県境で感じる3次元の世界
その国の法律(に基づき定められた県境などの境界)が効力を持つ範囲が、国であると考えると、つい私達は2次元の地図を思い浮かべてその範囲を考えがちですが、津軽海峡の県境を考えると、実は国というのは領空や海底もある3次元の世界に存在しているという、当たり前のことを実感できる気がします。(BGM『津軽海峡冬景色』)
以上です。
さて、北海道と青森県の県境の話をすっかり忘れていました。
かつて、青函トンネルは吉岡海底駅と、竜飛海底駅というふたつの海底駅があり、青函トンネル内の見学ツアーというものが行われていました。
その頃は、実際に歩いて青函トンネル内にあるという北海道と青森県の境界、つまり県境となっている場所まで行けて、そこにある境界を示すプレートも間近でみることができたそうです。
しかし、青函トンネル内を新幹線が走ることになり、吉岡海底駅、竜飛海底駅のふたつの駅は2014(平成26)年に廃止され、一般人のトンネル見学はできなくなってしまいました。
北海道と青森県の貴重な県境に実際に行くことはもうかなり難しいわけですが、実はその境界プレート……の、レプリカは、青函トンネル記念館の中に展示されています。
それがこちらでございます。
この写真を撮影したくて、昨年がんばって車の免許を取ったと言っても過言ではありません。この写真を撮るのにウン万円以上かかったわけです。いやー、感無量ですが、掛かったお金を計算するとぶっ倒れそうになるので、そんなことは考えないことにします。
ところで、実際の北海道と青森の県境ってどのへんにあるのでしょうか?
現地に行くことはかなわないわけですが、グーグルマップでどの辺りか、おおよその場所ぐらいはわかるんじゃないか? 海の上でしょうけども。
境界のプレートには「浜名起点24K550M」「湯の里起点29K300M」とあります。つまり、青森側のトンネルの入口から24キロ550メートルの場所がそうだというのです。
24.55+29.3をしてみると、53.85。JR北海道のサイトによると、青函トンネルの長さは53.85キロメートルとなっているので、ぴったりです。
そこで、グーグルマップの距離計測のモードでチビチビ距離をはかりながら割り出した、北海道と青森県の県境の位置は、こちらです。
だからなんだ感は否めませんが、おそらく、この辺が北海道と青森県の県境だ、ということはわかりました。
そもそもの話ですが、海上の県境は、どこの自治体がどういう境界をもっているのかがわからない状態、つまり境界、県境が決められていないところがほとんどです。瀬戸内海など、一部決まっているところを除くと、日本のどの県境もそうなっています。
なお、湖沼も境界が決まっていないところは多いのですが、湖に関しては近年、市町村や県境の境界を確定させる例(中海、十和田湖、琵琶湖など)が多くなってきています。
ところが、津軽海峡に関しては、事情が特殊で、真ん中にどこの国にも属さない特定海域という公海(どこの国の船舶も自由に航行可能な海域)が横たわっています。そのため、本来は北海道と青森県は海の上で隣接できないことになります。
つまり、どこの国にも属さない公海の下に日本のトンネルがあり、そこだけは日本国の法律が効力を発生し、県境が存在する……という、プログラムがバグりそうな条件の県境があるといえます。
その国の法律(に基づき定められた県境などの境界)が効力を持つ範囲が、国であると考えると、つい私達は2次元の地図を思い浮かべてその範囲を考えがちですが、津軽海峡の県境を考えると、実は国というのは領空や海底もある3次元の世界に存在しているという、当たり前のことを実感できる気がします。(BGM『津軽海峡冬景色』)
以上です。
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