特集 2026年10月15日

竹、専門! 富士竹類植物園へ行ってきた

竹!

日本には、竹専門の植物園が一つだけあります。静岡県東部、長泉町にある、富士竹類植物園です。

日本語版Wikipediaに記事があるものの、画像は全くありませんでした。加えて、出典どころか文量も不足していました。日本唯一なのに。というわけで、撮影してきました!

Wikipediaの内と外をつなぐウィキペディアンVTuber。静岡県在住。苗字の漢字を口で説明する際、「宇宙に喜び多からん」と好んで言う。モットーでもある。

前の記事:ちい川

> 個人サイト note

この記事は読者投稿でお送りいただいた記事です。

詳細はこちらから。→「月刊新人賞」作品募集中

日本唯一の、竹専門の植物園

入り口からもう竹が林立している。右のVTuberが私。
たかむらの奥に受付のひさしだけが見えている

まずは入口の受付で500円払います。すると受付のおばちゃんが「蚊が出ますので」と言って、虫よけスプレーを差し出しました。無料サービス、ということなのでしょうか? 確かに受付のまわりだけ、蚊取り線香のにおいがしています。スプレーしときましょう。(200人300人来たらどうなっちゃうのでしょう。)

続いておばちゃんが簡単に説明してくれます。慣れたご様子です。撮影許可などは私が尋ねる前にあちらから言い出したぐらいです。あと、この植物園には順路があるとのこと。

1番から出発して看板に従うと……
明らかにメインディッシュである建物の前を、一旦は通過することになります。
木ではなく竹が植えてある車回しを通過し……
こんな空間に出ます!

今歩いてきたルートは、ほぼ芝生になっています。しかもふかふかで、よく刈りそろえられています。竹専門とて植物園なので、管理がとても行き届いている、ということなのでしょう。この日は園内を合計1時間ちょっと歩き回ったのですが、足の疲労感はあまりありませんでした。手入れの行き届いた芝生のおかげかもしれません。

いったん広告です

順路前半

その先は、様々な竹が種類別に植え分けられています。

種類別にキッチリ分けられている。

竹は地下茎を横へ横へと伸ばしまくる植物です。私も静岡市の山の中で暮らしていた時代があるのでよく知っています。竹の根が無秩序に、かつ浅く広がって木を追いやり、地滑りの原因の一つになるのです。

翻ってこの植物園ではどうでしょう。竹林が分かれています。行儀よく。種類ごとに。追っつけ入手した出典によると、地表から十二分な深さまでコンクリートの仕切りを埋め込んである、とのこと。

万緑に映えるゴールド。

そうやって種類分けされたものを、次々見ていくと、少しずつ分かってきます。これは確かに黄色いな、とか、明らかに細いな、とか、集まってるな、とか。

そんな金色のボディに緑のストライプががこれまた映える
庭園によく使われるらしい竹。確かに葉っぱの感じが見おぼえあるかも。
細くて集まっているヤツ
竹らしい竹を見ると安心
ギョエーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!節が!!

ブツメンチクといいます。節がジグザグになる竹です。方向によっては確かに、怒った人の顔に見えるかも。私は事前知識なしでこの竹を見ましたので、「正気度が下がる」というCoC用語がぴったり当てはまりました。

2年くらい前のAIで生成したかのような絵づら。
他にもいる!
竹らしい竹を見て心を落ち着けましょう

伺ったのが真夏だったので、日なたは熱いです。それがいったん木陰……もとい、竹陰(ちくいん)に入るととても涼しいです。風が通るところに至っては、弱冷房車といっても過言ではありません。竹の蒸散のパワーなのでしょうか。そしてこの区画も、蚊がたくさんいます。スプレーして大正解でした。蝶やクモやトンボもいます。東名のすぐ近くにあるのですが、静かです。

いったん広告です

順路後半

地下のコンクリート壁のおかげで、繁茂がビシッと止まっている。
気づけば14番に到達。めっちゃ進んだ。

説明書きには、この竹はあっちの庭園から譲ってもらったとか、○年ぶりに花が咲いて大発見とか書いてあります。竹のやり取りや観察も行われているようです。そう思ってみてみると、空き区画もあります。ゆくゆくはまた別種の竹が植わるのでしょう。

竹は元来さむさに弱いので、ビニールハウスもある。

ゆくゆくは、というよりも、既にそこいらに様々な竹が生えています。例えば、遠くの方に藪のようなこんもりした竹が見えたとします。

これね
猛烈に葉っぱのデカい竹。

例えば、遠くの竹林の中に電柱が見えたとします。

ん? この電柱、なんだか違和感。
まさかまさか、竹を電柱代わりにしている???

まさか、もしも竹を電柱にしている!? もしも竹だったら、伸びていずれ電線が切れるぞ……と思ってよく観察しました。すると、コンクリート製の電柱に緑の苔が生え、ケーブルを止めるバンドが一定間隔でまかれているだけであることがわかりました。なーんだ。

この植物園だと電柱まで竹かもしれないから……
いったん広告です

研究資料館

順路を最後までたどると、最初にスルーした研究資料館の前に出ました。

メインディッシュ
ぜーんぶ静岡の博物館のチラシ……かと思ったら、高知県立牧野植物園のチラシも突然ある。

建物の外を生きている竹の特集としたならば、建物の中は切られた後の竹を特集していると言っていいのではないでしょうか。竹を使った物体ならほぼ何でもあります。笛、籠、笊、茶筌、竿、そして、たけかんむり。そう、たけかんむりの漢字一覧が展示されていました、しかも売店で売られていました。買えばよかった。凧も、龍勢も、アート作品もあります。

世界の竹
この画像、ほぼ竹。

竹を使ったアート作品が奥にあるので、著作権を侵害しないような画角で撮りました。

流石に傘は使わないけど、竹ぼうきは私も使うことがある

奥は売店になっています。売られているのはほぼ全て、竹細工と竹の本です。

私に花を飾る趣味があったら一輪挿しを買ったものを。

私は消臭剤として竹炭と、それと竹の本を買いました。駿河竹千筋細工という伝統的工芸品も売っています。流石に値段の面で手が出ませんでした。

ふと座ったベンチが竹

帰りがけに、受付にいた人とはまた別のおばちゃんに声をかけられました。いわく、春にも来てほしいとのこと。桜も見事なのだそうです。いわれてみれば、竹の間に桜が植わっていました。名札がついていたのです。

マジで来ようかな……

立派な桜、その名もたおやめ
園が園ならメインをはってもおかしくない桜
こんなに竹に囲まれた桜は、あまりありませんからね。
いったん広告です

なぜ?

ではなぜこんなにも竹ばかりの植物園ができたのでしょうか。加筆用に取り寄せた文献によると、創設したのは宗教法人自然真道です。「日本文化を代表する竹を集めよう」と言い出して、収集・栽培しはじめたのがきっかけとのこと。1951年のことです。現在地に引っ越したのが1972年で、流れ流れて現在はエコパレという造園・庭園管理の会社が運営しています。

そもそも駿河の国は、竹が多いところなのです。暖かく雨が多いからですね。さっきチラリと出した駿河竹千筋細工が、古くからあります。知り合いの農家が私にタケノコをおすそ分けしてくれます。富士市は「竹取物語ゆかりの地である」と主張しています。

これは帰り道に園とは別の場所で撮った竹林。

よって、「竹専門の植物園がある」と初めて知った時も、あまり不思議には思いませんでした。「そりゃ向いているだろうなぁ」と思いました。

私がむしろ不思議に思うのは、インターネット上に、公式サイト以外の情報があまりないことです。今AIに聞いてみましたが、公式サイト以上の情報は出てきません。ウィキペディアを書くには情報が少なすぎます。

ところが、書籍や雑誌には何度か取り上げられているようなのです。静岡県中の図書館を横断検索できるサービス「おうだんくん」によると、富士竹類植物園を取り扱った雑誌や書籍は何冊かあるようです。静岡市立図書館には一冊あり、早速取り寄せました。沼津市立図書館や三島市立図書館には二三冊ぐらい所蔵しているようです。静岡県東部の資料が、静岡県東部に多く所蔵されているのは面白いですね。(なお、長泉町立図書館には、富士竹類植物園報告が所蔵されています。面目は保っているようです。)

というわけで、私は今度のシルバーウイークに、静岡県東部にまじりて書籍をとりつつ、よろづの出典に使おうと思います。

看板もその文字も竹でできている。

 

この記事は読者投稿でお送りいただいた記事です。

編集部より寸評

かなりニッチなところまで含め、いろいろなスポットを網羅しているという自負のある当サイトですが、この植物園のことは全く知りませんでした。世の中にはまだまだ知らないことがあるな…。
変わった竹がある、コンクリートで仕切られている、といった施設そのものの面白さにくわえ、電柱も竹に見えるとか、竹に囲まれすぎた桜などの書き手の解釈あっての面白さ、どちらもしっかり書かれている読み応えのある記事でした!(編集部・石川)

記事原稿募集中

未発表原稿のほか、すでにご自身の個人ブログやSNSで発表したものでも可。優秀作はこのようにご掲載します。惜しい作品は、月に1回「月刊新人賞」のコーナーで発表いたします。

詳細はこちらから。→「月刊新人賞」作品募集中

▽デイリーポータルZトップへ

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ