「痛み止めの呪文」は足に話しかけながらやる
最後は「痛み止めの呪文」である。
「痛み止めの呪文」にはいくつかバージョンがあるが、そこから手軽なふたつをチョイス。ひとつめは、「足腰の痛み止めの呪文」である。
足腰の痛みに効くというが、残念ながら私も姉も足腰はパーフェクトの状態だった。
しかたないので、ここでも友人を頼っていく。
「痛み止めの呪文」は、唱える前に足の痛いところに髪の毛を結ぶ必要がある。
結ぶのは「乙女の髪の毛」がいいらしいが、乙女の定義がわからなかったので自己申告制で私は乙女だということにした。
これで準備はばっちりだ!
友人は来月、バスケの試合があるという。それまでにはルーマニアの呪文の力でバッチリ治っているはずだ!
腹痛の呪文はわりと効く
「痛み止めの呪文」のふたつめのバージョンは「腹痛を治す呪文」である。
ここは、私が自分で自分にかける式でいくことにした。
正月の食べすぎでお腹が痛くなればちょうどいいと思っていたが、残念ながら万事絶好調だったので、やむなく家のまわりを走って腹を痛くする。
そのまま呪文を唱えるのだが、この呪文は「暖炉を持ち上げるふりをしながら」唱える必要がある。
純和風の実家に暖炉なんてあるわけないので、これを暖炉と呼ぶことにした。
ちょうどよく家にあったエアコンを「電気暖炉」として押し切っていく。
ぜぇぜぇ言いながら呪文を唱えて顔をあげたら、私以外の全員が腹をかかえて笑っていた。
ひとつわかったのは「この呪文の姿勢だと、腹痛が治りやすい」ということである。
しゃがんで背中を温めるというのも腹痛によさそうだし、呪文を唱えている間はどれだけ熱くても我慢をするので、子どもにやらせるのにもよさそうだ。
たぶん、この姿勢でいつもより腹痛が早く治った魔女がどこかにいたのだろう。
それが誰にでもわかる「呪文」という形になって残されていったのかもしれない。ヨーロッパの呪文、想像以上に奥が深かった。
呪文をかけたのは正月だった。1ヶ月ほどたったので、その後の結果をお知らせしたい。
両親いわく、草はちょっと枯れたらしい。勝手にオリジナルの踊りを入れたり、カタカナで適当な発音をしなければもっと滅ぼせたのかもしれない。
歴史が豊かなルーマニアには、まだまだ「おばあちゃんが魔女だった」「子どもの頃に教えてもらった魔女のおまじないを覚えている」という人達がいるという。
「冷水をかぶる雨乞いの呪文」などは、いまでも観光地で観れることがあるそうだ。ぜひ、ルーマニアに行く機会があれば、呪文にもチャレンジして欲しい。