特集 2020年7月1日

女性誌以外も付録がでかい

友達がおしゃれなスカーフをしていた。

「どこで買ったの?」と聞いたら、購読しているアウトドア誌の付録にちょうどいいスカーフがついてきたのだと言う。

その雑誌は付録が豪華なことで有名で、以前には保冷バッグやサコッシュがついてきたこともあるらしい。

付録がすごいといえば女性ファッション誌で、私も本屋で一際目立つ大きな付録に圧倒されたことがあるが、最近はアウトドア雑誌も付録がおもしろいようだ。

他にも私の知らない雑誌に、私の知らないおもしろい付録がもっともっとあるのだろうか。本屋で一番大きな付録を買ったら、どんなものが入っているのだろうか。

実際に本屋に行き、いろいろ買ってみた。

街の怪文書を探したり、ローカル牛乳を飲んだり、盛大に誕生日を祝ったり、ジモティで無駄なものを引き取ったりする腐女子です。

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付録は群生している

本屋に行ってまず意外なことに気付いた。雑誌のジャンルによって、付録つきの雑誌がたくさん置いてあるものと全然ないものがあるのだ。
豪華な付録がこれを買えとばかりに誘惑してきたジャンルは、ざっくり区切って「女性ファッション誌」「結婚情報誌」「アウトドア誌」「男性ファッション誌」の4種類。
やはり1社が出したらもう1社もとこぞって付録を作り始め、付録が群生するのだろうか。
個人的には高いモノにこだわるイメージの男性ファッション誌に付録の波が来ていたことが意外だった。


そもそも雑誌コーナー全体で言えば8割は付録のない雑誌か、あっても折り込みポスターぐらいであった。
そんな中で一部のジャンルだけ付録が特殊進化しているのがおもしろい。
例えば経済誌のどこかが不意に思い立ってリアル投資経験すごろく(仮)などを付録にした日には、経済誌界隈で付録祭りが始まるのだろうか。

女性ファッション誌のかわいい付録

まずは付録が豪華なことでお馴染みの女性ファッション誌。
中高生向けの「popteen」からミドル向けの「素敵なあの人」まであらゆる雑誌に付録がある。付録がない雑誌が珍しいなと思ったら、同じ雑誌を付録ありと付録なしで2パターン展開しているものだった。

6月中旬の本屋では、夏に備えて保冷できるバッグやビニールバッグが目立っていた。もしくはブランドとコラボしたトートバッグやポーチ。
そして化粧品。高級化粧水のお試しセットから、アイシャドウとマスカラの豪華セットまで様々に、3ヶ月追ったら全身コーディネートができそうな勢いで大きな付録が迫り来る。
その中でも特に目立っていたものが、まさかの「折りたたみ傘」だった。本屋で雑誌に傘が挟まれているのを私は初めて見た。

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日傘にも雨傘にも使える仕様で、折りたたむと細いのに広げるとかなり大きくて使いやすい。
セレクトショップJOURNAL STANDARDとのコラボだ。
読者も納得のクオリティがたった1290円。SNSを見ると「付録につられて買った」という報告が多数上がっていた。

そして傘が付録の雑誌はなんともう1冊あったのだ。
こちらは特別付録なのだがもはや傘の入った箱だけがドーンと売られていて、雑誌部分はどこへ?と思ったら、アプリから本文をDLできるプロダクトキーが付いているという。
本屋で売られているのに雑誌の付録が雑誌をWEBに預けてしまった。そんなこともあるほどに付録か、付録なのか。すごい。

そして1つ、強烈に興味を惹かれた付録が、40代向け女性誌「美ST」に付録されたフリーズドライ美容液うるおい玉だ。

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びっくりするほどどんなものか想像がつかない。
フリーズドライ、美容液、うるおい、玉、今まで繋がったことのない単語が突然セットになっている。
説明を読んでみると、どうやら美容液が入ったこの白い玉がうるおい玉で、これを普段使っている化粧水に溶かすと高級美容液になるというものらしい。
LITSというエイジングケアブランドが出している商品のサンプルで、これが美意識の高い40代の中で今アツい注目を浴びているという。

美STには美魔女、若返りという言葉が踊り、中には「もし娘に整形したいと言われたら」というコーナーもあった。
もちろん頭ごなしに否定するものでなく、一緒に安全なクリニックを調べようというもの。お母さんは大変だ。

結婚情報誌のキラキラした付録

付録といえばゼクシィ、ゼクシィといえば付録。
首都圏版7月号では、ただでさえ他より厚くて重い雑誌に大きな付録箱が挟まれていた。

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中身は計量スプーンやふりかけプレートが入ったシンデレラキッチンツール7点セットで、ここにきて初めて、可愛さと夢が実用性より優先された付録と出会うこととなった。
車輪まで計量スプーンになっている徹底ぶりではあるが、なんせこれがキッチンにあったら……かわいい。

ちなみに本に平たく収納するため、付録自体は結構バラバラな状態で入っていた。しかもこれをほぼ説明書なしで組み立てることとなる。

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スライスされた馬車部分を横に積む

海外版はリゾート地を想定しているおかげか防水のサコッシュがついてきた。005.jpg

それにしてもゼクシィで目立つのは紙モノの付録だ。この2冊だけでサンセット婚姻届、ゼクシィピンク婚姻届、愛してるぜベイベ婚姻届の3婚姻届が揃ってしまった。これで2回までは失敗しても大丈夫。

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愛してるぜベイベ婚姻届は書き下ろしイラスト付きで、15年近く前に好きだった漫画の新イラストがまさかゼクシィで見れるとは思わなかった。今ちょうど読者世代が結婚ラッシュの歳になっているのか。

そして冊子は結婚式のお金、式場カタログ、新生活の段取り…と至れり尽くせりで新生活に必要なものを教えてくれる。この何万人もの卒花*1の叡智を重ねたマニュアルが、不安と希望にあふれるプレ花*2を立派に育ててくれるのだろう。
中身も両親への挨拶から役所の手続きまでガッツリ地に足のついた特集が揃っていた。もっと夢とキラキラにあふれた雑誌かと思いきや、結婚は圧倒的に現実だ。

卒花*1 : 結婚式を終えて花嫁を卒業した人のこと
プレ花*2 : 結婚式を準備している新入り花嫁のこと

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男性ファッション誌のかっこいい付録

男性ファッション誌の付録も女性ファッション誌と同じく、トートバッグ、リュックサック、カードケースなどファッションアイテムが多かった。
とはいえ男性ファッション誌自体がカルチャー系からコレクター系まで合わせても、棚の大きさが女性誌の1/3程度で、その中でこの3誌の付録が目立っている状態。

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そのうち2冊を買ってみたが、女性誌より「たくさん入る!」と機能性をアピールしている。
「Master」はLOGOSの黒いリュック。「Smart」はnano・universeの財布とカードケース。

それにしても黒い。全部黒い。更にWEBサイトで過去の付録も見てみたが、トートバッグから万年筆まで見事なまでにほとんどの付録が黒いのだ。
インターネットで有名になったメンズナックルの画像に《一つだけ言える真理がある。「男は黒に染まれ」》というキャッチコピーがあるがそういうことだろうか。多分違うな。
女性誌がカラフルなのに対して、男性誌はストイックなまでの黒へのこだわりにちょっと驚いた。

付録を取ると両雑誌とも本文自体は薄くて軽めで、注目のアイテムや日常で使えそうなファッションの写真が並んでいた。
そして男性誌にも「パックで集中ケア」「外見至上主義」などの文字が踊っていて驚いた。”かわいいは作れる”から10年、今や”かっこいいも作れる”が当たり前の時代なのかもしれない。

この記事のために雑誌の出版社を調べたところ、日傘の「SPRING」、大きなトートバッグの「steady.」、そしてこの黒いリュックサックの「Mater」と黒いお財布の「Smart」、その他何冊かの付録がついていた雑誌は全て同じ宝島社が出していたことがわかった。
宝島社は付録戦略で躍進した出版社のため、今でも付録の震源地として八面六臂の活躍をしているようだ。

アウトドア雑誌の実用的な付録

アウトドア・キャンプ誌は大きな付録が多かった。
冒頭で紹介したスカーフがついてきた雑誌「PEAK」の今月の付録はマウンテンオーガナイザーだった。
さすがアウトドア誌だけあって防水、耐摩擦、丈夫さなどがアピールポイントになっている。

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また「fam」では調味料や洗剤を入れて持ち歩くことができるディスペンサーボトルが付録についていた。
確かに調味料を丸ごと持って行くのは邪魔だし、旅行やキャンプはこういう小さなボトルが必要になることがやたら多いので嬉しい。

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しかし、付録の推しポイントに「食品衛生法適合品」という文字を見るとは思わなかった。本当に色々な需要の世界がある。

また別のキャンプ誌では防水スタッフバッグ、サイクリング誌ではレインキャップが付録についていた。
今まで紹介した雑誌も実際にガシガシ使えるもの、楽しんで使えるものが多かったが、アウトドア誌は趣味色が強いこともあってか一段と実用感が増している気がする。

専門性の高い雑誌の研ぎ澄まされた付録

そんなマニアックな付録の中でも個人的に一番面白かったのが、元気なシニア向け雑誌の「サライ」だ。
幼児向け雑誌や漫画誌で付録を楽しみ、ファッション誌で洒落っ気を手に入れ、色々あってサライ世代になっても付録に追いかけられてくる。我々は付録から逃れることができない。

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今月のサライの付録は首里城復興を願ったペーパークラフトだった。
日本茶特集なのに突然の首里城…?と思ったが、よく考えたらファッション誌に突然傘がついてくるのも結構不思議なので、むしろ付録とは本文と違うフレーバーを足すことで情報量をアップさせているのかもしれないと気が付いた。
い。
ちなみに先月はチケットホルダーが付録になっていた。

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ところでこの付録、意外と組み立てが難しかった。丁寧な説明書きがついていたが折ったりハメたりまあまあ時間がかかる。
私も日本茶を飲みながらペーパークラフトを作れる老後を迎えたいものだ。

スコップ(型のスプーン)がついてくる

もう一つ面白かったのが、「Jimny SUPER SUZY」という、ジムニー&スズキの4WDのことをひたすら書き連ねている雑誌だ。
スズキのジムニーという車をどうカスタムする、こんな乗り方をしている人がいる、聖地がある、ジムニーでどこへ行く…と、ジムニーが好きすぎる人間のための情報がたくさん詰まっている。
そして付録についてきたのが、ジムニー誕生50周年記念の角スコスプーンだ。

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なぜ角スコップのスプーン?と思ったが、ジムニーはオフロード車のため、障害物除去や、雪や泥から脱出する時のレスキューツールとしてスコップを携行すると便利らしい。
そして背面タイヤにスコップを背負う姿がファンの中ではかっこいいとされている。とてもかっこいいらしく、検索すると誇らしげにスコップをつけたジムニーの写真をたくさん見ることができる。

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画像検索するとたくさん見ることができる

そこでジムニーのロゴ入りスコップが付録になった…のだろう。かはわからないが、車に乗れない時もジムニーを思い出す一部と一緒にいられたら確かに楽しいだろう。
雑誌のマニアック度が高まるほど付録にも文脈があるようだ。

付録の分布図

ここにも紹介しきれないほど多種多様な付録があったが、色々と見た結果、付録は大まかに4方向に分けることができるのではないかと気が付いた。

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まず、読者層が好きなブランドとのコラボを推しているものが多い。一方でゼクシィやPEAKSのように雑誌そのものがブランド化しているパターンもある。
その中でも傘やバッグや財布など見たことがある実用的なものと、シンデレラキッチンスケールやスコップスプーンなど記念品的な独自のロマンが添えられたもの。
また、化粧品の付録のようにサンプルを兼ねているものがあったり、この記事では紹介できなかったが、ライフスタイル誌ではこだわり素材のタオルがついてくるなど、素材に特徴を出しているものもあった。

なぜ雑誌にそんな大きな付録を?と思っていたが、こうやって手にとってみると、付録は雑誌の世界観をよりリアルに拡張するアイテムなのだなと感じた。
どこの付録も雑誌の世界観とどことなく繋がっているのだ。
ファッション誌の付録は普段使い倒せるもの。結婚情報誌の付録は夢いっぱいのもの。キャンプ誌の付録は「次のキャンプではこれが使える」とテンションを上げるもの。
モノがあるとどことなく満足感が上がる、そうして人はサライのペーパークラフトを組み立てるようになるのかもしれない。


付録道はどこまでも

ちなみに幼年誌や子供向け漫画誌の付録も相変わらず豪華で、来2020年8月の「りぼん」の付録には、結婚を題材にした漫画とのコラボでゼクシィプロデュースの婚姻届がつくらしい。

りぼん公式サイト

実際に使えるわけではないが、これを読んで育った少女たちを将来ゼクシィが回収していく様子が何となく想像できた。
私がりぼんを読んでいた頃のペーパークラフト的な付録は今もうあまりないらしいが、今も昔も女の子がワクワクする付録を全力で作ってくれていることに、なんだか嬉しくなった。
こうして私は今日も付録に引き寄せられて雑誌を買ってしまうのだ。

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引き寄せられたようす

 

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