分解の次は魔改造が夢
100円均一に行ったときに、懐かしくて買ったおもちゃを紹介して終わろう。
いざ動かしてみたら、あまりの衝撃で動画を撮るのをすっかり忘れてゲラゲラ笑った。こういうの、モーターに初めて触れた人はみんなやるのだろうな。
気になる人はお試しあれ。(おそらく多くの人が想像することが、そっくりそのまま起きます。)
2022年、我が家に旗振りブームが到来した。
食器を洗う、風呂に入る、歯を磨く。日常の面倒なアレコレを、ナマケモノ夫婦二人組は旗を振り互いに鼓舞し合うことで乗り切ってきたのである。
旗の導入から二週間経ち、問題が発生した。パートナーが旗を振るのに完全に飽きちゃったのだ。
きっかけは昨年末、熊谷市を訪れた時に見つけた、ラグビーチームの応援旗だ。フレ・フレと応援するクマがあまりにかわいくて、パートナーの「ぜったいにいらないと思うけど……」の声を押し切り購入に至った。
バサバサと旗が風を切る音、小さな家に不釣り合いなでっかい布がたなびく様は、想像よりもずっと気持ちがいいものだった。
わたしがあんまり楽しそうにしているものだから、パートナーもついつい手にとって旗を振った。
目の前に大真面目に、あるいはにこにこと旗を振っている人がいる。
その可笑しさがびたっとハマって、わたしたちは互いに旗振り励まし合い、2022年のはじまりが希望に満ちていた。
しかし、一瞬のうちにブームは過ぎ去り、パートナーは旗を振るのをやめた。
わたしが言い出しっぺなので仕方がないが、ちょっと寂しい。振るだけじゃなくって、わたしもだれかに旗を振られたい。応援してほしいのだ。
そんなわけで旗を振ってくれるマシーンを作ることにした。
校正ソフトにまで煽られる始末。ちがいます〜振られたいんです〜!!
まず何より大切なのは、目指すべき旗振りの軌道を決めることだ。
数週間の旗振りにより、単純な左右振りよりも手首の返しを効かせる八の字振りが旗が絡まず美しく舞う軌道だということを見つけた。
しかしこの八の字振りや左右振りの「行って帰ってくる」動きが曲者なのだ。
ただ一方向に軸が回転しているだけのモーターで実現しようとすると「くらんく」を作るとか、でなければ「さーぼもーたー」がいるとか、けっこう大変なことになるらしい。(ここには載せないけれど有給3日使ってもうまくいかなかった)
今回は欲張らず、モーターの回転に旗をくっつける「零 -ZERO-の字振り」を目指そう。
まずは我が家で最もよく回る道具「電動ルーター」に旗をとりつけてみた。
空腹を耐える怪物の歯ぎしりのような音がした後、金具を固定していたネジの頭がバキン、そしてバチッと壁に飛んだ。
ヒュウ、どうやらこれ、かなり危ないらしい。旗は重いし電動ルーターは勢いがありすぎる。再考の余地あり。
旗は軽くて小さいものを自作するとして、問題は本体だ。こんなときは100円均一!と近くのダイソーに走ったら、使えそうな「電動のもの」「回るもの」が3つ見つかった。
…なんだこの絶妙な価格差は?!
どれも電池がモーターとつながって、モーターの軸に固定されたそれぞれのパーツが回転するだけだろう。
どこで価格差が生まれるのだろうか。分解して中を見てみることにした。
パーツをひとつひとつドライバーで外す作業に没頭する中で、思い出した場面がある。当時働いていた学童保育で、子どもたちと散歩に行った日のことだ。
道端に、土まみれの、安っぽい時計が落ちているのを誰かが見つけた。ベルトはちぎれ、傾ければ針がブラブラ揺れるような、もう使い物にならない時計。
それでも子どもたちにとってはお宝だった。別の誰かが「中を見てみたい」って言い出して、それでみんなで走って部屋に帰った。
俺がやる!わたしもやりたい!ってすごい騒ぎだったのに、小さなネジをドライバーで回しはじめたとたん、なぜかみんな声を潜めて、鼻息だけが聞こえてきたっけ。
パカッと音がして、中の機構がお目見えしたときのふたたびの盛り上がりといったら。
次はわたし!次は僕!って、どんどん小さくなっていくパーツたち。
ぴったり隙間なくはめこまれたその境目を、マイナスドライバーでこじ開けるときのワルそうな表情。
その日からしばらくの間、登下校中に拾ったガラクタ、クリップの折れたシャープペンシル、いろんなものを子どもたちが分解していた、あの光景を思い出した。
世界の仕組みを覗こうとするような、静かだけれども大きな興奮がそこにはあった。
こんなに楽しいことを、君たちはやっていたのか!
さて、ひとしきり観察して満足したところで、旗フレフレマシーン第一号の誕生だ。
力強く旗を回すその姿は、水色のボディとあざやかな赤い旗があいまって、工事現場の案内人のよう。
ところが完成かと思った矢先、突然ピクリとも動かなくなった。無理につなげた線が外れたのと、電池を固定するバネが不安定だったのが原因のようだ。
残ったカプチーノミキサーのパーツでもう一度旗フレフレマシーンを組んでみたら、すぐにすっころぶドジっ子に転生してしまった。
とはいえ、毎回大きな音をたてて倒れるのも心臓に悪いので、なんとか自立してもらいたい。
あれこれ試した結果、手元にあった(懐中電灯を分解して入手した)プラスチック製の輪っかがバランスを取るのにちょうどよさそうだ。
さあ、がんばっておくれよ!と声をかけ、机にそっとのせると…
100円均一に行ったときに、懐かしくて買ったおもちゃを紹介して終わろう。
いざ動かしてみたら、あまりの衝撃で動画を撮るのをすっかり忘れてゲラゲラ笑った。こういうの、モーターに初めて触れた人はみんなやるのだろうな。
気になる人はお試しあれ。(おそらく多くの人が想像することが、そっくりそのまま起きます。)
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