軍団とはなにか?
軍団を作るにはどうしたらいいか。私達はまず軍団とはなんであるかその本質に着目した。それは「軍団らしさ」とも呼べるものである。
私達が考える軍団らしさとは「山型に並んで向こうからやってくる」である。どういうことだろうか。まずは一人でやってきたものが上記の写真である。対して、軍団はこうである。
軍団がわかったので軍団化キットを製作する
こちらの写真をもとに筆者の周囲に「これは軍団であるか?」聞いて回ったところ「軍団である」「軍団のようだ」と概ね軍団らしさを感じていることがうかがえた。
ここで、暫定的ではあるが、軍団らしさとは「山型に並んでやってくること」であるとしておこう。
であるならそれが人でなくても良いのではないだろうか。一人で誰でも簡単に軍団化するキットのようなものを作ればよいのではないか。
私達は下記の写真のような装置を製作した。
これはアカマツ材を直角に並べ、市販の台車にクランプで留めたものである。各柱の上部にはプレートを設置して物が載せられるようになっている。
中央にはこれを牽引する人物が来る。すると人物を中心として各柱が山型に並んでやってくるように見えるはずである。
実際に軍団化するのだろうか
ここまでの話は「(人でなくても)山型に並んでいれば軍団である」という仮説に基づいている。まずはこれを実証しなければならない。
そこで今回の被写体であるデイリーポータルZの安藤昌教氏に協力してもらって、20m離れた地点Aからカメラのあるこちらの地点Bまでをこの軍団化キットを牽引して歩いてもらった。
その写真がこちらである。
人でなくても軍団化した
撮影者によるとカメラのファインダー越しに「軍団がやってきた」ことを感じたという。成功である。
ちなみに今回安藤氏が牽引しているのは彼の好物でもあるメロンパンである。軍団を作るなら好きな物で固めたいという被写体の希望によるものだ。
効果音をつけた映像で見るとより顕著である
予想される反論はこうだろう。
・軍団ではなくメロンパンの行商ではないか
・軍団は個性があってこそではないか
・メロンパンばかりだと栄養が偏りそうだ
・頭が悪そうだ
この中から「個性」という点に着目した。たしかに特撮の戦隊ものでは5色に分かれ個性を発揮する。軍団らしさとは各個性に宿るかもしれない。
その点を改善した新たな軍団がこちらである。
個性豊かな炭水化物軍団
今回安藤が率いているのは炭水化物を多く含有する食べ物である。軍団として信頼がおけるのはこうしたものだという被写体によるセレクトである。
個性が軍団らしさをもたらす
たしかに各個性により軍団らしさが出てきた。だがこうした炭水化物軍団にも異論は予想される。それは以下のようなものだろう。
・おかずはないのか
・栄養が偏ることには変わりない
・カロリーはあるのだが味が単調である
・もっと食に楽しみがないだろうか
・注意してくれる大人はいなかったのか
・安藤は何と戦おうとしているのか
・頭が悪そうだ
個性豊かにといったものの、楽しさに乏しいのはたしかに。戦隊ヒーローなどで軍団が人気を博すのも、個性が豊かかつ楽しいからであろう。牽引する物を変更したものが以下の写真である。
華やかさが上がる
炭水化物をお菓子に変えたところ、軍団の華やかさは上がった。だが軍団らしさにおいてはそれほどまでの変化は見られなかった。お菓子の軍団に意見が上がるとしたらこのようなものだろう。
・お菓子のセレクトが気になる
・お小遣いを渡されて何も考えず目についたお菓子を買ってないか
・軍団らしい統一性があってもよいのではないだろうか
・この男の夢みたいに見えてその夢の小ささが不憫だ
・頭が悪そうである
この中から「統一性」に着目した。個性と統一性を両方備えることも可能だろう。たとえばそれは軍団における制服のようなものである。下記の写真を見ていただきたい。
ある程度の統一性は軍団らしい
同種のお菓子パッケージは制服のようでいて、たしかに軍団感は高まった。そもそもこの軍団感は見た目によるものなので、見た目の統一感は効果が大きい。かといって以下のような疑問もある。
・人間がベビースターと等価値でよいのか
・中央の人物の人権はどこにあるのか
・そもそもさっきから栄養がないのでは
・軍団としては安くないか
・頭が悪そうではないか
軍団として関係はないかもしれないが、さきほどから頭が悪そうに見えるという視点がある。これは栄養、なかでも人間が快楽と感じる糖質、脂質以外のものが欠落しているからだろう。
軍隊とは禁欲的なものであるし、概念としての軍団もそうであるかもしれない。食べ物の中でも人間の快から遠い、禁欲的なものを軍団に並べたものが下記の写真である。
きのこなら食えるという自信
自信のようなものを感じる。それが軍団らしさを高めているようにも見える。「おれ、きのこなら食べられる」写真から被写体のそのようなセリフが聞こえてくるようだ。栄養をとれと言われてきのこを掲げる自信である。
さてこの軍団にも反論は予想される。それは以下のようなものである。
・野菜をとれ
・軍団が貧弱だ
・頭が悪そうだ
・自信満々さが余計に頭が悪そうだ
・食べ物を引き連れている時点で頭が悪そうだ
自信は頭の悪そうさにつながる。それは軍団感を損ねかねない。その点を次の写真では大きく改善した。こちらである。
見た目としての知性は大きく改善するかに見えた。しかし選んできた書籍が入門書が多かったからか、新古書店の100円コーナーから用意したのが悪かったのか「頭が悪そう」という印象は拭えなかった。
しかしこれはこれで軍団は軍団である。統一感を持ったものを山型に牽引すると一定の軍団感が得られることがわかった。
賢く軍団であれ
こうした軍団化キットを製作するにあたり少しのメモを残しておく。
170センチを超える男性が使用する場合、横幅は最低でも150センチ以上はあった方がよい。そうするとかなり大型になってくる。また、路面の凸凹から来る振動も問題である。タイヤはできるだけ大きいもの、空気が入ったものが望ましいが調達も難しくなってくる。室内などの平滑な床面で行うことが望ましいだろう。色はできるだけ塗った方がよい。軍団感は見た目だけの話なのでもっともらしさをできるだけ獲得したほうがよい。
最後になったが本稿において安藤氏は何も知らされておらず、こちらが全て用意したものを使用していただいた。唐突な申し出に協力していただいた安藤昌教氏に謝辞を述べたい。
映像集を資料として添付しておく