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日本唯一の、竹専門の植物園
まずは入口の受付で500円払います。すると受付のおばちゃんが「蚊が出ますので」と言って、虫よけスプレーを差し出しました。無料サービス、ということなのでしょうか? 確かに受付のまわりだけ、蚊取り線香のにおいがしています。スプレーしときましょう。(200人300人来たらどうなっちゃうのでしょう。)
続いておばちゃんが簡単に説明してくれます。慣れたご様子です。撮影許可などは私が尋ねる前にあちらから言い出したぐらいです。あと、この植物園には順路があるとのこと。
今歩いてきたルートは、ほぼ芝生になっています。しかもふかふかで、よく刈りそろえられています。竹専門とて植物園なので、管理がとても行き届いている、ということなのでしょう。この日は園内を合計1時間ちょっと歩き回ったのですが、足の疲労感はあまりありませんでした。手入れの行き届いた芝生のおかげかもしれません。
順路前半
その先は、様々な竹が種類別に植え分けられています。
竹は地下茎を横へ横へと伸ばしまくる植物です。私も静岡市の山の中で暮らしていた時代があるのでよく知っています。竹の根が無秩序に、かつ浅く広がって木を追いやり、地滑りの原因の一つになるのです。
翻ってこの植物園ではどうでしょう。竹林が分かれています。行儀よく。種類ごとに。追っつけ入手した出典によると、地表から十二分な深さまでコンクリートの仕切りを埋め込んである、とのこと。
そうやって種類分けされたものを、次々見ていくと、少しずつ分かってきます。これは確かに黄色いな、とか、明らかに細いな、とか、集まってるな、とか。
ブツメンチクといいます。節がジグザグになる竹です。方向によっては確かに、怒った人の顔に見えるかも。私は事前知識なしでこの竹を見ましたので、「正気度が下がる」というCoC用語がぴったり当てはまりました。
伺ったのが真夏だったので、日なたは熱いです。それがいったん木陰……もとい、竹陰(ちくいん)に入るととても涼しいです。風が通るところに至っては、弱冷房車といっても過言ではありません。竹の蒸散のパワーなのでしょうか。そしてこの区画も、蚊がたくさんいます。スプレーして大正解でした。蝶やクモやトンボもいます。東名のすぐ近くにあるのですが、静かです。
順路後半
説明書きには、この竹はあっちの庭園から譲ってもらったとか、○年ぶりに花が咲いて大発見とか書いてあります。竹のやり取りや観察も行われているようです。そう思ってみてみると、空き区画もあります。ゆくゆくはまた別種の竹が植わるのでしょう。
ゆくゆくは、というよりも、既にそこいらに様々な竹が生えています。例えば、遠くの方に藪のようなこんもりした竹が見えたとします。
例えば、遠くの竹林の中に電柱が見えたとします。
まさか、もしも竹を電柱にしている!? もしも竹だったら、伸びていずれ電線が切れるぞ……と思ってよく観察しました。すると、コンクリート製の電柱に緑の苔が生え、ケーブルを止めるバンドが一定間隔でまかれているだけであることがわかりました。なーんだ。
研究資料館
順路を最後までたどると、最初にスルーした研究資料館の前に出ました。
建物の外を生きている竹の特集としたならば、建物の中は切られた後の竹を特集していると言っていいのではないでしょうか。竹を使った物体ならほぼ何でもあります。笛、籠、笊、茶筌、竿、そして、たけかんむり。そう、たけかんむりの漢字一覧が展示されていました、しかも売店で売られていました。買えばよかった。凧も、龍勢も、アート作品もあります。
竹を使ったアート作品が奥にあるので、著作権を侵害しないような画角で撮りました。
奥は売店になっています。売られているのはほぼ全て、竹細工と竹の本です。
私は消臭剤として竹炭と、それと竹の本を買いました。駿河竹千筋細工という伝統的工芸品も売っています。流石に値段の面で手が出ませんでした。
帰りがけに、受付にいた人とはまた別のおばちゃんに声をかけられました。いわく、春にも来てほしいとのこと。桜も見事なのだそうです。いわれてみれば、竹の間に桜が植わっていました。名札がついていたのです。
マジで来ようかな……
なぜ?
ではなぜこんなにも竹ばかりの植物園ができたのでしょうか。加筆用に取り寄せた文献によると、創設したのは宗教法人自然真道です。「日本文化を代表する竹を集めよう」と言い出して、収集・栽培しはじめたのがきっかけとのこと。1951年のことです。現在地に引っ越したのが1972年で、流れ流れて現在はエコパレという造園・庭園管理の会社が運営しています。
そもそも駿河の国は、竹が多いところなのです。暖かく雨が多いからですね。さっきチラリと出した駿河竹千筋細工が、古くからあります。知り合いの農家が私にタケノコをおすそ分けしてくれます。富士市は「竹取物語ゆかりの地である」と主張しています。
よって、「竹専門の植物園がある」と初めて知った時も、あまり不思議には思いませんでした。「そりゃ向いているだろうなぁ」と思いました。
私がむしろ不思議に思うのは、インターネット上に、公式サイト以外の情報があまりないことです。今AIに聞いてみましたが、公式サイト以上の情報は出てきません。ウィキペディアを書くには情報が少なすぎます。
ところが、書籍や雑誌には何度か取り上げられているようなのです。静岡県中の図書館を横断検索できるサービス「おうだんくん」によると、富士竹類植物園を取り扱った雑誌や書籍は何冊かあるようです。静岡市立図書館には一冊あり、早速取り寄せました。沼津市立図書館や三島市立図書館には二三冊ぐらい所蔵しているようです。静岡県東部の資料が、静岡県東部に多く所蔵されているのは面白いですね。(なお、長泉町立図書館には、富士竹類植物園報告が所蔵されています。面目は保っているようです。)
というわけで、私は今度のシルバーウイークに、静岡県東部にまじりて書籍をとりつつ、よろづの出典に使おうと思います。
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編集部より寸評
かなりニッチなところまで含め、いろいろなスポットを網羅しているという自負のある当サイトですが、この植物園のことは全く知りませんでした。世の中にはまだまだ知らないことがあるな…。
変わった竹がある、コンクリートで仕切られている、といった施設そのものの面白さにくわえ、電柱も竹に見えるとか、竹に囲まれすぎた桜などの書き手の解釈あっての面白さ、どちらもしっかり書かれている読み応えのある記事でした!(編集部・石川)
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