双璧ともいえるこの二作。軍配はどちらに上がるのだろうか。

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結果は圧倒的に『やまなし』の勝利。かぷかぷわらうクラムボンの前に、ポディマハッタヤさんはもろくも敗れ去ったのであった。

キング・オブ・バッドエンド『ごんぎつね』の前には『やまなし』も無力

以上の結果をふまえたトーナメント結果がこちらである。

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2回戦以降の目玉は、やはい互いに51年の歴史を持つ『ごんぎつね』と『やまなし』対決だった。

しかし、あらゆる教科書を制覇したキング・オブ・バッドエンド『ごんぎつね』の前には、ぷかぷかわらう『やまなし』ですら無力だった。

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ただ、ここまで見てきた作品以外に読者の皆様にはそれぞれの”推し”があるだろう。

「モチモチの木はないの?」「ちいちゃんの影送りはどこ?」と疑問に思う人も多いはずだ。

そんな熱い思いを持つ方々のために、昭和46年から現代まで小学校6学年分、約500作品のデータをもとに、長年載せられている作品の年代表を作ってみた。

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さすがに全部はむりだったので、10年以上掲載されている定番作品と人気の作品がメインである。

昔なつかし国語の教科書。ぜひこちらの年代表をもとに、久しぶりに昔話に花を咲かせてみて欲しい。


記事を書いているうちに、なんだか楽しくなり、教科書の話を改めて読み返したりしてしまった。

改めて読むと、ストーリーをしっかり覚えているものもあれば、謎の勘違いをしていた作品もある。

読者の皆様も、これをきっかけに久しぶりに忘れていた名作を思い出したりして欲しい。

※参考サイト

 

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