はりきりすぎて大量の「人」を作ったせいで、全部を紹介しきれなかった。しかたないので、ここでおまけの「人」を紹介する。
教科書体は特に最難関で、作っているときから「あなたたちは本当に支え合えるのか?」と聞きたくなるぐらい不安定な「人」だった。
人と人が支え合っている話をするときは、教科書体よりポップ体なのだ。ぜひ、今後支え合いの話をするときは参考にして欲しいと思う。
「人という字は、人と人が支え合ってできている」という言葉がある。
しかし、実際の人の支え合い方には差がある。細い明朝体の「人」は、かなりぎりぎりでお互いを支えているように見えるし、逆に太い筆文字の「人」は、ガッツリホールドしていて息ピッタリな気がする。
いろいろな「人」がある中で、一番「人と人が支え合っている人」はどれなのか。実際に「人」を作って確かめたい。
人という字は、人と人が支え合ってできているという。
でも、現実にはいろんな「人」があるので、必ずしも支え合っているとは限らない。
一番「人と人が支え合っている人」はどれなのか。
その答えを探るべく、物理的にたくさんの「人」を作って確かめてみることにした。
またたくまに、黒い人だかりができた。これで下準備は万全だ!
今回は、次の2つのルールで人の支え合い方をチェックする。
まずはとにかくやってみよう。エントリーNo.1はこの「人」だ。
龍門石碑体は、書道などでお手本にされることもあるという文字だ。そのせいか、いかにも見た目が「人」っぽい。
「人という字を思い浮かべて」と言われたら、だいたいの人がこんな感じの「人」を思い浮かべるはずだ。
そんな王道派ともいえる龍門石碑体の「人」だが、本当に支え合っているのだろうか。
人の支え合っている部分に、カッターで亀裂を走らせてみる。
お互いをばらばらにした途端、2人とも力なくその場に倒れ込んでしまった。
やはり、人という字は常にお互いを支え合っていないとダメなのだ。
余裕とまではいかなかったが、2人が支え合うことで、ちゃんと「人」が立つことができた。
どちらが欠けてもうまくいかない。お互いがお互いを支え合っている、これぞまさに「人」である。
しかし、勝負はこれだけではない。どんな障害でも2人は乗り越えられるのか、揺れを与えてチェックする。
いい揺れの与え方がよくわからなかったので、とりあえずテーブルを叩きまくったらすぐに崩れ去ってしまった。
龍門石碑体の「人」は、障害を乗り越えられるほど支え合ってはいなかったらしい。
この調子で、他の「人」もどんどんチェックをしていこう。
「凸版文久見出し明朝」は、最近トレンドのフォントである。使いやすくてちょっとかわいらしいので、バナーや装丁で見かけることが増えてきた。
いわばフォント界のホープだが、ちゃんと人と人は支え合っているのだろうか?
すっくと立った。こんなに不安定そうなのにきちんと支え合っているなんて、なんだかちょっと感動する。
凸版文久見出し明朝で特に感動するポイントは、上にちょっとだけある「でっぱり」だ。
正直、これがなければかなり支え合えない人だと思う。
お互いがなんとか工夫をしながら、必死にお互いを支えている感じがすごくいい。
机を叩くと、0.5秒ぐらいでもろくも崩れ去っていった。やはり、もともとの太さがないと「人」は衝撃に耐えられないらしい。
続いては、江戸っぽい雰囲気を出したいときに絶対に出てくる勘亭流の「人」である。
見た目は人情あふれる「人」に見えるが、実際のところどうだろうか。
こんなに人情味がありそうなのに、揺れがきたらすぐにお互いを見捨ててしまった。せちがらい世になったものだ。
しかたがないので、相撲文字に期待する。
相撲といえば足腰が大事だ。しかも、相撲のとっくみあいはかなり「人」の形っぽい。
これは期待が持てそうだ。がんばれぼくらの相撲文字!
さすが天下の相撲文字! 最後は崩れてしまったものの、ぎりぎりまでがっつり組み合う最高の支え合いを見せてくれた。やっぱり最後は人と人の支え合いだ。
ここまで手書きっぽい「人」ばかりを見てきたが、ここでゴシック体の「人」にも出てもらおう。
ゴシックの「人」は、正直作るかかなり迷った。なぜかというとコレである。
たぶんなのだが、「人と人は支え合っている」と最初に言いだした方は、筆で描いた「人」をもとにして言ったんだと思う。ゴシック体のことは、なにも考えてなかったはずだ。
ちょっと亀裂は入ったものの、揺れにも負けないゴシック体。ゴシック体でも、人は支え合うことができるのだ。
もうひとつ、忘れちゃいけないのがポップ体だ。
ちょっと軽薄なイメージがついてしまっているポップ体だが、人と人が支え合っているのなら、ファンを増やせるかもしれない。
圧倒的な支え合いだ。バラバラになっても立ち上がり、2人になっても立ち上がる。
倒れるまでテーブルを叩き続けてみたものの、全然崩れる気配がないので最終的に私が負けた。
いまだかつて、ここまで支え合う「人」がいただろうか。ポップ体、圧巻の支え合いである。
最後は、変わった「人」を見ていこう。
できるだけ早く文字を書くための崩し文字、それが草書体である。
崩し文字だけあって、ゴシック体とも一味違った「どこで切っていいのかわからん」感がただよっている。
人というより「ろ」になった。こんな「ろ」のような人は初めて見た。
草書体の「人」は全然支え合っていなかった。この世には、やはりいろんな人があるようだ。
他のどんな「人」とも違う、謎の風格ただよう印相体。
見たことがない人も多いと思うが、簡単にいえば「ハンコのための文字」である。
かなり支え合い感のあるフォルムに見えたが、その特殊さが裏目にでたのか、ガッツリ支え合うことはできなかった。「人」は見た目によらないのだ。
いろんな「人」の支え合いを見てきたが、結果を一覧でまとめてみる。
ということで...
一番人と人が支え合っているのは、ポップ体の「人」だった。
特に「切り離されても立ち上がる」「どれだけ障害があっても支え合う」という強さを見せてくれたのは、たくさんの「人」の中でもポップ体の「人」だけだ。
今後もし「人という字は、人と人が支え合ってできている」という話をするときには、ポップ体の「人」を使うことをおすすめしたい。
教科書体は特に最難関で、作っているときから「あなたたちは本当に支え合えるのか?」と聞きたくなるぐらい不安定な「人」だった。
人と人が支え合っている話をするときは、教科書体よりポップ体なのだ。ぜひ、今後支え合いの話をするときは参考にして欲しいと思う。
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