謝罪に行く
詳しく話を聞くと、ハヤトウリは祖父宅の裏山に自生しているものではなく、ご近所さんが植えたものらしい。土地もその方のものだ。
衝撃。ずっと勘違いしていたが、裏山のとある地点からはうちの土地じゃなかったのだ。
僕がやらかしたことを即座に理解したおばあちゃんは、すぐご近所さんに報告・謝罪をしてくれた。
祖母「うちの孫がの、知らんとあんたとこのチャーテ(ハヤトウリのことをそう呼ぶらしい)取ったっちゃん。すまんの。うん、うん、すまんの。すまんの……」
おれはなにをやっているのか。ともかく、自分でも急いで謝罪に行かねばならない。
緊張しながらご自宅まで謝罪に伺うと、地権者様はとても良い方だった。ありがたいことにすぐに許してもらうことができた。
ご近所さん「ええがな、ええがな、ええがな~!そんなの大袈裟に捉えんで~!どうせ柿もウリも食いきれんでカラスの餌になるっちゃから!ええがな~!」
だいぶ気を遣わせてしまったようで、何度もええがなと言ってくれた。関西人?と思った。いや、そんなこと考えている場合じゃないな。すみません。
最終的にお詫びのお酒も受け取ってもらえて、帰り際にはわたしの姿が見えなくなるまで玄関口から見送ってくださった。ハヤトウリはいただくことにした。
せめて、全力でハヤトウリを美味しく食べる
犯した罪は背負って生きていくしかない。企画の趣旨は変わってしまったが、せめてハヤトウリを美味しく食べることにしよう。他の収穫物は後日に回させてください。
まずは下ごしらえから。
下ごしらえを進めていけばいくほど、れっきとした野菜であるということがわかる。クセがあるような感じもしない。
わりと何に料理してもいいらしいので、味噌炒めとスープと紅白なますを作ることにした。冷蔵庫にある食材もガンガン使う。もう初めの計画とはまったく違っているが、わたしにはこのウリを美味しく食べる義務があるのだ。
ハヤトウリを楽しむために一汁二菜のがっつりした定食を作った。おいしそうだ。
ハヤトウリは美味しい
紆余曲折あったが、ここまできたら美味しくいただくほかない。
調理中は夢中で気がつかなかったが、恐れ多くも紅白でめでたく仕上げたり、甘辛く炒めたりしてしまっている。これが責任のとり方だと思ったのだろう。
おいしい。油炒めにしたものはクセがまったくない大根のようで、スープはホロホロとしていて冬瓜のようだ。ハヤトウリそのものに際立った味や香りがないぶん、どんな料理でも美味しくいただけるのだろう。
紅白なますについてはシャキシャキとした歯ごたえのなかに、どことなくメロンの白い部分のようなウリの香りを感じる。酢の酸味と混ざることによってめちゃくちゃ爽やかだ。
ハヤトウリはうまい。ふだんこんなにオカズの種類を作ることもないので大満足の食事になった。もちろん満腹である。幸せだ。本当にありがたい。ごちそうさまでした。

