ゲームのおもしろさに改めて気づいた
「懐かし〜」だけで終わると思ったのだけれど、予想以上に自分の中で様々な感情が沸き立って驚いた。
20年という長い時間の中で、兄弟の関係が昔より良くなっていることがなによりもうれしい。
あと「2〜3時間で撮影終わるから」と兄に言っていたのだけれど、なんだかんだ8時間くらいずっとみんなでゲームやっていた。
また20年経ったらやりたい。
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僕は4兄弟の次男なのだが、小学生の頃は「兄がゲームをやっているのを見る」ことが多かった。
一人プレイのゲームは基本的に兄が優先だった。多分、兄や姉がいる人にとってはあるあるだと思う。
大人になってからは自分で好きなものを買えるようになったので、わざわざ兄がゲームをしているのを見ることもなくなった。
じゃあ逆に大人になった今だからこそ「後ろからゲームを見る」を体験してみたらどんな気持ちになるのだろうか。
僕は兄弟が好きだ。爪の垢を煎じて飲むくらいなら爪をそのまま飲みたいと思うくらいには好きだ。兄とは結婚できるし、弟は家で飼いたいくらいかわいい。
今はシンプソンズくらいファニーな家庭なのだけれど、幼いときは2歳上の兄とくだらないことでよくケンカしていた。(弟は10歳離れているのでほぼケンカがなかった)
ケンカの原因は山ほどあるが、不思議なものでやはり兄弟というのは気づいたら兄に屈服している部分がある。いつからか自然と逆らわなくなるのが自然の摂理だ。
そしてそれは「ゲームの主導権争い」にも同じことが言える。
ゲームの主導権争いに負けた弟は「兄の後ろでゲームを見る」というスタイルになっていくのである。
好きでゲームを後ろから見ていたわけではなく、むしろ自分がやりたいのを我慢していた。
「兄には逆らえない」という気持ちがどこかにあったので、仕方なく後ろから見ていた部分もあったのだ。
こういった小さい不満の積み重ねで兄弟のバランスって崩れるのだと思う。つまり兄と今も仲が良いのは幸せなことなのだ。
兄は中学生の途中からだんだんとゲームをやらなくなった。高校生の頃にはスポーツ系のゲーム以外はほとんどやっていなかったと思う。
一方で僕は社会人になるまで延々とやっていた。弟の出産のときに僕だけ行かずゲームをやっていたくらい没頭していた。(弟の誕生という歴史的瞬間に立ち会わなかったのは人生の汚点の一つである)
兄はスマホのパワプロだけは今もやっているのだが、テレビゲームをまともにやるのは10年ぶりくらいとのことだ。
僕も社会人になってからゲームをやることが少なくなったのだが、その代わりにゲーム実況動画をたまに見るようになった。
自分でゲームをやらなくなった分を、見ることで補完しているのかもしれない。
小さい頃は兄がやっていたゲームを渋々見ていたのに、大人になってから人がゲームをやっている動画を好んで見ているから不思議なものだ。
ゲーム実況動画を楽しめている今だからこそ、兄がゲームをやっているのを見たときの感情も変わっているはずだ。昔と違った気持ちが生まれるかもしれない。
【全体の流れ】
・兄がゲームをやっているのを見る
・自分たちがやっていた年代順にゲームをやっていく
(ファミコン→スーパーファミコン→プレステ→プレステ2)
・最後はやったことのない新しいゲームをやる
(Switch)
機種 | ファミコン |
---|---|
タイトル | ドラゴンクエスト(初代) |
遊んだ年齢 | 5歳 / 1995年 |
備考 | 初めてやったRPG。幼稚園児には難易度が高かったのでクリアできなかった。 |
※ 遊んだ年齢はあくまでだいたいです
初代ドラクエこそ「兄の後ろで見ていたゲーム」を代表するソフトの一つである。RPG系は一人プレイが基本なのでどうしても兄がやりがちだ。
ああ、ああ…懐かしい。
「鍵ってどこの町に売ってたっけ?」
「ダメージ受けて瀕死になると画面赤くなるよね」
「近くの洞窟はたいまつがないと暗くて進めなかった気がする」
「パスワードわからなくなって、何回もやり直したよな(笑)」
ゲームが始まって数十秒で次々とゲームの思い出が蘇って会話が弾む。
ドラクエを見ているとゲームの思い出だけでなく、実家の部屋の風景や、部屋にあったブラウン管の小さいテレビを思い出す。一気に記憶が引き戻される。
兄のゲームを見るのが今回の目的であるが、「兄と一緒に懐かしいゲームをやる」だけでも思い出の洪水に飲まれそうになる。このまま思い出に飲まれて溺死したい。
思い出話しは次々に出てくるが、やり始めて5分ほど経ってもなぜか兄はお城の中をウロウロしていた。ゲームがまったく進んでいない。
ああ、やきもきする。なぜ早く城から出ないんだ…
やはり結婚して子供ができると安全な城内にいたくなるのか。昔の兄は広大なフィールドを駆けずり回って大冒険していたのに…!!
と僕は悶々としていた。余計なことを言わないように見ているつもりだったのだが、ついに我慢できなくなり「早く隣の村行って武器買いなよ」と口を出してしまった。
「ああ、そうか」と兄は納得しようやく冒険の旅にでた。どうやら城内に武器屋があると思ってウロウロしていたらしい。
やっぱり自分でゲームがやりたい…!という感情が湧いてきた。しかし、このやきもきする気持ちこそが兄の後ろでゲームを見るということなのだ。
ゲームプレイに悶々として口を出したくなるのだけれど、兄弟という立場があるので指示は出しにくいという葛藤がある。
これなんだよ!兄弟ってこういう感情の戦いが子供時代はあるんだよ!!
ちなみに兄は某掲示板はおろかSNSすら一切やらない人間だ。そのため、
「ドラクエって64KBしかなくて、今のスマホの画像より遥かに小さいんだぜ?」
と手垢がつきまくった誰でも知ってるようなトリビアでも「えっ!そうなんだ!すげー!」と素直に驚いてくれる。かわいい。
逆に弟はドラクエをやったことがないのに「パスワードが未来を予言する言葉になっている」という豆知識を知っていた。Twitterで知ったらしい。
やったことないゲームの情報を知っているって、本当に今は受動的に情報を受け取る時代なんだなと改めて感じた。
機種 | ファミコン |
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タイトル | ロックマン4 |
遊んだ年齢 | 5歳 / 1995年 |
備考 | 今でも好きなロックマンシリーズ。僕の中でアクションゲームの原点的ソフト。ドラクエと同じくクリアすることができなかった。 |
ロックマンをプレイし始めて兄がすぐに、
「懐かしい!ボス倒すとそいつの武器が使えるようになるんだっけ?」
と言われて衝撃が走った。いやいや、兄さん。それがロックマンの醍醐味であり、基本ルールだよ…!!
「なんでそんな当たり前のことを言ったんだろう」と思っていたのだが、それほど兄がゲームから遠ざかっているんだと改めてわかった。
YoutubeもSNSもほとんどみないので、記憶の中でゲームの引き出しを開けることもほとんどないのだろう。
それと同時に「あれから20年以上経っているんだな…」と実感してしんみりした。しかし逆に「今でもこうやって仲良くゲームやっていられるって幸せなことだな」といううれしさもあった。
ロックマンのことが何もわからなくなっていた兄であったが、プレイしていくうちに「あー!この敵なんとなく覚えてる」「このBGM懐かしい」と少しずつ思い出していった。
ゲームを見る楽しさもあるが、記憶を少しずつ取り戻していく兄を観察しているのもおもしろい。このまま部屋に閉じ込めて6時間くらい見ていたくなる。
さっきやったドラゴンクエストよりも見ていて悶々とする…!!!
アクションゲームは見ていて実力がわかりやすいのでやきもきする気持ちが強いのだ。兄はゲームをやるのが久しぶりだったので、めちゃくちゃ下手くそだった。
後ろから見ていて「下手くそ!」「なんでそこで落ちるんだよ!!(笑)」「そのアイテム取らないの?」とつい口を出してしまった。
あまりにも操作がおぼつかないので、おじいちゃんとゆっくり一緒に歩いているような気持ちにもなってくる。
子供の頃はゲームの上手さにプライドがある。特に兄弟関係だと「弟に下手なところは見られたくない」という気持ちも強いと思う。
だからこそ後ろで見ている弟に「下手くそ!」と言われたら相当ムカつくだろう。
今思い返してみれば小さい頃にゲームでケンカしたのって「ゲームの取り合い」よりも、こういった「余計な一言」の方が多かったかもしれない。
しかし、今の年齢だとゲームがうまいヘタなんてどうでもいいだ。それに口出しすることも盛り上げるための冗談だとお互いに理解しているから笑うことができる。
素直に「下手くそ!」と言えるというのは、上下の関係ではなくなって横の関係性に変わったからなんだろうなと思う。
ファミコン世代のゲームって、覚えるルールも少ないし誰でも操作できるのがやっぱりいい。難易度が高いソフトが多いから今やってもおもしろい。
簡単にできるゲームが減ったなー!と感じていたのだけれど、弟を見ていると「簡単で誰でもできるゲーム」っていうのはスマホのゲームが今は担っているんだなと思った。
機種 | スーパーファミコン |
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タイトル | ドンキーコング2 |
遊んだ年齢 | 6歳 / 1996年 |
備考 | 幼稚園〜小学生の頃くらいにスーファミがやってきて、初めて買ったのがこのソフト。 |
ファミコンは2人で協力プレイできるものもあるが、セーブができないのが当たり前だった。だから二人で長くできるゲームというのがほとんどなかった。
そこにきてドンキーコング2という黒船の襲来。
協力プレイかつセーブができるので、長期的に二人でゲームができるのだ。弟という立場にとってはまさに救世主だった。
ロックマンと違ってうまくプレイしている兄を見てなぜか安堵する気持ちがあった。
そういえば兄とゲームするときには「楽しんでやっているだろうか?」という不安を抱えていたことを思い出した。
小学生や中学生になると兄弟のことを鬱陶しく感じるようになることが増える。家族と一緒にいるところを友達に見られると恥ずかしく感じる時期があるだろう。
兄にも当然そういった時期があり、幼いながらにそういった空気を僕は感じていた。
だからこそ一緒にゲームをできることがうれしかった。兄に「もうゲームに飽きた」と言われたら一緒に遊ぶものがなくなってしまうという怖さのようなものもあったのだと思う。
機種 | プレイステーション |
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タイトル | パワプロ98 |
遊んだ年齢 | 9歳 / 1999年 |
備考 | プレステで初めて買ったソフト。むしろ兄がパワプロをやりたいがためにプレステを買った。兄にそれを言ったら「よく覚えてるなw」と鼻で笑われた。 |
機種 | プレイステーション2 |
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タイトル | パワプロ9 |
遊んだ年齢 | 13歳 / 2003年 |
備考 | パワプロシリーズで一番やった作品。兄も僕も50人以上は選手を作ったと思う。 |
機種 | プレイステーション2 |
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タイトル | ウイニングイレブン6 |
遊んだ年齢 | 12歳 / 2002年 |
備考 | 兄も僕もサッカーをやっていたのでウイイレを持っているのは必然的と言ってもいい。サッカー少年はみんなウイイレをやっている。ゴンが表紙なのが時代を感じさせる。 |
中学くらいになったときには兄の後ろでゲームを見ることはほとんどなくなった。
単純にそれぞれゲームの趣味が違ってきたのもあるが、思春期になってイライラすることが増えたこともあると思う。
お互いに相手が不快に思うことはしないようにしていた気がする。だから後ろでゲームを見ることも中学ではやらなかった。口出しされたら間違いなくケンカになる。
パワプロもウイイレもそうなのだが、スポーツ系のゲームは今までやってきたものとはまったく違った楽しみがあった。
ゲームを見ているというよりも、現実の試合映像を見ている感覚に近い。酒を飲みながらダラダラ見ているとほとんどスポーツ観戦と変わらない。
さらにスポーツ系のゲームは現実の選手やチームがベースになっているので、
「あー!この選手は2000年に得点王だったよね」
「うお、この時代の中日めちゃくちゃ強い!!」
と兄弟の思い出話しではなく、懐かしのスポーツ情報で盛り上がる。今までやったゲームと違いリアル世界にリンクしているのだ。
兄が高校に入るとRPG系はほとんどやらなくなりスポーツ系しかやらなくなったことを考えると、年齢があがると現実に近いゲームの方がおもしろく感じるようになるのかもしれない。
学生時代はこういった対戦系のゲームは兄に気を遣ってやっていたことを思い出した。
こういったスポーツゲームは、他のゲームよりも負けたくない気持ちが強くなる傾向にある。みんな本気でやるので仲が悪くなることすらあるくらいだ。
だから学生時代に兄と対戦するときは正直言ってかなり配慮してやっていた。
勝ちすぎると兄の機嫌が悪くなりそうだし、負けすぎると自分がムカつく。真剣にやるけれど「いい塩梅の勝負をする」というのをけっこう心がけていた。
兄をイラつかせないためもあるが、ドンキーコングのときと同じで「楽しんで一緒にやってほしい」という気持ちもあるのだ。
弟って意外に兄に気を遣っているんですよ…!
ラストは僕も兄もやったことのないゲームをやることにした。
「兄の後ろでゲーム見る」という子供の頃にやっていたことを大人になってからやるということで、ゲームもロックマン4から11にバージョンアップさせてみた。
ファミコンを見たあとなので余計にグラフィックの進化に驚く。
20年という時の流れの早さをまたも感じる。子供の頃を思い出せるし、グラフィックなどの進化も感じるからゲームは時の流れを感じやすいのかもしれない。
ここまでゲームをやってきたが、どこかしらで「大人になった自分」というのが意識下にあったように感じる。
しかし、ロックマン11はゲームに対する純粋なワクワクがあった。
「進むと何がでてくるんだろう…」
「この敵どうやって倒すの?」
「うわー!なにここ難しすぎる!!!」
懐かしい話などする余裕もなく、子供のころに戻ったようにゲームを楽しんでいた。
企画を通してぼんやりと自分の中で「大人になってから後ろでゲームを見ると、懐かしさを感じられていいな」と思っていた。
しかし、そうではなかった。ロックマン11をやって思い出した。
キャラクターを派手に動かす楽しさ、先の読めない展開へのワクワク、何度も失敗するイライラ、解決策を一緒に見つけていく気持ちよさ、そしてクリアしたときの爽快感…!!
そういった様々な感情があるからこそゲームってやっぱり楽しいのだ。
自分でやってもおもしろいのだけれど、兄の後ろで客観的に見ているからこそ気づけたことも多かったと思う。
「懐かし〜」だけで終わると思ったのだけれど、予想以上に自分の中で様々な感情が沸き立って驚いた。
20年という長い時間の中で、兄弟の関係が昔より良くなっていることがなによりもうれしい。
あと「2〜3時間で撮影終わるから」と兄に言っていたのだけれど、なんだかんだ8時間くらいずっとみんなでゲームやっていた。
また20年経ったらやりたい。
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