特に話す事もないので、淡々とゲームが進行していく。何故、夜中に河原でオセロを。お互い薄らと感じてはいるが、それを言ったらおしまいである。
いやらしい事に、藤原君は角ばかりを狙ってくるのだ。本気で勝ちに来ている。角を2つ取られ劣勢であるが、角はまだ半分残っている。それを僕が取れば逆転も可能だ。そうすれば、黒いバック紙の裏に仕掛けた秘密装置を起動する事なく終える事が出来る。
ん?
僕が勝ったら「絶対に負けない方法」を披露する事なく終わってしまう。「夜中に河原でオセロをやりました。楽しかったです」という記事にするつもりはない。ここはわざと負けた方がいいのか?
しかし、残り2つの角もあっさりと取られ、気付けば僕の残り一手となっていた。残った升目に黒を置いたところで、結果は白が48個で黒は16個。わざと負ける必要なんてなかった。このまま最後の石を打てば、僕の負けが確定する。
いよいよ、秘密装置を起動させる時が来たようだ。
最後の升目には石を置かず、秘密装置のリモコンを手に取った。
このスイッチを押せば、僕は絶対負けないのだ。
あっという間に煙に包まれる藤原君。