特集 2023年11月29日

「JAPAN」で画像検索すると出てくるあの場所はいったいどこなのか?

ついにあの眺望が…… 

忠霊塔の後ろの丘に、展望デッキがあるらしいので、さらに階段を登ってみることに。 

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どわー、人がいっぱいだ!

展望デッキには、外国人観光客でごった返しており、英語や中国語が飛び交っている。忠霊塔周辺の桜が咲く時期などはもっと大変だろう。

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完全に写真撮影のための展望デッキとなっている

さて、ここまで来たからには、ぼくもあの景色の写真を撮りたい。撮影が終わった人に席を譲ってもらい、写真を撮る。

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はい、あの風景です

あいにく、空からぶあつい雲が垂れ込めており、富士山がほぼみえない状況である。もっと天気の良い日に来ればよかったと後悔しきりだが、仕方がない。

とりあえずあの有名な眺望の記念写真を撮ることはできた。

もし、晴れたときに来ることができた場合の眺望をAIに描いてもらったので、それでイメージを補完していただければと思う。

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AIに描いてもらった新倉山浅間公園からの富士山の眺望

鉄道写真マニアが、決まった構図で列車の写真を撮影するのが好きだということを言うのを聞いたことがあるけれど、その気持ちわからないでもない。

観光地の定番の構図の記念写真を撮るために、実際にそこに行き、自分のカメラで同じように撮る。というのは、それはそれでスタンプラリーのような楽しさがあるのではないか。観光は「知っていることの確認作業」としての楽しみもある。

そんなことを考えつつ、展望デッキを降りて、ふもとの神社まで下ると、ちょうど富士山の雲が晴れてきた。展望デッキでもうちょっと粘っていればよかった。

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展望デッキから降りると、雲が消え、富士山の姿かたちは見えるようになった

ちなみに、鳥居越しに富士山の写真がとれる中腹の広場もこの状態だ。

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外国人観光客でごった返す撮影スポット

富士吉田は、街のどこからでもかなりでかくてきれいな富士山が見えるので、新倉山浅間公園から駅までの公園でもない普通の道からでもなかなかよい写真が撮れてしまう。

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地元の人が草抜きするなか、観光客が道路からの見える富士山の写真を撮影している。ハレとケが混在している
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当たり前のこと何度も言うようで申し訳ないが、富士山ってほんとにいい形してるなっておもう。手前の電線がいいアクセントになる

SNSが普及してにわかに脚光を浴びる事となった新倉山浅間公園だが、富士吉田市内にある他の神社や史跡よりも、こちらの方が観光客に人気があるのは、由緒ある歴史的背景といった、コンテクストよりも、見た目のビジュアル、いわゆる「絶景」と呼ばれるような観光地の方が、人気が出やすいということなのかもしれない。

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一体いつからこんなことになったのか 

ところで、この新倉山浅間公園が、なぜこんなにも外国人観光客に人気の観光地になったのか。それは、2013年に富士山がユネスコの世界文化遺産に登録されたのが契機だ。

それ以降、年々外国人観光客増え始め、今ではツアーのコースに組まれるほどの観光スポットになった。つまり、ここ10年ほどのことで、展望デッキが整備されたのも2020年と令和になってからだ。

では、新倉山浅間公園の眺望が、海外の人に知られるきっかけとなったのはなにか。それは2015年ミシュランの旅行ガイドブック「JAPON」(仏語版)と「JAPAN」(英語版)の表紙の写真として使われたのがきっかけのひとつと言われている。

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Michelin LE GUIDE VERT『JAPON』2015(仏語版)の表紙

おそらく、それ以前にもこの風景が使われているところはあったかもしれないが、旅行ガイド本の表紙の写真として使われたのはインパクトがあったようだ。

新倉山浅間公園からの眺望が表紙となっている2015年のミシュラン旅行ガイドブック『JAPAN』(英語版)を、青山の旅の図書館に出向いて内容を確認してみたが、表紙で新倉山浅間公園の写真は使われているものの、本文ではまったく紹介していなかった。

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Michelin THE GREEN GUIDE『JAPAN』2015(英語版)の表紙

ちなみに、アメリカの旅行ガイドブックとして著名なロンリープラネットだが、こちらのガイドブックも新倉山浅間公園の情報が載っているかどうかを、2015年版、2017年版、2019年版、2021年版の4冊で調べてみた。

ロンリープラネットは、元々テキストメインのガイドブックで、写真画像があまり多くないため写真は載っていなかったが、2019年版から「Fuji‐Yoshida(富士吉田)」の項目に「churei-to Pagoda(忠霊塔パゴダ)」として紹介されていた。

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『Lonely Planet JAPAN』2019より

紙媒体のガイドブックでは、新倉山浅間公園がビュースポットとして紹介されるのが若干遅いようだ。仕方ないことだが、情報の遅さは否めない。

とはいえ、新倉山浅間公園がここ10年ほどで急速に、ガイドブックへ掲載されるほどの人気観光地となったということはわかるだろう。

さて、日本語のガイドブックはどうだろう。
『るるぶ富士山』という富士山周辺の観光ガイドブックがあるが、こちらにいつ頃から新倉山浅間公園が載っているのか、調べてみた。
旅の図書館で保存しているいちばん古い2017年版の『富士山』から、2018年版、2020年版、2022年版の表紙を見比べてほしい。

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2017年〜2022年までの『るるぶ富士山』の表紙

2017、2018にはなかった新倉山浅間公園の眺望が、2020年には表紙に登場、2022年では真ん中の下のけっこう目立つところにデーンの載るようになった。

観光スポットを紹介するページでの扱いもみてみよう。

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2017年〜2022年までの『るるぶ富士山』内での新倉山浅間公園の紹介

本文の方では、2017年から掲載されているものの、2018年までは小さく紹介されていたものが、2020年には真ん中にデカく、2022年版ではついに1ページ全部使って紹介されるという出世ぶりだ。

るるぶは比較的早くから新倉山浅間公園の眺望は紹介していたが、近年その比率はかなり大きくなっているといえる。

やはり「映える写真」が撮れる観光地の人気が高まっているということなのかもしれない。


忠霊塔だけじゃなく……

外国人観光客になったつもりで考えると、新倉山浅間公園は、東京から日帰りで行けて、登山をせず(多少急な階段は登るけど)とも、富士山の「映える」写真が撮れるうえに、趣のある神社もあって、観光地としてうってつけなのかもしれない。

ただ、富士吉田市の報告書などを読むと、新倉山浅間公園を訪れた外国人観光客は、そのまま東京に帰ってしまうことが多いという。

富士吉田には、歯が折れるかと思うほど、かったい「吉田のうどん」(美味い)など、おもしろいものがまだまだあるとおもうので、外国から来た人たちに、忠霊塔だけでなく、そういったものもぜひ知ってほしいところだ。

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