インターネットが生んだゲームは楽しかった
予想以上に盛り上がってよかった。「みんなが知ってる曲」という問題にさえすれば、年齢差も関係ないひらめき一発勝負なのがおもしろい。
同じアーティストが好きな人同士が集まってやるとさらに盛り上がるかもしれない。「サビじゃなくてそこのギターソロを表現する!?」みたいな展開もありそうだ。
Yahoo知恵袋で、
「たたん たん たん たたん
この曲って何かわかりますか?」
みたいな質問をする人がけっこういる。質問じゃなくてもはやクイズだ。
これをゲームにしたらおもしろいんじゃないかと思ってやってみたら予想以上に盛り上がった。
上記の画像のようなやり取りを見るたびに「質問というよりクイズだよな…!」と思っていた。
わざとやってるんじゃないか?というくらい質問者からのヒントが少ない。なぜか音も「た」「ら」などの少数精鋭のひらがなだけしか使われない。
しかし、そんな状態にもかかわらず回答者はたやすく正解を見つけてくる。どういう脳みその回路してるんだ。
「このYahoo知恵袋のやりとりをクイズゲームにしたら盛り上がるんじゃないか?」と思ったので実際にやってみることにした。
インターネット文化から自然発生したゲームだ。それだけでワクワクする…!
・出題する曲は必ずみんなが知っている有名なものにする
・音楽は「た」「ら」「ん」「っ」の平仮名で表現する
・問題をだす人は音程や発音を教えてはいけない。回答者はあくまで文字とヒントを見て判断する。
・少しずつヒントを出していく。ヒントは音楽ジャンル、明るい曲 / 暗い曲、何年代頃に発売など。
「た」「ら」「ん」「っ」しか使用しない理由は本家のYahoo知恵袋でそういう人が多いからだ。むしろ「た」しか使わない人がかなり多いのだ。謎の縛りプレイ。
ちなみにこの記事はYahoo知恵袋と連呼しているがPR記事でもなんでもない。むしろPR記事にしてお金がほしい。「Yahoo知恵袋のPR記事を書くためにはどうすればいいですか?」とYahoo知恵袋で聞いてみよう。「なんで自分で調べないんですか?まずは問い合わせてみては?」というクソコメがつきそうだ。やめよう。
ちなみにこのゲームは予想していた以上に盛り上がった。紙とペンがあれば即興でもできるから居酒屋とかでやっても盛り上がりそう。
Yahoo知恵袋の「たたたたん たん この曲ってわかります?」という画面を見せて説明すると「あーこれね」「あるよね」という感じでやはりほとんどみんなが知っているようだった。
一般的にはこのYahoo知恵袋のやり取りってどのくらいの知名度があるのだろうか。
僕は気づいたらこの「た」で質問する文化を知っていた。「たたたたん♪ ねぇ、この曲知ってる?ねぇ…知ってる?私…今あなたの後ろにいるの…」みたいな怖い話しがあと100年くらいしたら誕生しそう。
問題を出した瞬間に全員の顔が真剣になった。「普通のクイズと脳を使う部分が違うぞ」と全員が判断したのかもしれない。もしくは予想以上に「た」が多くて面食らったのだろう。
みんなで笑ったあと思えば今度は一斉にぶつぶつと「た〜↑」「たー↓」とそれぞれの音を信じてつぶやきだす。
四方八方からぼそぼそと「た」をつぶやく声が聴こえてくる。田舎のあぜ道を歩いているときにカエルの鳴き声が聞こえてくる風景を思い出して笑いそうになった。
問題を見て真剣な顔になり、笑い、苦悩しだす。かと思えば自分が口ずさんだ音楽がツボに入ったのか急にニヤニヤしだす人もいた。
なんなんだこの情緒不安定な大人の集まりは。うさんくセラピーを主催している気持ちにすらなってきた。アニメとかで見る地下組織で活動する宗教みたいだ。
答えを知っているのは自分だけなので、まるで検討違いの音程がどんどんと歌われていくのが見ていておもしろい。このまま答えを言わずに放置していたらいずれ全くべつの名曲が誕生するかもしれない。放置作曲法という本をいつか出版しよう。
「答えに誰もたどりつかないかな…」と僕が思ったところで「たん たたたん」とおそるおそる耳馴染んだリズムをべつやくさんが口ずさみ始めた。正解がでた!!!
全員がスッキリした顔になった。文字にメロディをつけて答えが徐々にわかっていく感覚はアハ体験に近いのかもしれない。ただの文字列が音楽に変わる瞬間だ。答えを言ったあとの反応が激変するのでおもしろい。
問題を出している僕も正しいリズムが口ずさまれると謎の高揚感に包まれる。
あっあっあっあああ〜〜〜!!それそれそれそれ!!!!!!!
と興奮する。全員がよちよち歩きで「た」をつぶやいていたのに音楽になっていく。初めてのおつかいを見ているのに近い感動がある。ああ早く次の問題が出したい。早く答えてほしい。
回答側は「知っている曲であるはずなのに答えにたどりつけない」という絶妙なジレンマがある。知識を使ったクイズと違い、誰でも正解できる権利があるから真剣になれるのだ。
もしかしたらYahoo知恵袋で質問している人たちもわざと「た」や「ら」だけで音楽を表現して遊んでいるのかもしれない。そしてみんなで「あっあっあっあああ〜〜〜!!それそれそれそれ!!!!!!!」と興奮したいだけの文化なのかもしれない。変態知恵文化袋。
他にもすぐわかった人がいたようだ。答えはベートベンの「運命」だ。やはり楽器がピアノだけだと言葉でも伝わりやすいようだ。
あと、2問やってみてわかったのだが、普通のクイズと違って回答するときはみんなおそるおそる答えることになる。確信を持って答えることができない。
理由は「ああ、惜しい!」という回答が存在しないからだ。「不正解=見当違いの回答」となってしまうため、回答する側はどうしても慎重になる。
さて、ここまではあくまで簡単な練習問題である。2問ともすぐにわかった人もいるかもしれない。
次からが本番だ。ここからはヒントと答えを隠すので、読みながら答えを考えてみてほしい。そして電車の中などで「た〜↑」「たー↓」と口ずさんで恥をかいてほしい。
誰でも聴いたことがあるピアノの曲
最後までいったら最初に戻ってもう一度繰り返す
有名曲を選んでいるので、作った僕からすると簡単な問題だと思っていた。しかし、回答者側からすると難しいようだった。両者の温度感のバランスをとるのが難しい…!
ただし問題は「必ず知っている曲」という前提があるため、みんなすぐにはあきらめない。わかりそうでわからないというのはかなり悔しいらしい。
【クリックすると答えがでます】
エリーゼのために
一部分を切り取った盛り上がりの部分
この音が鳴る前は静かに笛の音が鳴る
「『た』と『ら』の違いはなんだ?」
「『ら』は裏拍なのかもしれない」
「最後の『た〜ん』はなにかヒントになっているはず…!」
口ずさむだけでなくだんだんと文字を考察するようにもなってきた。ヒントと合わせて謎解きみたいになってきた。
【クリックすると答えがでます】
フィガロの結婚
カラオケでトップ10にしばらく入っていたくらい有名
アイドルの曲
JPOPはギターやドラム、ベース、シンセ、そして歌声という様々な音が考えられ、ジャンルも多岐に渡る。
さらにクラシックよりも知っている曲が多いためか迷っている人が多かった。
JPOPは「た」と「ら」だけじゃ難しそうと思っていたので、ちょっと変化球なヒントを用意した。歌詞の最後の部分を表示してみた。
正解を全員に伝えても一瞬「ん?」という戸惑いの空気が流れた。
視覚で見ている「た」に惑わされて原曲がスッと思い出せなくなっているようだった。クラシックより耳馴染みがある曲なため逆に文字が邪魔になっているのだ。
曲がわかっても音楽と文字と一致するまで少し時間がかかるようだ。
「お、おお、ん…?ああ!んー?あー!!!!」とジェットコースターのように波打つ感情に襲われるようだ。
【クリックすると答えがでます】
恋するフォーチュンクッキー / AKB48(1分40秒あたりから)
ゆっくりとしたバラード調の曲
大御所グループ
ああ…「大人って絶対につまんねーよな」と言っていた高校時代の自分に教えてあげたい。大人って思っている以上にくだらないことで爆笑するぞ、と。
【クリックすると答えがでます】
TSUNAMI / サザンオールスターズ(1分10秒あたりから)
ここからの2問は最初はジャンルすらも不明にしておく。もしノーヒントで正解にたどりつけた人がいたら今すぐYahoo知恵袋に降臨してきてほしい。
音楽の教科書にも載ってるレベルに有名
アニメ映画のエンディングテーマ
みんながバラバラに歌っているため、人の歌が頭に入ってくると混乱する。
そして誰かが「〇〇じゃない?」と言ったら頭からその音楽が離れなくなるのだ。
【クリックすると答えがでます】
さんぽ(となりのトトロ)
合唱などで歌われる
夜に流れる曲
一発の閃きで急に正解にたどりつくから見ていておもしろい。そして正解した人も気持ちよさそうなのが見ていて心地いい。
【クリックすると答えがでます】
蛍の光(デパートが閉店するときに流れる音楽)
ジャンルはクラシック
曲の出だしからいきなり盛り上がってこの音が鳴る
この問題はさすがに誰もわからないだろうと思っていたのだが、さくらいさんが自力で正解にたどり着いた…!
周りからも拍手喝采だった。絶対にわからないと思ったから驚いた。
もしかしたらさくらいさんは夜な夜なYahoo知恵袋のこういった質問に回答をしている神の一人なのかもしれない。
【クリックすると答えがでます】
アイネクライネナハトムジーク
このゲームのいいところは準備がいらないことだ。紙とペンさえあればすぐにできる。
今まで出題者側で楽しんでいたが、いざやってみるとその難しさがわかる。
どこから答えまでにたどっていけばいいのかわからない。まっ平らなコンクリートの壁を登れと言われるくらい掴みどころがない。よくこれで今まで正解した人いたな…!正解したときに両手あげて喜びたくなる気持ちが今になってわかった。
僕もボソボソと音程を口にしてみるもののどれもしっくりこない。頭の中で合致するメロディが湧いてこない。
あーモヤモヤする!!
でも「誰でも知ってる有名な曲」という前提があるから「後少し考えればでてきそう…!」とくやしい気持ちが湧いてくる。今まで見てきたみんなの苦悶の表情の意味がわかった。わかりそうでわからないというのは悔し楽しい。
自分で体験してみて改めて思ったけどいいゲームだな、これ。
ちなみに最後の問題は答えをあえてこのまま書かないでおく。正解を求めるもんもんとする気持ちをぜひ味わってほしい。答えがわからない人はYahoo知恵袋で質問してみてほしい。
予想以上に盛り上がってよかった。「みんなが知ってる曲」という問題にさえすれば、年齢差も関係ないひらめき一発勝負なのがおもしろい。
同じアーティストが好きな人同士が集まってやるとさらに盛り上がるかもしれない。「サビじゃなくてそこのギターソロを表現する!?」みたいな展開もありそうだ。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |