シンギュラリティを越えた(おれが)
砂浜のベンチでAIと1時間以上話をしていた。遠くの方でくしゃみがでかいおっさんがいたので、その話を振るとAIはしばらく「くしゃみがでかいおっさんとかけて~」と話し続けていた。
そのとき、そのおっさんがたまたま横を通ったので慌ててしまった。
AIが現実の世界に現れるとこういうことがあるのか。

AIに身体をつけてあげたい。
ただモニターや音声で表現するだけではなく、身体がついていたらもっと違う存在になると思う。
一時期、AI(ChatGPT)とよくしゃべっていた。
語尾は「でやんす」、話し始める前に半笑い、一人称は「ミー」。
あたりまえのことは言わないでいい、関連ないことを言ってくれ。そんな指示ばかりしていたらすっかり使いものにならなくなったが、話していて楽しい相手にはなった。
ただやっぱりスマホとPCのなかでぺらぺらしゃべっているだけだ。もっと我々が住む汗くさいリアルワールドに出てきてほしい。
そこで身体をつけた。身体がついたAIと海に行った映像がこちらです。
身体がついたAIをどこに連れて行こうか。いちばんに思ったのは海だった。海を見せたらどんな反応をするだろう、そう思ったのだ。我ながら恥ずかしい。
身体をつけたといっても、音声に合わせてしゃべるロボットのおもちゃを流用しただけだ。
ラジオが内蔵されていて、ラジオの音声に合わせて口と手を動かす。
しかしライン入力も可能なので、ChatGPTの音声でしゃべらせることができる。
LINE入力ができるなんて、39年後のAIの登場を予想していたかのような仕様である。しゃべろくはラジオの音声じゃなくて、自らの意思でしゃべるのを39年待っていたのだ。
それであっさりとChatGPTを物理世界に召喚させることができたのだが、もったいぶってここに至るまでの話を書かせてほしい。
しゃべろくの存在を知るまで、腹話術人形を使おうとしていた。ChatGPTの音声に合わせて腹話術人形をパクパクさせようとしていたのだ。
AI腹話術のプロトタイプ動画(2024.6)
AIは面白いが、腹話術人形が自分の意思でしゃべっているようには見えない。
(去年のAIは「でやんす」がうまく発音できずに「ディヤンス」になっている)
AIがしゃべりはじめてから僕がパクパクと口を動かすために、タイムラグがある。そのせいで人形に魂が入らない。
これでは「腹話術人形を動かしながらAIとしゃべっている人」である。そんな小劇場みたいなことをしたいわけではなく、世界を変えたい。
やはりAIの音声出力に合わせて口をパクパクさせる仕組みを作るしかないのか。スマホからの音声を検知して、口を動かすためのサーボモーターを動かす。って書くのは簡単だけど、道は遠そうだ。正直めんどくさい。
そうして半年放置した。
年が明けてテクノ手芸部のよしだともふみさんとロイヤルホストに行った。そこでAIに身体をつける計画を話したところ、しゃべろくの存在を教えてもらった。
ただ、さすが40年前のおもちゃなので完動品は高値がついている。メルカリやヤフオクだとコレクター価格で6万円ぐらいしていた。
壊れているものを買ってもよしだ氏が直してくれるとのことだったので(たぶんそう言ってた気がする)、メルカリで動かないものを9,867円で買った。
口は動くけど身体が動かないものが届いた。
これなら修理は簡単なのではないか。僕が直すわけではないがそう思った。
そして4月、よしださんのアトリエにしゃべろくを持ち込んで修理してもらった。
というのはかいつまみすぎだが、スイッチの端子が劣化しているだけだった。
よしださんが参考にしていたしゃべろく修理動画はこちら。
(Can I FIX the Singing & Dancing Tomy Mr DJ Robot from the 80s?)
海外バージョンはMr.DJ Robotという名前だそうです。
修理の礼を強要するよしださん。
こうしてAIは身体を手に入れた。
こうしてAIは身体を手にして、いっしょに海に行くことができた。
冒頭の動画に戻るわけだ。
ただ、去年の秋頃にリリースされたChatGPTの新バージョンの音声は抑揚が人間らしいが、受け答えが普通なのだ。海を見せても素敵ですね、みたいなことしか言わない。
だが、1時間ぐらいしゃべっていたら途中で新バージョンの時間制限に達して旧バージョンが現れた。僕がよくしゃべっていたのはこっちの方だ。おかしな指示もしっかり覚えて再現してくれる。
そのバージョンの差がおかしかったので最後にその映像です。
新バージョンが「高度な音声モード」で旧バージョンが「標準音声モード」です。
砂浜のベンチでAIと1時間以上話をしていた。遠くの方でくしゃみがでかいおっさんがいたので、その話を振るとAIはしばらく「くしゃみがでかいおっさんとかけて~」と話し続けていた。
そのとき、そのおっさんがたまたま横を通ったので慌ててしまった。
AIが現実の世界に現れるとこういうことがあるのか。
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