特集 2023年1月25日

フェリーなら、最上階のスイートルームにも泊まれる

スイートルームに泊まってみたい、なんてのは庶民には過ぎた夢と思っていましたが、穴場を見つけました。みんなフェリーに乗ろう。

海外旅行とピクニック、あとビールが好き。なで肩が過ぎるので、サラリーマンのくせに側頭部と肩で受話器をホールドするやつができない。

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> 個人サイト つるんとしている

快適な船旅

いきなり個人的な話ですみませんが、おれは北九州は小倉で生まれて、子どものときに日本各地を転々としたすえ、いまは大阪に住んでいます。九州方面へは、いまでも年に一回くらい、主に親戚に会うためにいくのですが、その際にはフェリーに乗っていくのが好きです。

いつもお世話になっているのは名門大洋フェリーという船会社です。夕方から夜にかけて大阪南港を出発、瀬戸内海を端から端までのんびり航海し、翌朝の早くに北九州の新門司港に到着する便です(もちろん逆向きの航路も)。

移動時間はおよそ13時間と、飛行機や新幹線とは比べ物にならないほど長いものの、船内には食堂あり、売店あり、大浴場ありで、一晩を過ごすのにまったく不自由はありません。むしろ快適すぎて、いつももう少し長く乗りたいと思っている。

「おおさかⅡ」。国内の長距離フェリーでもトップクラスに大きい船体で、船内設備も充実

まあ携帯やテレビの電波は入りづらいのはデメリットといえばデメリットですけど。そのおかげでKindleは捗る。本を読みつつだらだらビールを飲んだら、あっという間に眠気がやってきます。

早起きできたら、展望デッキで海を見るのもいい

寝床だって、いまどきのフェリーはきれいなものですから。ひと昔前は「フェリーは和室で雑魚寝」というイメージでしたが、2010年代にフェリー業界に新造船ラッシュが到来しました。最新フェリーは多くが大部屋を減らして、かわりにリーズナブルな個室や半個室に力を入れるのがトレンドなのだそうです。

例えばよく利用するカプセルホテル風の二段ベッドは7,500円。もう少し足して1万円も出せば、狭くとも自分だけの個室で一晩ゆっくり過ごせます。

窓なし3畳の個室

手頃な値段で、快適な時間を過ごせて。そして体力満タンで目的地に到着し、早い時間から行動開始できるのも船旅の素晴らしいところです。

なかなか魅力的な交通手段でしょ。瀬戸内海はたいてい穏やかで三半規管に優しいのも助かる
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最上階のスイートルームという響き

で、今日の本題はここから。

一人旅をする分には、前述の3畳間の個室で十分です。

ちゃんとカギもかけられるよ

十分というかむしろ、ああいうきれいな独房みたいな空間が無性に落ち着くので、好んで長年利用してきました。

しかし昨年、はじめて妻と一緒にフェリーに乗ろうとしたときは、さすがに独房を二部屋という訳にもいかないなと思い、久しぶりにチケット予約ページをじっくりと眺めました。

そしたら、いままで目もくれなかったので認識していませんでしたが、ちゃんとあるんですよね。船の最上階にラグジュアリーな空間が。

デラックスルームとか!スイートルームとか!

スイートなんていったら、富の象徴ですよ。地上のホテルでももちろん泊まったことはないし、これから先の人生でも縁はないでしょう。ましてやスペースの限られた船の上のスイートなんて、どれほどの贅沢なんだ。

冷やかし気分で、これいくらするんだ?と覗いてみたんですが、一瞬悩んだのち、自分でもおどろくような決断力で即予約していました。

だってなんか思いのほか、安いんですよ。

いや、これが安いかどうかは一概に言えないのはわかります※。むしろ安いと思い込むためにはちょっと計算が必要です。まずこれは妻と2人分の料金なので、一人あたま17,840円。

そして冷静に考えると、新大阪から小倉まで新幹線乗ると自由席でも14,850円する。ということは、実質的に宿泊代は3,000円だと考えてもよろしいんじゃない?あれ、そうすると…めちゃくちゃ安いじゃないですか??

いや、まあもっと冷静になると、同じフェリーの中でこの値段よりも1万も2万も安い選択肢があるわけで、そういう意味ではやっぱり高い。でもですね、最後はこの響きに負けました。最上階のスイート。一度は泊まってみたいじゃないですか、そういうの。

注1:お値段、2022年の予約当時の価格です
注2:正価ではなくインターネット予約割が適用です 
注3:繁忙期価格の設定もあります

いざ最上階へ

出発地点の福岡県 新門司港。このときは6月なのでまだ薄暮の空

予約できたのは、福岡で用事を済ませて大阪に戻る便でした。19:50の出発ですが、気持ちが急いて19時くらいには到着。港の待合室って薄ぼんやり暗くて、独特の緊張感があっていいです。

これから乗る「おおさかⅡ」の模型が置いてあった。おれの部屋はどこかな

乗船準備が完了した旨のアナウンスが流れると、だるそうに携帯をながめていた乗客がいっせいに立ち上がり、乗船口にラッシュします。おれも慌てて列に並び、長い廊下をへて船内へ。まずはインフォメーションで部屋の鍵を受け取ります。

 

船内案内。客室は3階層あり、
めざすスイートは最上段、最奥部だ!

就航して7年のおおさかⅡは、ぴちぴちの新造船ではありませんが、どこを見てもきれいに掃き清められ、たいへん清潔です。

スキップしながらロビーを通り抜け、はじめて最上階フロアへ
がやがやしたロビーとは打って変わって、誰もいない長い廊下に期待感が高まります
そしていよいよ
わーお
わーわー!
重厚な窓!
風呂トイレまであるー!

「これがこの船で一番いい部屋か」
「いい部屋だ!」
「うん、いい部屋」

 

寝室が独立しているわけではないので字義通りのスイートルームではないかもしれませんが、地上でもそうそう泊まらない豪華さに気持ちが高ぶります。夫婦で不動産屋のCMばりに「いい部屋」を繰り返して、ひとしきり盛り上がり終わった頃、窓の外の景色がぐらりと揺らぐのが見えました。

出航でーす

いつもなら航海中は無駄に船内をうろついて時間を潰すところだけど、貧乏性なので今日は部屋から極力出ません。部屋の中から海を眺めることもできるし、お風呂だってトイレだって、すべてが部屋の中にある! 

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クイズ、船でしょうかホテルでしょうか

動き出しこそ少し揺れがあったものの、その後は極めて安定した航行です。室内は本当に、ただのいい感じのホテルなので、気を抜くと海上にいることを忘れそうです。

乗船前に買い込んだビールやおつまみでゆっくり始めるかーと、ソファーにかけると、

なんか微妙にテーブルまで遠い
そうか、荒天時に危ないものね

室内はどうみてもホテルなんだけど、こういう船らしさが隠しきれない。間違い探しみたいなところが部屋の中にいくつか紛れていて、かわいいです。

ホテルのドアに必ずある避難経路図も間違い探しポイント
非常時のモールス信号が掲示されているのは船ならでは!

 

 

玄関脇のクローゼット、替えのタオルでも入ってそうなところには
救命胴衣。これもホテルにはないなー

 
あと、この間違いは難しいやつです。

ヒントはテレビ
正解は「テレビをつけるとまず海図が映る」でした

 

こうして見ると道のりは長い

名残惜しい夜

切ないことに、スイートルームの夜は、存外短い。持ち込んだ缶ビールが空いて、いい気分で自動販売機に買い足しにいってきたら、妻はもうベッドに潜って半分寝てました。仕方ないので照明を落とし、大きな窓枠スペースに体をすっぽりおさめ、体育座りでビールを飲んでました。

なんかもう完全に本末転倒なんですが、この狭さが心地よくて、この部屋のベストポジションだなと思いました。

名残惜しくてちびちびビールを飲んでましたが、抵抗むなしくすぐにけだるい眠気がやってきて、あえなく0時前には就寝。

翌朝8:30、定刻通りに大阪南港に到着。おかしいなー、もう着いたか。体感では8時間くらいしか乗船していないのだけど

 


瀬戸内海はフェリーのホットスポット

本物のスイートルームと呼べるかどうかはさておき、35,860円で得られる幸福感としてはかなりコスパがいいと、自信をもって言えます。穴場のスイートルーム、九州ー関西をご旅行の際はぜひご検討ください。

 

ちなみにこの九州ー関西航路は4つの船会社、7つの航路が就航する、日本随一のフェリーのホットスポットです。次に狙うのは、同じく九州と関西を結ぶ阪九フェリー。ここの「ロイヤル」というクラスが、めちゃくちゃ広くてラグジュアリーです。寝室が独立していて本当にスイートルームぽい。安い時期なら2人で41,740円かー、これも乗ってみたいな。

https://www.han9f.co.jp/ships/room/royal2.html

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