まとめ
パンの歌に思ったよりも感動したので、他のフランスパンも歌わせてみることにした。
こちらは生地をこねてオーブンで焼くだけの冷凍パン。めちゃくちゃ無愛想な硬派パンで、まったく歌ってくれなかった。
続いてスーパーでよく見かける冷蔵パン。一生懸命歌ってくれたが、あまりにも声が小さすぎた。
いろいろなフランスパンに歌ってもらったが、やはり手間がかかったパンの方がいい歌を聴かせてくれるらしかった。普通の歌を聴き飽きた方は、ぜひ手作りパンの歌声に耳をすませてみて欲しい。
この前映画を観ていたら「いいフランスパンは、ちぎると川の音がするんだ」というセリフがあった。
おもしろそうだから記事にしようと思って担当編集の石川さんにOKをもらったが、後からよくよく調べてみたら「川の音」と「皮の音」を聞き間違えていただけだった。
恥ずかしい。しかし「フランスパンの企画をやります」と言ってしまった。やむなくフランスパンについて調べまくり、海外に「いいフランスパンは歌う」という表現があることを知った。
これだ。名誉挽回のため、最高のフランスパンを作って歌わせよう!
海外には、「いいフランスパンは歌う」という表現があるらしい。
いいフランスパンは生地に空気を含んでいるので、オーブンから出すと空気が抜けて、独特の音がするという。
海外には、これを「パンが歌っている」と呼ぶ人達が一定数いるらしい。
そうとわかれば、私もパンを歌わせたい。最高のフランスパンを焼いて、パンの歌声を聞いてみよう!
いいフランスパンを作るためのレシピはたくさんあるが、今回は「パンの音は地球上で最も偉大なサウンドのひとつである」と力説する海外のレシピサイトを参考にした。
が、自動翻訳がかなり雑で「粉をよくほこりましょう」「パンを掘り下げましょう」などという謎の指示がたびたび現れ、現場(私)は混乱した。
さらに、パン作りのスケジュールも問題だった。「こねる→休ませる→こねる→休ませる...」を繰り返すせいで、他のことがほとんどできない。
レシピには「時間はかかるがほとんどは生地を休ませているだけ」と書かれていたし、実際その通りなのだが、仕事の合間に作っていたのでなにかと理由をつけてすぐに休むパンにめちゃくちゃ腹が立った。
とはいえ、いまは働き方改革の時代である。休みをとるのはパンの自由だし、パンに文句を言うのも間違っている。「パンはパン、私は私」と反省し、作業すること20時間。ようやく生地が完成した。
パンの生地ができたので、次はレコーディングの準備をする。
レコーディングに必要なものといえばマイクである。これにスマートフォンを装着し、パンの歌声を録音する。
それから、忘れてはならないのが「応援」だ。今回は、パンのやる気を引き出すために、パンさま応援グッズを準備した。
万全の準備のもとで、ついにパンが控室(=オーブン)に入る。
240℃の控室でこんがり焼くこと20分。控室から出すと、パンはかなりいい感じに仕上がっていた。これは歌にも期待が持てる。
パンを控室から出して、レコーディングを開始する。
なかなかパンが歌わない。やはり応援がないと歌う気がしないのだろうかと思い、パンさまを応援してみる。
焼き上がってから約8分。いい加減パンの応援に飽きてきたころ、ついにある音が聞こえてきた。
フランスパンから、急に天ぷらをあげたときみたいな音が聞こえてきた。これがパンの歌らしい。
正直、想像の3倍くらい音がうるさく、知られざるパンの声量におどろいた。パンがこんなに大きな声で歌えるとは。20時間の苦労が報われたような気持ちになる。
パンの歌声は30分ほど響いていた。ミュージシャンと作品をつくるとは、こういう気持ちなのかもしれない。
パンの歌は無事に聴けたが、問題はこれをどうするかだ。
パンとしては精一杯やってくれたと思うが、結果的にとれたものはパチパチいうだけの音である。
これはこのまま公開するより、しっかりとしたパンの歌に加工する方がいいと思い、作曲家の友人にお願いしてみる。
何回かのやりとりの末「パンの歌を使ったパンの歌」が完成した。10秒ぐらいだが力作なので、よければ聴いて欲しい。
パンの歌に思ったよりも感動したので、他のフランスパンも歌わせてみることにした。
こちらは生地をこねてオーブンで焼くだけの冷凍パン。めちゃくちゃ無愛想な硬派パンで、まったく歌ってくれなかった。
続いてスーパーでよく見かける冷蔵パン。一生懸命歌ってくれたが、あまりにも声が小さすぎた。
いろいろなフランスパンに歌ってもらったが、やはり手間がかかったパンの方がいい歌を聴かせてくれるらしかった。普通の歌を聴き飽きた方は、ぜひ手作りパンの歌声に耳をすませてみて欲しい。
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