教わったレシピを試してみる
さて本番。今度こそ莢をしごいて食べるべく、できるだけ硬そうなやつを選んで、香取さんの料理に挑戦だ。
SNSではレシピまで書いていたなかったので、適当に勘で作ろうと思ったのだが、事前に香取さんに記事にしたい旨を伝えたところ、特別に作り方の詳細教えてくれた上に公開してもOKとのことだった。ありがとう、香取さん。
料理名は「グリンピースの丸ごと炒め(サブート・マタル・キー・サブズィー)」で、北インドのデリー周辺でよく食べられている家庭料理とのこと。莢ごと調理するため、これを作るときはきれいな莢だけを拾い選ぶそうだ。
材料は無農薬のグリンピース20莢くらいに対して、サラダ油少々、ニンニクとショウガ各小さじ半分、クミンシード小さじ1、ヒーングパウダー耳かき山盛り1、ターメリック小さじ1/3、レッドペッパー小さじ1/3、コリアンダーパウダー小さじ2/3、塩少々、チャートマサラ小さじ1。
チャートマサラってなんだっけと思ったが、そういえば先日インドにいったとき、「フルーツにかけるスパイスなんてあるんだ!」と驚いて買ったのを思い出した。
原材料を確認すると、ドライマンゴー(おそらく摘果される酸っぱい青いやつ)やザクロの種、硫黄の香りがする岩塩、クミンやチリなどのスパイス各種など。
酸っぱくて臭くて(いい意味で)スパイシーな粉末で、帰国後にパッケージの写真の通りフルーツにかけてうまいうまいと食べていたのだが、まさかグリンピース料理にも使えるとは。
作り方は以下の通り。材料を揃えるのがちょっと面倒かもしれないが、香取さんがわかりやすいレシピとして成立させてくれているので(レシピ作りは特殊能力)、調理自体は難しくない。
大切なポイントは、教えていただいたスパイスの組み合わせ、そしてじっくり蒸し焼きにする調理法。グリンピースの莢にはうま味(グルタミン酸)が豊富に含まれており、茹でるのではなく蒸し焼きにすることで、その出汁をすべて生かすことができるそうだ。
グリンピースから出てくる水分で蒸し焼きにするのが調理のポイントなのだが、我が家のフタはちょっと隙間が空いてしまっているので、様子を見ながらちょっとずつ水を加えて焦がさないようにした。
ものすごくうまいが、莢ごと食べてしまった
もちろん手食するのだが、スパイスで指が汚れていく感覚が懐かしい(にわかインド好き)。
ハエは脚の先で味を感じ取るというが、私にもその遺伝子が組み込まれているのか、この指先がすでにこれはうまいと感じ取っている。
口に運ぶと最初に触れた唇でもうまかった。たっぷりと振りかけたチャートマサラに含まれているマンゴーの陽気な風味が、もうたまらんのです。
そして中身をしごき出すと、甘味のある汁と共にプクプクの豆がポンポンポンと弾け出す楽しさたるや。
まぶされたスパイスは莢の外側なので食べる部分ではないのだが、莢の頭を摘まんで前歯でしごいて食べるので、結果としてそのほとんどを食べることになる。
そのエキゾチックでフルーティーで甘酸っぱい味付けと、しっかりと成熟した甘いグリンピースが持つ味の膨らみや青臭さとのコンビネーションが素晴らしい。
ただ莢の内側に僅かにあるトロっとした部分を食べようとしても、やはり品種の違いなのだろうけど薄くて硬いシート状の膜がないため、どうしても筋だけを残して莢が口に入ってしまう。それが意外と柔らかくておいしかったりする。
あんなガチガチに育ち切った莢だったが、こうしてじっくり蒸し焼きにすると、筋以外はおいしく食べられてしまうようだ。
これはこれで可食部分が多くて良いことなのだが、やはり莢の内側だけを上手にしごいて食べてみたかった。来年はグリンピース用の品種を植えなければ。
カラスノエンドウでも試してみる
ここからは余談になるのだが、もっと莢が固ければ、あの香取さんがやっていた透けるほど薄く残す莢の皮一枚を残す食べ方ができるはずということで、畑の横に生えていたヤハズエンドウ(通称カラスノエンドウ)を試してみることにした。
これまで何度かおいしく食べることに挑戦してきた野草だが、豆だけを食べるには小さすぎるし、莢ごと食べるには固すぎる難敵だ。
このために調理するのは面倒だし少量すぎるので、上記の育ちすぎたサヤエンドウ料理の第二段(一回目は莢ごと食べてしまったので、数日置いてさらに固くなった莢を集め直して試したけど結局莢も食べてしまった)に混ぜて調理したのだが、これがなかなかよかった。
さすがに莢が固すぎるけれど、だからこそ前歯でしごきがいがあるというもの。銃の弾倉から一発ずつ弾が出てくるように、パパパパパと小さな豆が飛び出してくる。
そして残った莢を前歯で強くしごけば、ごく僅かなだがうま味が染み出てくる。このしぐさがしたかったので満足だ。

