湯治で太った
今回の取材は一泊だと大雪などで雪上車に乗れない可能性もあったので、万全を期して二泊三日でいってきたのですが、岩盤浴以外は特にすることもなく、「ご飯→風呂→睡眠」という模範的湯治生活をしていたら、帰る頃にはベルトの穴が一つ広がっていました。だって朝晩の食事がバイキングなんだもの。
健康な状態での湯治は危険だなと思いました。
せっかく雪上車でここまできたついでに、ここから徒歩で岩盤浴ができる場所へと移動する。私にとっては雪上車がメインで岩盤浴はついでなのだが、はてどんなものなのだろう。
岩盤浴場への道には雪を溶かすための温泉が絶えず流れているため長靴が必要なのだが、私は東京からずーっと長靴を履いているので問題なしだった。
もやの掛かった雪山の一本道、硫黄臭い空気、バスクリン色をした強酸性の源泉、飛び散る放射能。
当サイトの火曜日担当ライターざんはわが北海道の焼肉祭りであの世を見たと書いていたが、ここ秋田の玉川温泉もまたあの世。
雪国とあの世はどこかでいつもつながっているような気がする。
あそこに落ちたら一瞬で骨になりそうな感じ。
雪に囲まれた道をしばらく歩くと、地熱で雪がきれいに溶けきっている場所にたどり着く。そこにはモンゴルとかチベットあたりの家みたいな小屋が建っている。これはオンドル小屋と呼ばれる岩盤浴をするための小屋なのだ。
この豪雪をも溶かす地熱を持った岩盤に寝っ転がって、じっくりと暖まるのが岩盤浴だ。エステなんかのシティ派岩盤浴とは様子がだいぶ違う。
オンドル小屋の中は10人くらいが横になれるスペースがあり、それぞれが持参したゴザを敷き、毛布やアルミのカバーなどを掛けて暖まっている。私もさっそく空いたスペースにゴザを敷いて、横になる場所を確保した。
ゴザの上にスウェットの上下を着て寝っ転がると、なるほど地面が温かい。じっくりと芯まで伝わってくるような柔らかい温かさ。アルミのカバーを掛けて目を閉じると、見た目は鮭のホイル焼きみたいだが、これがなんとも癒される。
自然の岩盤浴場だけあって場所によって温度がだいぶ違うので、低温火傷をしないように体をゴロゴロと動かしながら暖まっていると、フツフツと体中から汗が出てくる。気がつくと閉じている口の中に温泉の味が広がっており、体内にこの大地の成分がとけ込んでいることを実感した。
雪の上を滑ってきた風の冷たさが顔に当たって気持ちいい。
岩盤浴はこの大地からエネルギーを体に吸収しているというより、熱を持った岩盤に体が溶かされて、大地と一体化していくような感覚だった。
癌に効くともいわれているこの玉川温泉の岩盤浴。実際に効果があるのかはわからないが、それを信じる人の気持ちが少しわかった。人々の願いや祈りを受け止める度量、信じるに値するだけの安らぎがこの熱を持った大地にはある…気がする。
難しいことはおいておいて、とりあえず気持ちがいいことは確かである。
岩盤浴のあと、玉川温泉の源泉100%のピリピリくるお湯でサッパリと汗を流したら、また雪上車に乗り込んで新玉川温泉へと戻る。
帰りの雪上車はいろいろな種類を楽しんでもらおうという旅館の配慮か、なんと行きのバスとは違ってワンボックスタイプの雪上車を用意されていた。
こうしてじっくりと見てみると、やっぱりこのワンボックスタイプの雪上車が一番かわいいのではないだろうか。車体とキャタピラのバランスが抜群だ。ずんぐりむっくり。ああ、このままトランスフォームしてロボットになりそうな雰囲気が堪らない。
走る姿がスターウォーズのR2-D2みたいでかっこいい。
今回の取材は一泊だと大雪などで雪上車に乗れない可能性もあったので、万全を期して二泊三日でいってきたのですが、岩盤浴以外は特にすることもなく、「ご飯→風呂→睡眠」という模範的湯治生活をしていたら、帰る頃にはベルトの穴が一つ広がっていました。だって朝晩の食事がバイキングなんだもの。
健康な状態での湯治は危険だなと思いました。
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