特集 2022年9月13日

おれは冷やし中華なら無限に食べられる

冷やし中華なら無限に食べられると思うんだ。

冷やし中華。それは甘酸っぱいスープに色とりどりの具材たちが乗り、食欲がないときでも食べられる夏の風物詩である。

思い返せば、冷やし中華って量が少なくないだろうか。自分の人生で冷やし中華でお腹いっぱいになったことがない。冷やし中華なら無限に食べられる気がする。

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

前の記事:だし道楽の直営店でうどんを食べる


皆さんは今年、冷やし中華を食べました?

夏も終わろうとしているが皆さんは今年、冷やし中華を食べただろうか。そういえば、私は食べてない気がする。今年の冷やし中華を始めてないのに終わるなんて悲しい。

悲しい気持ちのままサンマやサツマイモ、きのこなど秋の食材にうつつを抜かすなんてさびしいじゃないか。食べよう、冷やし中華。

チャーシューがすごい2玉の冷やし中華

荒川区にある光栄軒という中華料理屋がある。そこはボリュームあふれる料理が多くあるそうだ。冷やし中華もすごいらしい。行くしかない。

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途切れず並んでいる人がいる。行列があるお店はきっとおいしいお店だ。

お酒を飲むながら予定を考えていた。一緒に行ってくれる友人に「今日の夕方に用事があるから早めに行きましょうよ!13時前ぐらいに集合で!!」と約束して、自分が到着したのは14時だった。13時に行くなんて言った記憶がないのだ。お酒って怖いなと思った。(着いた瞬間、めちゃくちゃ謝罪した。)

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カツカレーをチャーハンもレバニラ定食もすてがたい。全部食べるか。

メニュー表にチャーハンもあって食べたいがどうする。冷やし中華がものすごい量がくるかもしれないので頼むのは怖い。

なので、友人に「チャーハンを食べたほうがいいですよ」とすすめてチャーハンを頼んでもらった。見事な誘導である。これがメンタリズムってやつか。これはメンタリズムではない。おれの食欲のやつだ。

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冷やし中華はチャーシュー冷やしの大盛りにした。チャーシューっていくらのっていてもいいものだから。いいものプレミアム。

目の前のテーブル席にはラーメンとチャーハンを食べている人がいる。目の錯覚かもしれないがどんぶりも皿もでかい気がする。夏の暑さがそう幻覚を見させているのかもしれない。もしくは遅刻した焦りのせいか。

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そう思ってやってきたチャーハン、めちゃくちゃでかかった。

先にやってきたチャーハンの盛りがすごい。しかし、これで普通盛りである。2合半あるらしい。友人も「これ、家族で中華料理屋にきてみんなでワイワイ食べるときの量じゃないですか?大皿に乗ってますよ」

「でも、チャーハンたくさんあったほうがいいものだから」と言った。「?」ってあんなに浮かぶんだなと感じる顔をしていた。

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途中から食べている姿を見て心の底から「大変そうだな」と思ったの、初めてかもしれない。
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そして、自分の冷やし中華。麺が見えないほどのチャーシューがのっていてありがとうと言いたくなった。
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ぜひ、横からもご覧下さい。

基本的に全部の具材が大きい。そして、麺は2玉ある。だが見てほしいのはチャーシューである。チャーシュー冷やしにしてよかったと思える見た目。世の中にある麺類全てにこれぐらいの量でチャーシューをのせてほしい。それが実現できるのは平和な世界の証拠だから。

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やるか。冷やし中華を。

人の器とチャーシューはでかいほうがいい。中華料理屋のチャーシューってなんでこんなにおいしいのだろうか。タレが染みこんだ甘辛い味に肉の脂が旨みとなって広がってくる。

チャーシューをもっと食べたいので「お店にあるチャーシューを全部下さい」と注文しようと思ったが、他の人たちにも食べてほしいので我慢した。

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おいしすぎて、体がかたむいた。

味としては甘酸っぱさのあるタレがだが酸味はそこで強くなく、酸味の中にふわっと香る甘味とうまみがある。

そうだ、この甘酸っぱさが冷やし中華だ。きゅうりのザクザクした食感も楽しい。トマトも最初は多いかなと思ったが箸休めにいい。

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書くことがないぐらいスルスルと減っていく。画像が粗いのはおいしいからです。(スマホの動画を取り出したらデジカメが出始めの頃の粗さになった)
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中盤でもおいしい。冷やし中華っていつの時期でもおいしいので冬も出してほしい。

こんなにアクシデントがなく食べていいのかと思ったが食事にアクシデントがあってたまるかよという気持ちもある。

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食べ終わった。
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少しさびしそうな顔をしている。夏が終わるからか?

おれの冷やし中華が終わった。そんな悲しいことがあってたまるか。目の前にはチャーハンに苦戦をしている友人がいる。

しょうがないのでもらうか。本当にしょうがないやつだな!! 気分はウキウキだ。

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冷やし中華も食べ終わったのでチャーハンを食べるか。
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うますぎて目が開いた。

このチャーハン、今まで食べて来たチャーハンの中でもベスト3にはいってくるかもしれない。自分では出せない味だ。そして、チャーシューもごろごろ入っている。3分の1もらったがもっと食べたかった。

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ごちそうさまでした。
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このあと、別の店でも冷やし中華を食べようとしたがやめた。このあと、すたみな太郎に行く予定があったから。大盛りの冷やし中華を食べたあと、すたみな太郎に行く日ってあるんだ。
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おれより強い冷やし中華に会いにいく

足りない。2玉じゃ足りない。もっとおれを興奮させてくれよ。そんな気持ちになっていたとき、福島県にとても強い冷やし中華があるらしいと聞いた。そういうのを待っていたぜ。

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福島県の会津若松に来た。この前にカメラを落として本体に傷がついたときは悲しい気持ちになった。カメラは落とさないほうがいい。

毎回アクシデントが起こってから撮影が始めるの嫌だなと思いながら、会津若松駅からバスで30分ほどの場所にある「食房もりなが」に向かう。

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やきそばも食べたい。

近所のご家族や周りで働いてくる人たちがやってくる、地元に愛されるお店だ。行ったのが9月の頭だったので、冷やし中華があるか不安だったが、9月いっぱいまで提供されているそうだ。秋の風を感じながら冷やし中華を食べられるのはいい。

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メニューを開いたらカツが三昧をしていた。カツ三昧。
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開けば名物が出てくる。
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また名物がある!カレー焼きそばなんて絶対においしい。

名物も気になるが冷やし中華だ。メニュー表に「冷やし中華」と書いてあるが量の記載がない。どこかに情報がないかと店内を見渡すと量の詳細が書いてあった。間違いじゃなければ4玉って見える。おれ、疲れているのかな。

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超特盛りと書いてミラクル盛りというのがある。4玉ってどうだ?

4玉の冷やし中華とはどんなものか。気になるのでミラクル盛りをください。あと、ミラクル盛りって言うの恥ずかしいな。34歳だぞ。

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地方の食堂で見る地元のテレビっていいですよね。

かなりの量なのか、注文してからかなりの時間かかる。どのぐらいの量だろうか。おれを興奮させる量か。テレビを見ながら興奮と期待に胸を膨らませつつ、目の前にやってきたのは冷やし中華だった。でも、自分が知っている量の冷やし中華じゃなかった。これがミラクル盛り。

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もしかしたらそんな量に見えないかもしれない。
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でも、どんぶりいっぱいに麺がぎっちぎちに入っているんですよ。

4玉ってスーパーに売っている麺4つ分だろう。そんなの余裕じゃないかと食べる前は思ったが、目の前に来た冷やし中華を見て震えた。

本当におれにやれるのか、強い心を持たないで見た目だけでお腹いっぱいになってしまう。これが来る前に電話で餃子の注文が入ったのを聞いて、注文すしようか迷ったけど餃子を頼まなくて良かった。

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気合を入れて食べようとはしを入れた瞬間に思った。重い。

まずはひとくち食べようと思ったらすごい量が取れた。麺がぎちぎちに入っているからだ。大漁である。今年は冷やし中華が豊漁の年だ。

あと、色々な具材がのっているがハムとチャーシューが一緒に入っている。盆と正月が一緒に来たのと同じぐらいめでたいやつだ。めでたいから赤飯も炊くか。近所に配ろう。

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前半から余裕がなく目が障害対応をしているときと同じ目をしている。

食べながらも「すごい量だなー」と思っている。食べても食べても減らない。田舎のばあちゃんが「これも食べな」と次々に出してくるのを思い出した。ばあちゃん、もうお腹いっぱいだから大丈夫よ。

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でも、孫をお腹いっぱいにさせたい想いが爆発したのか手をゆるめることがなく、孫は厳しい顔をしていた。

甘酸っぱい味で後味さわやかな冷やし中華。昔懐かしい、夏休み中に母がお昼に作ってくれたような味だ。でも、こんな量じゃなかった。

半分ほど食べて腹7分目である。見た目が汚いので載せないが結構な量が残っている。持ち帰って少しずつ食べるか。そんな気持ちになっていたとき、目の前に見えたカレンダーがこう言ってきた。

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まるで心を見透かされたような言葉。

できないことをやるのはよくない。4玉なんて無理なことをするなよと言ってくる気がする。そんな言葉を聞いたらやるしかない。無理じゃない、おれ無理じゃない!!と言い聞かせながら必死になって目の前の冷やし中華を食べる。

減っていく冷やし中華、増えていく満腹度、お腹が空き過ぎて泣く子ども、お腹いっぱいで泣きそうになる大人。でも、泣かなかった。大人だから。

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泣いてないです。汗が目に入っただけです。

最初は「無理かもしれない」と思っていた。でも、人はやればできる生き物なのだ。なんか、頑張って食べたら行けました。

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冷やし中華を食べるとき、どんぶりを持つことってないな。

ラストスパートでいきおいをつけて食べる。あと少しなのだがお腹に入らない。たぶんそれがお腹いっぱいということなのだろう。

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でも、なんとかなりました。

体感1時間ぐらいだが時計を見たら15分ほどだった。そうか、おれは15分で4玉食べられるのか。

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やりました。

レジのときに「あの量を食べられたのすごいですね」と言われた。なのでこう言ってやったさ。「だって自分、無限に冷やし中華を食べられる男なんで」と。お店を出たあとの太陽がなんだかまぶしかった。(本当は「いやー、もうギリギリでしたよ。ありがとうございました。」と申し訳ない感じで言ってお店を出たあと、特茶を飲んだ。)

このあと、駅に喫茶店でソフトクリームを食べた。地方で食べるソフトクリームっておいしいよね。

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冷やし中華はまだ終わらない

まだまだ冷やし中華は終わらない。まだ冷やし中華を堪能しきってないから。

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東京の芝公園駅近くにある綿徳。

ここも量が多いと評判らしいが、4玉食べた自分にとって怖いものはない。

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そんなお店に編集部安藤さんと来た。

冷やし中華を食べているところを見せつけるために安藤さんをお呼びした。最近おいしかったものは秋田のうどんだそうです。

店内には壁中にメニューが貼ってある。ビールを飲みながら中華料理をつまみにごきげんな人もいるが、こちらは真剣なまなざしでメニュー表を見ている。

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日経新聞を読んでいるのかと思うぐらい真剣に見ているがメニュー表です。

どのぐらいの量か聞いてみる。普通の量でも他のものを食べたら食べられないかも、という量らしい。

店員さんに「あーじゃあ大盛りの冷やし中華をください」と自信満々に注文をする。本当に大丈夫か?という顔をしながらオーダーを伝えに行った。

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お店と安藤さんに余裕を見せつけるため、ピータンを頼んだ。ピータンうまい。

余談だが、安藤さんが「おれ、むかない安藤でからごと食べてからピータン苦手なんだよね」と言われて、特殊な苦手のなり方だと思った。あと「全部食べるので大丈夫です」と言って食べた。

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こちらが綿徳の冷やし中華大盛り。

盛りがすごい。量もすごいが味も今まで食べたことのない味の冷やし中華だ。酸っぱくなく、だしとしょうゆのうまみが前面に飛び出してきた。まるで冷やしラーメンのような味である。

そして、海苔がのっているのも特徴的だ。この海苔がいい仕事をしている。だしとしょうゆのおいしさを感じた瞬間に、磯の風味が口の中に広がる。味が何層にもなってやってくるのだ。家の近くにできたら週3で通いたい。

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普通盛りも結構な量がある。そして、ある程度食べたところで「これ、全然減らないね」と驚いていた。

安藤さん「軽い気持ちで食べ始めたけど全然減らなくない?」

江ノ島「でも、それだけ楽しめるってことなので」

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そのあと楽しんでいるのかしゃべらなくなってしまった。
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自分も楽しむか…。
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うまいな…。

味だけではなく、きざんだキュウリ、ネギなど食感も楽しい。こんな冷やし中華食べたことないな。あまりのうまさに今度、スミソニアン博物館で展示されるそうです。

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無限に食べられる人を目の前にした人の表情。
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何事もなく食べ終わってしまった。

おいしかった。同じ冷やし中華だがそれぞれで違った味や工夫があるもんだなと思った。終わったな、おれの夏。

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冷やし中華を食べる夏が終わりを告げようとしていた。

このお店で撮影が終了である。そうか、これで終わるのか。でも、もう少し食べられる気もする。まだ終わらせないぜ、おれたちの夏は。

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安藤さん、
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もう一軒行きませんか?

冷やし中華延長戦

「もう1軒行きませんか?」と言ったとき、「すごいことを言い出したな」という顔をしていた。冷やし中華に対して自信があるのだ。見せつけるか。

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お店を出て歩く。

実はこの綿徳がある芝商店街は、中華料理屋の向かいに中華料理屋があったりと多くの中華料理屋が存在している。

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またの名を激辛ストリートと呼ばれている。

町おこしとして世界一辛い唐辛子「ブート・ジョロキア」を使った料理やわさびを通常の三倍使用したお寿司など激辛料理を提供するお店が多いそうだ。

ホームページを見たら「非常識な辛さのメニューが集合」と書いてあった。集合しないでほしい。

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生駒軒というお店に入った。激辛タンメンがあるらしいが冷やし中華をお願いする。

数分歩くと冷やし中華があった。まだ満腹度で言うと6割ぐらいである。パッと食べて帰るか。

注文をする前に一応、量の確認をした。無限に食べられはするが、前のお店みたいな量が来たら怖い。念の為である。

店員さんが「私だったら普通の量でお腹いっぱいぐらいの量ですね」と言うので、普通の量を頼んだ。どうする、ものすごい食べる人で山ぐらいの量が来たら。

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頼んだとき、安藤さんは「冷やし中華のはしごをする人っているんだ…」とつぶやいた。
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そしてやってきた冷やし中華。きれいな見た目をしている。

「おれ、本当に1口も食べられないからね」と念押しされたが「大丈夫ですよ。今、お腹6割なんで」と言って食べ始めたが1口食べた瞬間に9割になった。あれだね、時間が経つとお腹ってふくれるんだね。楽しい食事から戦いの食事が始まった。

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冷やし中華、始めてきたな

おいしいのだ。さきほどとは違った酸味が強めの冷やし中華。さっぱりとした、夏の暑さにぴったりの冷やし中華だ。でも、もう秋が近づいているし、お腹いっぱいだしでてんてこまいです。

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お腹いっぱいあるある「減らない」

量も多くない。普段だったら5分もかからないで食べられるだろう。だが今は4玉ぐらいの量に見える。全然減らない。

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となりの人たちに「入りますか?」と聞こうと思ったが食べかけを渡すのは無礼なので我慢した。
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新しいグルメジャンル、孤独の戦いグルメ。

ひとくちが入っていかない。でも、ここで「安藤さん、夏休みって取ったんですか?」と世間話をしている場合じゃない。まだ、取れてないそうです。

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うらー!!

こういうのは食べきる覚悟と勢いが大事なのだ。全ての力を出し切ってひとくちを食べた。

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なんとか食べきったその横で完全に飽きて目に光りがない顔をしないでほしい。

普通の量にここまで苦戦するとは思わなかった。でも、きっとあきらめなければきっとやり遂げられる。そう思った夏の終わりだった。


変わった冷やし中華も食べてみたい。

今回、全員がイメージする冷やし中華をいろいろと食べてみたがそれぞれで味が違っていたりして楽しかった。

聞いた話だがうわさでは長野にポテトフライがのった冷やし中華があるらしい。変わりダネの冷やし中華も食べてみたい。

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「3軒目行く?」と聞かれたが「今日は大丈夫です」と言って帰った。
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