特集 2021年2月5日

爬虫類ってペットとしてどう?飼って5年経ったので報告させてください

爬虫類や両生類を飼いはじめて5年ほど経った。今日は、「爬虫類ちょっと興味あるな〜」と思っている人の背中を押したり、引いたりしたいと思います。よろしくお願いします。

父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:バーベキュー形式で将棋をやると、楽しいしおいしい(デジタルリマスター版)


 

爬虫類や両生類はペットとしてどうなの?

 

コロナ禍の影響で、自宅で飼いやすい爬虫類の人気があがっているらしい。しかし、結論からいえば、愛玩動物として飼うなら、犬と猫が最強だ。愛情を持って世話したら少なからず返してくれるし、人間と生活環境も近い。人類が何万年もかけて選び抜いた伴侶より魅力的な生き物なんてそうそういない。そんな当たり前の事実にぶち当たるのだが、得体の知れないヤツらだからこそ得られるもの、というのも間違いなくあるのだ。今日は、沼に片足を突っ込んでいる人間から、その魅力を鼻息あらく紹介させてください。

 

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(爬虫類のなかでは)ペットとしての素養No. 1「ヒョウモントカゲモドキ」

 

爬虫類飼育に興味を持った人ならば、「犬・猫ほど手間もかからないし、スペースもいらないのでオススメ」という言葉を耳にしたことがあろだろう。あの誘い文句、とてもよくできている。嘘ではないのだが、実態からはちょっと遠い。確かに飼育設備が最小限ですみ、丈夫なヒョウモントカゲモドキ1匹なら、メダカよりも飼いやすい側面もある。

 

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あのガッキーも飼っているぞ(爬虫類誘い文句テンプレ)

しかし、その入門種1匹で満足できる人は本当に少ない。手間がそれほどかからないことに加え、犬猫のようにわかりやすく懐かない爬虫類の場合どうなるか。「もうちょっと飼ってもいいかな〜」と思ってしまうのだ。結果、自宅のスペースの限界、割ける世話の時間のギリギリまで生き物の数は増えていく。紫外線や保温ライトが絶必の種に手を出したら(ほとんどの爬虫類に必要)電気代もエゲつないことになる。小さくたって犬と猫と同じように病気にもなる。手間はかかるし、お金もかかると思っておいた方がいい。

一例として、一匹の外来生物の侵入を家庭に許した結果、どうなってしまったのか我が家の場合を報告させていただきたい。

我が家では、ヒョウモントカゲモドキと同じくらい飼育が手軽だと耳にしたツノガエルを迎えた。

 

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こちらがそのアマゾンツノガエル

 

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ニョキっと生えたツノがカッコいい(触ると柔らかい)

 

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プラケースで飼える

ツノガエルをプラケースで飼いはじめてから5年後。現在の我が家がどうなってしまったかご覧ください。

 

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わしゃ飼育員か

我が家には現在、カエル1匹、リクガメ3匹、ヤモリ1匹、トカゲが3匹いる。気軽に長期間の旅行に出るのも難しいし、電気代もエゲつない。爬虫類飼育者が、ヒョウモントカゲモドキとかツノガエルを勧めてきたら、充分に警戒してください。その人はあなたの家を乗っ取り、家計を崩壊させようとしています。

 

………そろそろ「流行ってるみたいだし、ちょっと飼ってみようかな〜?」という方は脱落していますでしょうか。どこまでいっても業の深い趣味ではあるので積極的におすすめするわけにもいかないのです。ご了承ください。それでは!爬虫類の魅力を紹介させていただきます!

 

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爬虫類・両生類といっても、ありとあらゆる環境で暮らしている種類がいる。何を飼育するかによって得られる知識はそれぞれ異なるのだが、私の場合は、リクガメを中心に飼育して副産物的に得られたものがこちらである。なんでそんな知識が?と思われた項目もあるかもしれない。でもリクガメを飼ってる人からしたら「そうだよねぇ〜」と頷いてもらえる内容のはずだ。まずはリクガメを飼い始めた経緯から説明させていただきたい。

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リクガメとの出会い

 

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インドホシガメ。甲羅に放射状にひろがる星模様が特徴

ツノガエル、顔つきもヌボーっとしていて魅力的なのだが、エサをトラバサミみたいに待ち受ける生き物なので、いかんせん動きが少ない。ちょっと生き物を飼っているという実感が乏しい(上級者の方は、ずっと土の中に潜っていて目視できない生き物を飼っていたりする。まだまだ修行が足りない)。もうちょっと犬猫っぽく飼えるのいないかな〜。でも、エサがコオロギはキツイな〜と思って手を出したのが、リクガメであった。ちなみにauのTVCMで、浦ちゃんと登場するカメたちは、リクガメである。「あ、あのかわいいやつね」と思ってもらえたでしょうか。

 

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リクガメはほぼ草食

ノソノソと動き回る姿もユーモラス。舌を出してエサをモゴモゴ食べるところなんてずっと見ていられる。

 

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日本でみかける水棲のカメと比べるとかなりのんびりしている

 

甲羅があるので、他の爬虫類よりもカルシウム要求量が多い。手に入りやすいエサでいうと、小松菜とチンゲンサイがレギュラー。野菜にカルシウムやビタミンDの粉末をふりかけて与える。

 

自然と野菜の栄養価に詳しくなる

 

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エサ二代巨頭

リクガメは野生化では、地面に生えているたくさんの種類の植物を食べている。同じものばかり与えると飽きてしまうので、できるだけいろんな種類の野菜を与える。柔らかい葉物が好きなので、サラダ菜やモロヘイヤ、大根の葉なんかもあたえるとムシャムシャ食べる。デザート的にトマトなどを与えてもいい(ヘタはとりましょう)。市販のフードもよく食べるのだが、小さい頃に栄養を与えすぎると甲羅がボコつくとの噂もあるので控えめにする(ペットとしての歴史が犬・猫ほど長くないので何が真実かわからないことも多い)。エサをあたえるのは楽しいのだが、いかんせんエサ代がかかる。野菜の端切れをあげるにしても限界がある。

 

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そこで、登場するのが雑草である。

 

春になるとリクガメが好物の雑草がわらわらと生えてくる。タンポポ、オオバコ、クローバー、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウ、アキノエノコログサ、ナズナ、シロツメクサ、ノゲシ、ホトケノザ、ヨモギ。雑草を探しに公園などをまわる。排気ガスなどで汚染されている可能性もあるので、よく洗ってからあたえよう。リクガメは雑草を一心不乱にほおばる。野菜には少ない繊維質が豊富だったりするのだ。

 

雑草の知識も自然と身につくぞ

 

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大量にゲットしたタンポポ

 

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エサ代も浮いて一石二鳥

外を歩いていても、「あ!滑り台の下に、チンゲンサイが生えてる」みたいなテンションで雑草を探すことができる。

 

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でかい雑草が生えてると興奮する体に

「エサやりも楽しそうだし、かわいいし、リクガメいいじゃん」と思ったあなた!完璧に飼いやすい爬虫類なんていない。必ず一長一短ある。

インドホシガメは、大きく個体でも30cm程度とそこまでは大きくならない。しかし、リクガメはめちゃくちゃ歩き回る生き物である。1日数キロ以上歩くとも言われている。ケージの大きさはインドホシガメサイズでも最終的には90cm以上必要だ。この大きな飼育ケージが必要なことがリクガメの難点である。ひとつのケージで多頭飼いしている例もあるが、気の弱い個体が足を齧られて怪我することもある。基本はひとつのケージに1匹がいい。ゴールデンレトリーバーが寝られるサイズのケージが必要と覚悟しよう。

 

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大型のリクガメだと、部屋か家を与える覚悟が必要


お手軽なツノガエルやヒョウモントカゲモドキと比較すると、紫外線を与える必要があるし、温度や湿度もよりシビアに整える必要がある。日本と異なる環境の生き物を無理やり飼うので当然といえば当然なのだが、思いのほか難しい。

ガラスケージを用意して、床材のハスクチップ(ヤシの実を細かく砕いたもの)を敷く。続いて、紫外線ライトと保温ライトを、点灯時間と温度を自動調整してくれるサーモスタット(1万円くらいする!)につないで設置する。ここまでは教科書通り。

 

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一気に飼育設備がややこしいものに


リクガメは、生体環境が多湿と乾燥と2タイプ別れる。インドホシガメは多湿タイプ。

 

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湿度は霧吹きで調整する(加湿器も便利)

 

教科書通りに飼育設備を整えていたのだが、前住んでいた家が築60年の馬小屋だったので(退去する時に元馬小屋だった話を聞かされた)、あっという間にケージ内の熱が逃げていった。保温器具を増やしたり、保温シートを巻いたりしてはみたものの、気づけば、リクガメが「クシュン」とくしゃみをして鼻水を垂らしていた。

 

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リクガメの鼻水は危険


一見、微笑ましい光景にも見えるのだが、リクガメの場合は気管に深刻なダメージを受けている状態。急いで動物病院に連れていく。その後、リクガメは投薬のおかげで、少しずつ元気を取り戻した。飼育設備をみなおしたこともあり、迎えた時に217gだった体重は、一年で倍となり、その後も順調に大きくなっていった。

ケージは、リクガメのサイズにあわせて大きくして行く必要があるが、市販されている大型ケージは高い。そんなわけで、爬虫類飼育者にはケージを自作する文化がある。ここで日曜大工の技術が得られるわけである。

 

木工するとさらに楽しい

 

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ホームセンターでケージの寸法通りに切ってもらう

 

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こちらがその完成したケージ


水をふきかけても腐りにくいように、床面はコンクリート枠に使われるコンパネを使った。床部分は手前に引き出せるようになっており、床材の交換が簡単だ。塗料は、生体に影響が少なく耐水性も強い柿渋を使い、仕上げに蜜蝋を塗った。

 

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蜜蝋はカメの甲羅にも塗った(テカテカになる)

 

先人たちの工夫をどんどん取り入れていくのも楽しい。ケージだけずっと作っていたいくらいだ。が、しかし、完成してからいろんな問題点が見えてきた。

ケージの寸法はなんとなく大きめと決めてしまったが、床面を歩きまわるリクガメの場合、そこまで高さはいらない。無駄に高さがあると暖かい空気が上に逃げてしまい、底面は冷えてしまう(手を入れるとその温度差にびっくりする)。仕方がないので、ケージを上下二段に分け、下段でリクガメを飼育する。飼育者の中には、断熱材としてスタイロフォームを壁に仕込む人もいるようだ。さらに、冬場乾燥するとケージの木材が萎んで隙間だらけになり、暖気も湿気もその隙間から逃げていった。仕方がないので隙間をパテで埋める。ケージの修正をしていくなかで、ふと「これ、家のミニチュア作ってるのと同じだ」ということ気づいた。

 

断熱の仕組みを理解する

住んでいた馬小屋は、二階建ての一軒家だったのだが、夏は、熱気が二階に全てたまって、サウナ状態になりまともに使えなかった。ケージで熱が上部に溜まった現象と同じである。さらに、その馬小屋は、ところどころに隙間が空いていた。(「あれ?天井の一部が青いな」と思たら、空だったことがある)外壁に断熱性がほぼなかったので冬場はエアコンをつけても暖気がとどまらなかった。こちらもケージで起こった現象と同じである。

リクガメに限らず、どうやって「保温」するかは、変温動物である爬虫類を飼う上で避けられない問題だ。銀マットをガラスケージにまく人もいれば、ケージを置いているアルミラック全体を透明なシートで覆う人もいるし、エアコンで一括管理の人もいる。

断熱の大切さを身をもって知ったので、馬小屋から引っ越した今は断熱材がきちんと入った家に住んでいる。爬虫類飼育はいろんなことを教えてくれる。

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そして、突然のワシントン条約

 

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200gから1245gとなった我が家のカメ

インドホシガメはすくすくと順調に育っている。ゆくゆくは繁殖をと夢を見て、爬虫類イベントで雄を探しはじめる。しかし、なぜかなかなかインドホシガメ自体を見かけない。それだけではない。イベントのたびに値段が上がっていくのだ。私が購入したインドホシガメは、2〜3歳くらいで2万円だった。しかし、今は、生まれたてのピンポン球サイズでも5万を超す。なぜだ!と思ってSNSをパトロールすると、何やら近々CITES  I類入りするという噂が拡がり値段が高騰していることがわかった。

 

CITESってなに?

CITESと言われても「?」であるが、調べてみるとワシントン条約のことであった。ワシントン条約の正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約」。英語の頭文字をとって「CITES」と呼ばれている。自分の人生とワシントン条約が関係を持つ日が来るなんて。

しばらくして、インドホシガメは、国際希少野生動植物種 CITES I類に指定されることが正式に決まった。「え!なになに!?」とあわてていたら、イベントで売り場のおっちゃんに「いま買わんと手の届かん値段になるよ」と囁かれ、生まれてすぐのインドホシガメ(性別不明)を迎えた。

 

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PS5よりも高かったカメ(32g)

しかし、おっちゃんの予言は正しく、今、インドホシガメは原付より高い。おそるべき亀バブル。ほんの数年前まではリクガメの代表みたいな感じだったのに。CITESには、Ⅰ~Ⅲの三つのレベルが設定されており、それぞれ規制の内容が定められている。Ⅰに掲載された種は、すでに絶滅のおそれがあり、一番厳しい「取引禁止」である。

 

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左列が一類である(経済産業省のHPより)

 

「え?うちのカメ、オランウータンとかゴリラとかパンダと同じなの!?」びっくりしてしまった。とはいえ、法令施工前にルールに則り取得した生体に関しては、今後も飼い主が買い続けるぶんには問題はない。しかし、インドホシガメの寿命は25年〜30年。下手すると飼い主よりも長い。CITESに登録をしておかないと、カメを売るのはもちろん、あげる・預ける・繁殖もできない。違反すると、5 年以下の懲役若しくは 500 万円以下の罰金又はこれらの併科。

 今後、国外から入ってくることがないということは、国内に今いる生体を繁殖させて増やすしかないということだ。国内で繁殖が進めばいつの日かインドホシガメが身近な存在に戻るかもしれない。我が家のカメを繁殖ができない個体にはしたくない。事実上、登録は必須だ。

 

登録ってどうするの?

 

じゃあ、登録って何をするの?という話だが、まず爬虫類を受け付けている動物病院で、カメに個体識別用のマイクロチップ(スパイ映画でよく見るヤツ)を専用の注射器で埋め込んでもらう。左後ろ足に埋めてもらった。

 

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専用の機械で読み取ると、リクガメの個別番号が表示される

そして、固体の写真と、サイズやマイクロチップの番号や入手先などの情報を記した書類を送るという工程が必要になる。

 

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こちらがその関連書類

マイクロチップの埋め込みと登録にもまたお金がかかる(2万円くらい)。高い!……高いのだが、私のように飼いたい人がいるから今、野生の個体が減っているのだ。仕方ない。すみません。

書類の申請もそこそこややこしい。登録を受け付けている自然環境研究センターのサイトにも、「事前にお問い合わせなく書類を送付されますと、書類を返却させて頂く場合があります」という一文が刻まれている。いきなり見当違いの書類を送りつけてしまう人も多いのだろう。実際、公的な書類申請がすこぶる苦手な私は、電話で丁寧に教えていただけなかったら厳しかった。

 

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登録が完了すると登録票が送られてくる(嬉しい)

上野公園のパンダも同じような登録証があるのだろうか。登録は5年ごとに更新が必要。免許みたいだ。更新を怠ると無免許カメが爆誕してしまう。気をつけなければ。

これはすごくレアケース、というわけではない。だって、インドホシガメは、ちょっと前まではホームセンターのペットコーナでも見かけたことがあるくらいメジャーなカメだったのだ。繁殖で増やされている人気種はまだしも、野生個体の輸入に頼っている種類ならば、十分に起こりうることだと思った方がいいと思う(ちなみに飼っていたパンケーキガメも同時にCITES I類入りして踏んだり蹴ったりでした)

あらためて業の深い趣味である。気軽に飼い始めたら予想外の出費や手続きが必要になる可能性もあると考えた方がよさそうだ。


爬虫類を飼ってみたい人の背中を押したり、引いたりしてみて

 

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笑ってるように見えてかわいいぜ

爬虫類飼育は、一筋縄ではいかない。飼いはじめは、用意した環境が適切なのか今いち手応えがないし、死ぬ直前まで不調を隠そうとする彼らの体調の良し悪しを見極めるのはとても難しい。でも、しばらく飼ってくると、無表情に見えた彼らのなかにも確かに「表情」があることに気づく。それは顔つきの話だけではなくて、立ってる時の姿勢だったり、色味だったり、エサの食べ方だとかいろいろあるのだが、少しずつ「今日、元気だな〜」みたいなことがわかるようになる。得体の知れない恐竜の子供を拾ってきて世話するとしたらこんな感じだろうか。爬虫類が発する無言の声を解読しないとなんともならない感じが楽しい。自分で楽しさをなんとか見つけ出していく感じ、これこそが爬虫類飼育のたまらない魅力なのではないだろうか(インド旅行に近いかもしれない)

 

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