迫りくるレンガのトンネル、そして橋
さぁ、いよいよ明治時代の旧線へと入る。
旧線は残念ながら完全にレールが撤去されているものの、それでもその幅の狭い線路跡や、傾斜きつめの坂道は、登山鉄道の跡っぽい趣がある。
旧線を歩き始めてすぐ、目の前にぽっかり口を開いた碓氷第一隧道が表れた。隧道(すいどう)とはトンネルのことだ。
この碓氷線には、全部で26のトンネルと18の橋があるらしいが、これはその一つ目のトンネル。いよいよ本格的な山に入る第一歩だ。
うむ、なかなか雰囲気のあるトンネルだ。雰囲気ありすぎて入るのがちょっと怖いが。
だがまぁ、このトンネルも近年整備されたものであり、内部には電気がきちんと通っていて明かりも付いている。真っ暗というワケではないのでなんら心配は要らない……はずだ。
しかし、それでも古びたレンガのトンネルというのはなんともオカルトチックな感じがする。勇気を振り絞って、いざトンネルの中へ。
いやぁ、良いねぇ。この時期、碓氷峠の紅葉はなかなかのものだ。特にトンネル越しに見る風景というものは、何かこう、ぐっとくるものがある。それも古いレンガのトンネルともなると、興奮の度合いは倍増だ。入る時の恐怖感なんてどこへやら。
実はこの日の朝、結構な寝坊をしてしまい、一時は取材を延期しようかとも思っていた。結局出発時間を遅らせて来たのだが(横川駅を出たのはお昼の12時)、これはやっぱり来て良かったと思わせてくれる光景である。
第一隧道を抜けしばらく歩いて行くと、見えてきたのは次なるトンネル、第二隧道。このトンネル入口の前にはレールのようなものが見られるが、これはサードレールというものらしい。
サードレールは電車を動かす電力を供給するためのレール。この旧線はトンネルの高さが無く架線が設置できなかったので、地上から電気を送る方式が採られたのだという。
第二隧道を出ると、ちょっと開けた場所に出た。左隣には道路が迫っており、そしてその先には坂本ダムとそのダム湖である碓氷湖が見えた。
ダムにも興味無いことはないのだけれど、まぁ、今日はあくまで鉄道がメインということで。
続くは第三隧道……と思いきや、そのトンネルの先にもまたトンネルが見える。さらに、その先にももう一個。なるほど、ここは短い距離のトンネルが連続するエリアらしい。
ポーン、ポーンと長いトンネルが二つ来た後はポンポンポンと短いトンネル三連荘。う~ん、なんてテンポの良い線路跡なんだろう。メリハリが付いていて間延びせず、飽きずに散策を楽しむことができる。素晴らしい。
さて、そうして第三隧道、第四隧道を越え、さらに第五隧道を抜けた。次は一体どんなものがあるのやら、そんな事を思っていたら……いやはや、凄いのが来ましたよ。
どどんと出たのは碓氷第三橋梁。通称めがね橋と呼ばれているこの四連アーチ橋は、結構有名なので知っている方も多いのではないかと思う。すぐ側を通る国道18号線から見るめがね橋は、碓氷峠を代表する風景と言っても良いだろう。
しかしこのめがね橋、想像以上にでかいぞ。そして高い。迫力満点だ。橋の長さは91mで川からの高さは31mだというから、その高さはビル10階分ぐらいだろうか。現在日本に残るレンガ造りの橋の中で、最もでかいのだという。いやぁ、凄い。